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北半球の北極に近い領域には永久凍土と呼ばれる凍り付いた土壌で覆われる地帯が存在しています。しかし近年の地球温暖化が原因とみられる永久凍土の溶解が観測されており、長さ1kmに渡る広い範囲が大きく陥没する現象が起こっています。

BBC - Earth - In Siberia there is a huge crater and it is getting bigger

http://www.bbc.com/earth/story/20170223-in-siberia-there-is-a-huge-crater-and-it-is-getting-bigger

Siberia's 'doorway to the underworld' is getting so big it's uncovering ancient forests - ScienceAlert

https://sciencealert.com/siberia-s-huge-doorway-to-the-underworld-is-getting-so-big-it-s-uncovering-millennia-old-forests-and-carcasses

ロシア東北部に位置するサハ共和国の首都・ヤクーツクからさらに東北の方角に660kmほど離れた場所では、一面に広がる広大な草原の一部がクレーター状に大きく落ち込んでいる地域が確認されています。この部分はBatagaika crater(バタガイカ・クレーター)と呼ばれ、最も長い場所では1kmにも及ぶ大きさのクレーターで、深いところでは86メートルも陥没しています。



Googleマップでもその様子を写真で確認することができます。上空から見ると、バタガイカ・クレーターはオタマジャクシの頭に相当する部分と、尻尾のように長く伸びる細長い部分から成っていることがわかります。

地元の住民には「地下世界への入り口」とも呼ばれているクレーターですが、実は変化を続ける地球環境の影響が大きく現れている現象であることがわかっています。ドイツのアルフレッドウェゲナー極地海洋研究所のFrank Günther氏が2016年に発表した報告書によると、このクレーターは1年あたり10メートルという速度で拡大を続けていることが過去10数年にわたる調査から明らかになっています。さらに、気温が高かった年には、拡大する速度が1年で30メートルに達したこともあったとのこと。

このクレーターが生まれるきっかけになったのは、1960年代に行われた周辺地域の大規模な伐採だったとのこと。それまでは木々に覆われて日陰になっていた土壌が太陽光にさらされるようになり、特に気温が上がる夏の時期に凍っていた地面の溶解が起こるようになり、表面の流出が始まったとのこと。2008年には大規模な洪水が発生したことで崩壊は拡大し、現在でも規模は拡大の一途をたどっているそうです。



凍土の溶解は局地的な影響を与えるだけでなく、地球全体の変化をも生みだす効果があります。凍土の中には温室効果ガスの一種である二酸化炭素やメタンなどの物質が閉じ込められており、凍土が溶けることでこれらの物質が大気中に放出され、地球の温暖化を加速させると考えられています。凍土全体に閉じ込められている温室効果ガスの量は、現代の大気の中に含まれている温室効果ガスと同じ量であるとも考えられており、今後も凍土の溶解がすすむとさらに温室効果ガスが大気に放出されて気温が上昇するという、「正のフィードバック」が起こる危険性が指摘されています。

そのことがよくわかるムービーがコレ。地面がまるで水に浮かんでいるようにユラユラと揺れる不思議な光景ですが、この地面の下にはメタンが充満しているとのこと。凍土の溶解が進むことでメタンが放出されて地下にたまり、泡のような状態になって地表に現れます。そしてこの後、地下にたまっていたメタンは大気に放出されると同時に、メタンを覆っていた地表が陥没して小さなクレーターを形成します。そのようなクレーターが大規模に出現したのが、前出のバタガイカ・クレーターというわけです。

Underground methane bubbles - YouTube

一方で、科学的なメリットもこのクレーターでは確認されているとのこと。崩壊した地表の模様から、過去20万年前の地球の気象変動が読み取れる状態となっており、科学者が注目しています。そこからは、地球はこれまでに数万年の時間軸の中で氷河期と温暖期を繰り返してきたことが明らかになっているのですが、それらの記録と照らし合わせてみても、やはり現代の変化のスピードは過去に類を見ない急激なものとなっているようです。