米国の市場調査会社IDCがこのほど公表した、仮想現実(VR:virtual reality)と拡張現実(AR:augmented reality)の製品、サービスに関する最新リポートによると、今年(2017年)のこれらに対する支出額は、世界全体で139億ドル(約1兆5600億円)となり、昨年から約2.3倍(130.5%増)に拡大するという。

ハード、ソフト、サービスがいずれも好調

 そして、この市場は今後、年平均198.0%の伸び率で拡大し、2020年には1433億ドル(16兆1200億円)規模になると同社は予測している。

 前者のVRは、利用者が目の前にある実際の場面から離れ、完全にデジタル世界の中に身を置くという技術。これを可能する機器としては、米フェイスブック傘下のオキュラスVRが手がける「Oculus Rift」やソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation VR」、台湾HTC(宏達国際電子)の「HTC Vive」といったヘッドセット製品がある。

 一方、ARは目の前の現実の場面にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。こちらは米グーグルがかつて販売していた「Google Glass」や、ソニーの「SmartEyeglass」、米マイクロソフトの「HoloLens」などが、ニュースなどで取り上げられ、たびたび話題になる。

 しかしIDCによると、VRとARの市場は、こうしたハードウエア製品だけでなく、ソフトウエアや関連サービスも好調で、ソフトウエアとサービスへの支出は今後も拡大していくという。

消費者セグメントが市場をけん引

 VRとARの市場を顧客セグメント別に見ると、2020年までの期間に最も支出が多いと予測されるのが、ゲームなどのエンターテインメント製品、サービスで構成される消費者市場。

 その今年1年間におけるハードウエア、ソフトウエア、サービスへの支出額は合計62億ドルとなり、昨年実績から130.5%増加するという。

高成長が見込まれる小売りセグメント

 一方、産業向けVR、ARの製品とサービスは、比較的遅いペースではあるが、業務への浸透が進んでいるという。

 産業分野で今年最も支出が多くなると予測されるのは、自動車、機械、電子機器などを生産する「ディスクリート型製造業」。これに「小売業」が次ぎ、そのあと「サービス業(個人/消費者向け)」や、食品、化学製品、薬品などの「プロセス型製造業」が続くという。

 このうち今年、市場規模が10億ドルを超えるセグメントは、ディスクリート型製造業と小売業。小売業におけるVR、ARへの投資は今後5年間、年平均238.7%と高い伸びで推移し、支出額は2020年にディスクリート型製造業を抜き、産業分野でトップになるという。

 また、プロセス型製造業も同様に高い伸びで推移し、2020年にはサービス業を抜き、産業分野で3位のセグメントになるとしている。

 このほか、高い成長が見込めるセグメントは、輸送機関と医療サービス。その年平均成長率はそれぞれ233.7%、231.8%とIDCは予測している。

2019年以降はARがVRを上回る

 なおVRへの支出額は、消費者向けエンターテインメントに支えられ、2018年まではARのそれを上回るが、2019年以降は逆転するという。これは、医療や製品設計、マネジメント関連分野でARの導入が加速することが要因だとIDCは分析している。

筆者:小久保 重信