水を飲むように「お茶」を飲もう

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緑茶には、心臓病や脳卒中、認知症になるリスクを減らし、最近はダウン症の症状を改善するという研究まで出されるなど、多くの健康効果が明らかになっている。新たに、緑茶に含まれる成分に血液がんと難病の一種の進行を止める効果があることが米ワシントン大学の研究で明らかになった。

研究成果は生物化学専門誌「Journal of Biological Chemistry」(電子版)の2016年12月28日号に発表された。

ダウン症の改善やインフルエンザ予防にも

今回の米ワシントン大学の論文を紹介する前に、ここ1〜2年で明らかになっただけでも緑茶パワーのスゴさを示す研究をおさらいしよう。

(1)死亡率を下げる:1日に5杯以上飲むと、1杯以下の人に比べ、死亡率が男性で13%、女性で17%低くなる。特に心臓や脳血管、呼吸器系の病気になるリスクが13〜45%低くなる。これは緑茶のポリフェノール(植物由来成分)のカテキンとカフェインの働き(2015年5月・国立がん研究センター)。

(2)認知症のリスクを下げる:石川県の住民723人を5年間追跡調査した結果、緑茶を毎日飲む人の認知症発症リスクは、ほとんど飲まない人に比べ、68%も低かった。これは緑茶のポリフェノールのロスマリン酸の働き(2016年6月・金沢大学)

(3)ダウン症の改善:ダウン症の患者84人に、緑茶のカテキンの1つ「エピガロカテキン・ガレート」(EGCG)を3か月〜1年間飲ませる臨床試験を行なった。すると、緑茶成分をよく飲んだ人は、飲まなかった人に比べ、記憶力や言葉の連想力、適応行動などの項目で成績がよくなった。また、脳神経細胞の結合も増加した。これは、エピガロカテキン・ガレートが脳神経組織に直接届く強い抗酸化作用があるためで、ダウン症を薬で改善する可能性が開けた(2016年6月・スペイン・ゲノム制御センター)。

(4)インフルエンザの予防:人間の細胞を観察する実験で、エピガロカテキン・ガレートなどのカテキン類を細胞に加えると、マクロ―ファージという免疫細胞が活発になり、インフルエンザウイルスなど体内に侵入した有害物質をモリモリ食べることを発見した(2015年7月・国立農業・食品産業技術総合研究機構)。

悪玉タンパク質を善玉タンパク質に変える

さて、ワシントン大学の研究者は、ダウン症の改善やインフルエンザの予防で注目されたエピガロカテキン・ガレートに注目した。「Journal of Biological Chemistry」の論文要旨によると、研究チームは「多発性骨髄腫」と「アミロイド症」の患者9人から病原細胞を採取し、エピガロカテキン・ガレートを投与した。

多発性骨髄腫は「白血病」「悪性リンパ腫」と並ぶ三大血液がんの1つだ。もともと骨髄の中にあり、病原体から体を守る働きがある細胞ががん化し、全身の骨髄で増える病気だ。男性に多く、年々増加傾向にある。がん細胞が骨を破壊しながら増えていくため、全身の骨が弱くなり、折れやすくなる。一方、アミロイド症は、アミロイドと呼ばれるナイロンに似た線維状の異常タンパク質が全身の様々な臓器に沈着し、機能障害をおこす病気の総称。治療が難しく特定難病に指定されている。両方とも病気の発症に「軽鎖アミロイド」というタンパク質が関わり、細胞に蓄積することが共通している。

そこで、軽鎖アミロイドにエピガロカテキン・ガレートを投与すると、軽鎖アミロイドが別のタイプのタンパク質に変化し、異常な蓄積が起こらなくなった。多発性骨髄腫の場合はがん細胞の増殖がストップした。アミロイド症の場合はナイロン状の繊維を作らなくなったのだ。研究チームは、論文要旨の中で、「人間への臨床試験を進め、治療薬の開発を目指したい」とコメントしている。

多発性骨髄腫とアミロイド症は、ともに治りにくい病気といわれている。緑茶パワーが患者の苦しみを救うことを願いたい。