by NASA Goddard Space Flight Center

PCのクラッシュやスマートフォンのフリーズは、必ずしもハードウェア・ソフトウェアの欠陥だけによるものではなく、我々にはどうしようもない「宇宙線」の影響が指摘されています。この問題は大きなものなのですが、なかなか一般的に理解されるところには至っていません。

Computer crashes may be due to forces beyond our solar system | Computerworld

http://www.computerworld.com/article/3171677/it-industry/computer-crash-may-be-due-to-forces-beyond-our-solar-system.html



The Invisible Neutron Threat | National Security Science Magazine | Los Alamos National Laboratory

https://www.lanl.gov/science/NSS/issue1_2012/story4full.shtml

宇宙を飛び交う高エネルギー放射線である宇宙線は、地球にも日々降り注いでいます。その中には、人体や生物には無害であっても、超小型電子回路の動作に影響を与えるには十分なエネルギーを持った粒子も存在します。

軍隊・航空産業・コンピューター産業では、シングルイベントアップセット(SEU)と呼ばれるエラーが大気中の高エネルギー中性子によって引き起こされるということが、20年以上前から知られてきました。

中性子の強さは大気中だと高度に比例して強くなり、SEUの発生頻度を上げます。100名以上の人員を載せて日本海上空高度1万1000mを飛んでいた輸送機・C-141Bでは、SEUにより突然機体が右に傾くという事態が発生しました。機体はあやうく制御不能に陥りかけるところでしたが、パイロットがすぐに事態に気付いたため、大事故にはなりませんでした。



by Robert Sullivan

カンタス航空のバース発シンガポール行きでは、同じく高度1万1000mでエアバスA330-303の航空宇宙データ慣性基準ユニットの1つが故障し、飛行制御ユニットに誤ったデータが送られました。これによって機体は突然高度を下げ、乗客303人のうち110人と、乗員12人のうち9人がケガをしました。体を固定していなかった客室乗務員は天井に叩きつけられました。この事故は、オーストラリア交通安全委員会によって「SEUが原因であるという可能性を推定する証拠が不十分」、つまりSEUが原因だと考えるだけの証拠はないと結論づけられましたが、SEUを除くすべての潜在的原因が「起こりそうもない」、あるいは「非常に起こりそうもない」ものであることが判明しています。

最近、空中にあるマイクロチップベースの端末が増えていることが懸念を増大させているとロスアラモス国立研究所は指摘しています。たとえば、北半球の全貌を掴むためにアメリカ軍では北極上空18kmに軍用機を飛ばしているそうですが、この地点の中性子強度は海面の約2000倍にもなります。最新のデバイスの、マイクロチップあたりのSEU率はこの5年で急速に増加しているとのこと。

軍用以外でも、2003年にはベルギーのスカールベークで行われた電子投票では、ある候補者に「4096票」の追加票が入ったというミスが起きています。ただ、なかなかSEUが一般的には理解されないという現実があり、半導体メーカーでは宇宙線の干渉を防ぐべく努力を続けているものの、根本的な対策には至っていない模様です。