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By FraserElliot

ヨーロッパ最大のエネルギーグループ企業であるロイヤル・ダッチ・シェルが、1991年に気候変動による温暖化の危険性について警告するドキュメンタリー映画「Climate of Concern」を制作していたことが判明しました。このドキュメンタリー映画では気候変動が進むことにより近い将来に何が起こるのかが描かれているのですが、現在のシェルの動向とは異なる内容になっており、イギリスの新聞・The Guardianから批判を受けています。

Shell made a film about climate change in 1991 (then neglected to heed its own warning)

https://thecorrespondent.com/6285/shell-made-a-film-about-climate-change-in-1991-then-neglected-to-heed-its-own-warning/692663565-875331f6

Shell's 1991 warning: climate changing ‘at faster rate than at any time since end of ice age’ | Environment | The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2017/feb/28/shell-film-warning-climate-change-rate-faster-than-end-ice-age

シェルのドキュメンタリー映画を3分にまとめた映像は以下のムービーから確認可能です。

What Shell knew about climate change in 1991 - video explainer - YouTube

ドキュメンタリー映画「Climate of Concern」は、学校や企業で鑑賞するための教材として作られましたが、利用されることはなく長い間埋もれていたものだそうです。この映画のVHSを入手したのはオランダのメディアのThe Correspondentです。



映画では地球温暖化のメカニズムを説明し、温暖化により生じるさまざまな問題について語られています。例えば、亜熱帯の島々が温暖化で生じる海面上昇により沈んでしまったり、沿岸部の低地が地下水汚染の被害にあったりする危険性や、気候変動により生じる環境難民についてシェルは訴えており、1991年時点で「石油を燃焼させることで発生する二酸化炭素が環境問題を引き起こす」ということについて注意喚起するほどに理解していたことがわかります。



ムービーでは、シェルが作った温暖化の3Dモデルも登場。赤い色の場所は1991年から5度以上温度が上がる場所を示しています。



また、大気中の二酸化炭素の含有量と石炭・石油・天然ガスとの関係性を示すグラフまで作られています。グラフでは石油が登場した1900年ごろから二酸化炭素の排出量が増え、1990年代には大気中の二酸化炭素の割合が350ppmまで増えていることがわかります。



さらにムービーでは、シェルが温暖化が進むのを止めるべく太陽光発電や風力発電といったソリューションに注力していることが説明されます。



このムービーをThe Correspondentから入手したThe Guardianは「1991年に温暖化への懸念を示していたシェルですが、イギリス外務省の気候変動問題の特別代表のジョン・アシュトンから『サイコパス』と批判されたことがある」とし、シェルがドキュメンタリーの内容と正反対のことをやり続けていると批判しています。



非営利シンクタンクのCarbon Trackerによれば、シェルは1991年以降、生産および生成の工程で温暖化ガスが生じるオイルサンドに莫大な資金を出資しており、オイルサンドから得た石油備蓄はグループの30%に及んでいるとのこと。また、シェルは American Legislative Exchange Council(2015年に脱退)やBusiness Roundtable and American Petroleum Instituteといった、気候変動問題に否定的な姿勢を取って政府の施策に反対するロビー活動を行う組織に参加しています。

こういった組織に参加していることに関して、シェルは「気候変動に対する異なる意見を取り入れること」と説明しましたが、組織の動向を追いかけているInfluence Mapのトーマス・オニール氏は「シェルや他のエネルギー企業がこういった組織に参加しているのは、企業として言えないことや言いたくないことを代わりに発言させることにある」と話しています。



2015年末に第21回締約国会議で決められたパリ協定では、平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えようという国際的な目標が立てられました。2度目標の実現のためには、二酸化炭素の排出量を制限、つまり、石油や石炭といった化石燃料の燃焼量を制限する必要がでてきます。しかし、企業が保有している化石燃料の量が莫大すぎるため、2度目標を達成しようとすれば多くの化石燃料が回収不能な資産として残ってしまい、世界的な金融危機を招く恐れがあります。この回収不能の化石燃料により金融危機が生じてしまうことは「炭素バブル」と呼ばれています。

Carbon Trackerが公開した2016年のレポートでは「シェルは1998年には炭素バブルが生じることに気づいていながら何も対策を講じなかった。シェルはこの20年間で透明性をなくし、ビジネスへの炭素バブルという脅威に対する責任から逃れようとしている」と非難されています。シェル自身は、炭素バブルは「人騒がせ」であると評価し、炭素バブルで同社を批判した人たちを非難しました。

なお、シェルのドキュメンタリー映画の全編は以下のムービーから確認可能です。

Climate of Concern - Royal Dutch Shell (1991) - YouTube