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ロックフェスと共にムーブメントとなった“4つ打ちダンスロック”


今さら感もありますが。ここ数年、KANA-BOON、KEYTALK、キュウソネコカミ、フレデリックなどなど。フェスや巨大イベントに引っ張りだこの人気バンドを代表する若手ロックバンドのシーンで、「踊れるロック」を目的とする“4つ打ちダンスロック”と呼ばれる音楽が流行している。


そもそも“4つ打ち”とは? 古くは70年代のディスコをルーツとし、ハウス、テクノ、そしてEDMといったダンスミュージックへと受け継がれているリズムパターンで、キック(バスドラム)の低い音で、ドン・ドン・ドン・ドンと等間隔で打ち鳴らされるビートが、4つ打ちの特徴。


そして心臓の鼓動音に近く、人間を本能的に興奮させる効果があるため、ダンスミュージックには最適と言われるこのビートを高速化し、バンドサウンドに取り入れたのが“4つ打ちダンスロック”である。


しかし、90年代に青春時代を過ごしたバンドマンにはテクノ、ハウスをルーツにもつ人も少なくはなく、2000年代から邦楽、洋楽ともに4つ打ちを取り入れたバンドや踊れるロックは存在し、珍しくもなかったはず。ではなぜ今、“4つ打ちダンスロック”が改めて注目されるのか? その背景に“フェスブーム”があるのは間違いない。


現在に続くフェスブームの源流となった、今や邦楽ロックフェスの代表と言える『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』。初開催された2000年当時はまだフェスの存在自体が珍しく、フェス会場に集まるオーディエンスもコアなロックファンがほとんどだった。


しかしその後、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に追随するように全国で多くのフェスが開催されるようになった。会場のホスピタリティや充実度が向上していくと、フェスはただロックバンドのライブを観に行く場所ではなくなり、友達同士でキャンプやビーチに遊びに行く感覚でフェスに参加するオーディエンスも急増。


そこで大活躍したのが、“4つ打ちダンスロック”だった。例え熱心なロックファンじゃなくても、そのバンドを初めて観る人でも、ダンスビートにノッて自然と体が動く。その曲を聴いたことがなかったとしても、青空の下で友達や見知らぬオーディエンスと一緒に汗をかいて踊り騒ぐことでその場に一体感が生まれる。そして、またひとつ忘れられない夏の思い出が増えるのだ。


フェス時代で闘っていくための武器として


また、数あるフェスの中には人気バンドが集められて、ショーケース化してしまっているフェスも少なくないが。たくさんの人気者が集まるなかで、初めて観る人も一発で踊らせて、強い印象を与えることのできる“4つ打ちダンスロック”という武器があることは、バンドにとっても心強い。


わずか30分ほどのステージで強烈なインパクトを与えて、初めて観たオーディエンスに名前と存在を覚えてもらい、CD購入やその後のライブへと導くためには、やはり一発で強い印象を与えるキラーチューンが必要になってくる。その時に活躍してくれるのが、“踊って騒いで、思い切り楽しみたい!”というオーディエンスとの要望にも応え、フェスの明るく楽しい雰囲気にマッチする“4つ打ちダンスロック”だ。


最近、若手バンドのライブを観に行くと、バンドTシャツを着て、下にレギンスを履いたディッキーズのハーフパンツにスニーカーといったスポーティーなファッションに、バンドやフェスの名前が入ったラバーリストバンドをたくさんぶらさげたリュックというスタイルのお客さんをよく見るのだが。若い世代にとって、ロックがよりポップにスポーティーになっているのも、4つ打ちダンスロックが流行し、注目されてる要因のひとつ。


EDMの流行などで野外のダンスフェスも一般化しているが、ダンスミュージックの発祥はクラブ文化。フェスの一般化などにより、音楽をスポーツ感覚で健康的に楽しみたいという感覚が最初からある世代には、大音量でEDMが流れるクラブの非日常感よりも、日常の延長にあるフェスのほうが馴染みやすいだろうし、ダンスミュージックよりもBPM(演奏テンポ)が速く、縦ノリで踊って騒げる“4つ打ちダンスロック”のほうが、彼らの欲するロック感にぴったりフィットしたのだろう。


4つ打ちロックは飽和状態と言うには早計すぎる?


“4つ打ちロックは飽和状態”“今さら4つ打ちも恥ずかしい”という声を聞くこともあるが、バンドマンの取材で「今さら4つ打ちと思われるからこそ、僕らにしかできないアイデアが入ってるんです」という力強い言葉を聞いた。ロックのスタンダードである8ビートが現代も変わらず鳴らされていて、同じ8ビートでも曲によってすごく新鮮に聴こえることがあるように、流行り廃りはあれど、4つ打ちロックがなくなることはないし、これからも進化し続けるだろう。


ここまで読んでもピンと来ない人は、まずは4つ打ちを効果的に使用した人気バンドの今もフェスやイベントで盛り上がり必至の代表曲、KANA-BOON「フルドライブ」、KEYTALK「MONSTER DANCE」、キュウソネコカミ「ビビった」、フレデリック「オドループ」といった楽曲たちを聴き比べて、各バンドの個性や魅力、オリジナリティに注目してほしい。彼らのような新しい感性をもつミュージシャンがいる限り、4つ打ちロックはまだまだ可能性を秘めていると思っている。


余談だが、ジョギングをする際に音楽を聴いてると曲ごとのBPMでペースを乱されるので、音楽はジョギングに不向きという説があるが、4つ打ちが心臓の鼓動音に近いというだけあって、ジョギング中にBPMが自分の鼓動と歩幅にばっちり合う曲がイヤホンから流れてくると最高に気持ち良い。音楽と体と心が完全にシンクロした瞬間、ナチュラルハイのような感覚になれることもあるので、ジョギング中の音楽はオススメです! 僕の場合、フレデリックの曲が相性良いみたいです(笑)。


TEXT BYフジジュン