インタビューから、人とは少し違った独特の感性が浮かび上がった暁月凛

 アニソンシンガーの暁月凛(あかつき・りん)が2月15日に、2ndシングル「コノ手デ」をリリース。2015年に開催された大型オーディションで、3000人を超える応募者の中からグランプリを獲得。2016年3月に、TVアニメ『金田一少年の事件後R(リターンズ)』のエンディングテーマ「決意の翼」でデビューした。今作の表題曲は、アニメ『青の祓魔師 京都不浄王篇』のエンディングテーマ。同曲について聞いていくなかで、幸せや二次元にも話題はおよび、そこから彼女の人とは少し違った独特な感性が浮かび上がってきた。

『青エク』ファンの方から認めてもらえてうれしくて感動

インタビューに応じる暁月凛

――デビューから約1年が経ちましたね。

 早いものですね。日々煩悩のない生活を心がけてきましたが、やはり煩悩はなくならないのが悩みです(笑)。この1年は、とにかくデモを録ったりとか、今回のリリースに向けて、いろいろ準備を進めていました。

――「コノ手デ」は『青の祓魔師 京都不浄王篇』エンディングテーマで、『青エク』の大ファンだったんですよね?

 そうなんです。でも、まさか自分がそのアニメのエンディングテーマを歌わせていただけることになるとは、夢にも思っていませんでした。第1期の青エクは全26話あったんですけど3回見ましたし、第1期のオープニングテーマでUVERworldさんが歌っていた「CORE PRIDE」も大好きで、何度も繰り返し聴きました。

――好きなキャラクターは? やはり奥村燐?

 私は、弟の雪男のほうです。もちろん燐も好きですけど、普通の兄弟とは少し違った、2人の関係性と言うか、やりとりがかわいいなと思っています。雪男は、口ではケンカするけど、裏では全部自分で背負ってしまうようなところがあって。すごく兄想いで、だからこそああいう態度を取ってしまうんだな〜って。2人の価値観が違うからこそ衝突や誤解が生まれるのは悲しいですが、そういう完璧ではない兄弟の関係に美しさを感じます。でも、三次元にいて欲しいなと思うのは、雪男のほうですね。

――今放送はご覧になって?

 はい。リアルタイムで見るのが、すごく楽しいです。自分の好きなアニメで自分の歌声が流れるのは、すごく不思議な気持ちです。CMスポットで自分が歌う姿が流れると、何だかちょっと恥ずかしくて。

――デビューのときもそうだったじゃないですか?

 そのときも恥ずかしくて、「うわ〜」って顔を隠してしまっていました。それが、1年経った今でも適応できずにいるという。

――不安もあった?

 すごくありました。私は『青エク』ファンを自負しているので、魂を込めて歌ったんですけど、私の『青エク』に対する想いが、ちゃんとファンの方にちゃんと伝わるのかが、すごく不安でした。Twitterのアイコンが『青エク』のキャラや画像の方は、きっと『青エク』ファンの方なんだと思いますが、みなさんすごくやさしいコメントをくださって安心しました。『青エク』ファンの方から認めてもらえたと感じて、それが何より嬉しくて感動しました。

世界と好きなアニメを語り合っているときが幸せ

暁月凛「コノ手デ」期間限定盤

――作詞作曲の湊貴大さんは、minatoさん名義でVALSHEさんの楽曲も多く手掛けている方ですが、VALSHEさんのファンでもあったんですよね?

 はい。なので、湊さんの曲で育ったと言っても過言ではありません。小さいころから湊さんの曲を聴いていたので、自分の中では、もはや同化していると言いますか。おこがましいですが、湊さんの世界観=私の世界観だと思っています(笑)。だから、自分の思っていることを、素直に引き出してもらえた感覚でした。

――楽曲を最初に聴いたときはどう感じましたか?

 デモをいただいて「これは神曲だ!」と思いました。もし私じゃなく他のアーティストさんが歌ったとしても、絶対にCDを買うし、何年も聴き続けると思います。そのくらい心を惹かれました。特に1番のサビがすごく気持ちいいんです。戦いのシーンの情景描写を歌っているのですが、自分が本当に正しいのか信じ切れない中で、たった1人で全世界に挑んでいるような感じというか。そんなシーンを思い浮かべて歌っています。

――実際に1人で世界と戦っているように思うことってありますか?

 私は人を信じるまで、すごく時間がかかるんです。信じていいのかどうか探っているときは、相手のことが未知で、とても怖いです。ときには相手と戦わなくちゃいけなくて、すごく防御しないといけないときもあって。

 きっと私の状況以外でもいろいろな場面で、人を信じられなかったり、1人で世界と戦っていると思ってしまうときがあると思います。そんな人には、共感してもらえるんじゃないかって思います。

――「コノ手デ」というタイトルは? その手で何をつかみ取りたい?

 タイトルは、この手で武器を持って戦うのと同時に、この手で守るという意味があると思っています。善意と攻撃性の合わせ鏡のような感じです。求めるものは戦ってこの手でつかみ取る、愛する人や友情を守る、真実や勝利をこの手でつかむ、いろいろな意味が含まれています。そこで私がこの手でつかみ取りたいものは…幸せそのものかな?

――自分にとっての幸せって? 今はどのくらい幸せ?

 今は20%くらいです。最近ずっと幸せって何だろう? と考えているのですが、幸せを感じるホルモンが出ていれば、ただ脳がそう感じているだけで、それで本当に幸せなのか? とか思うし。幸せってすごく儚いものだとも思うし…。すごく難しいですね。

――では、何をしているときが幸せですか?

 心の通じ合う友だちと世界について語り合っているとき。お互い共感できる話をしているとき。もし価値観が違ったとしても、ぶつかり合うことで得られるものがあると思うし。そうやって、新たな発見をしつつ友情を深め合うことが、最近の私の幸せです。

――しかし、世界についてとはスケールが大きいですね(笑)。

 地球はいつ滅びるのか、人間はなぜ苦しむのか? 政治的なことも話すし、他愛のないことで美味しいものとか、何が流行っているかとかも話すし。そういう話をしているときが楽しくて、本当に幸せだなって思います。

――三次元の男の子の話は?

 ないですね。ただ、アニメとか二次元の良さに理解を示してくれるイケメンがいたら別ですけど(笑)。

――何だかんだで、結局はイケメンなんですね。

 それはまあ、そうでしょう(笑)。でも、あくまでも二次元感覚でのイケメンなので、一般的なイケメンとは違うと思いますけど。

――もう1曲の「星を辿る道」はミディアムバラードで、二胡の音色が独特な大陸的雰囲気の曲ですね。

 もともとバラードが大好きで、二胡の音も好きです。最初は二胡が入ることを知らなくて、デモを聴かせていただいたら入っていて。「うわ〜、すごく曲と合っていて素敵だな〜!」と思いました。

――「星を辿る道」というのは、どんな道だと思いますか?

 この曲は、過去にお別れをした大切な人のことを想いながら、未来へ旅立つという印象でした。大切な人との距離は、どんどん離れていってしまうんだけど、その人のことはずっと心に持ち続けるという気持ちで歌っています。実際にそういう経験があるわけではないのですが、私は普段からいろいろな妄想をしているので、このときはどういう気持ちになるのかな? と、妄想しながらレコーディングしました。

ハッピーエンドよりバッドエンドが好き!

新曲「コノ手デ」への想いを語った暁月凛

――もともとアニメが好きで、そこからこの世界に入ったわけですが、今はどんなお気持ちでしょうか。

 好きな気持ちは変わりません。アニメは、三次元では表現できない世界観や感情を表現することができるわけですが、三次元が写実主義の風景画だとしたら、アニメは抽象画みたいな感覚かなと思います。抽象は、アニメの美学における、必要不可欠なエッセンスですから。そういう非現実主義的なアニメの作品ごとに、その世界観に合った曲が歌えるということに価値があると思っています。

――今後の活動については? 各地でリリースイベントもありますが。

 リリースイベントは、出るのは私だけで、みなさん私を見に来てくれるわけで。そういうのは初めてなので、すごく不安はあります。みなさんが望むような私でいられるのか? 怖さもあります。まだ慣れていない部分がたくさんありますけど、新たな挑戦として頑張りたいです。

――緊張を解きほぐすのにやることは?

 コーラを飲みます。大好きなので! ネットで読んだので真偽はわかりませんが、人は緊張すると飲んだり食べたりしづらくなるので、あえて飲んだり食べたりすることで、身体が緊張していないと判断するらしいです。普段やっていることと同じことをするのでも安心するので、普段から好きで飲んでいるコーラを飲むと平常心になれるんじゃないかと。

――ライブをやってみたい場所はありますか?

 東京国際フォーラムです。前にそこでライブを見たときすごく音が良かったので、きっと気持ちいいだろうなって。やっぱり良い音、良い歌、良い声をみなさんにお伝えしたいですから。勢いや感情も大事だけど、伝えるには環境も必要だなと思っています。あと、身の程知らずのことを言えば、東京ドーム。東京ドームで、フライングしたいです(笑)。

――今後こういう歌詞を歌いたいとかは?

 もっと痛みを歌いたいです。私自身、痛みを持っていることが美しいと思っています。シングル2枚では、戦うとか勇気とか友情を歌ってきましたが、自分が美しいと思う気持ち=痛みを形にして歌っていきたいです。

――弱さや痛みを知ることが、前向きさに繋がることもありますからね。

 そうですね。それに私の感性が、完全にそういう方向が好みというのもあります。たとえばゲームをやるにしても、ハッピーエンドよりもバッドエンドが好きですし。だからわざとバッドエンドになるようにゲームを進めることもあって(笑)。

――最近にやったゲームは?

 『シヴィライゼーション』とか、『This War of Mine』とか。『This War of Mine』は、一般人が戦争の中でサバイバルするゲーム。ただ生き残れば良いんだろうと思ったら、そうじゃないんですよ。さんざん人を蹴落として生き残ると、エンディングでは悲惨なことになります。生き残り方も問われるという。深いです!

(取材・撮影=榑林史章)

 ◆暁月凛 2015年に開催された大型オーディションで、3000人を超える応募者の中からグランプリを獲得。2016年3月にアニメ『金田一少年の事件後R(リターンズ)』のエンディングテーマ「決意の翼」でデビュー。