ホンダが人工知能をメインとした新たな開発拠点を公開

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「X」は未知のものを意味する

ホンダが昨年、東京・赤坂にオープンさせたHondaイノベーションラボTokyoで、4月1日からスタートする研究開発体制「R&DセンターX」についての概要を報道陣に発表した。本田技術研究所の松本宜之代表取締役社長が登壇し、本田技術研究所の成り立ちと、今回の「R&DセンターX」の創設の意義を解説した。

ホンダは創業の12年後には研究・開発のため、本田技術研究所を別会社として独立させ、現在もこの技術研究所が基礎研究から開発までを担っている。

現在技術研究所は、2輪、4輪、パワープロダクツ、基礎技術研究、ジェットエンジン、さくら(レース)という6つのセンターを国内に持ち、さらに、ホンダリサーチインスティテュート(AIをはじめとするポストメカニカルエンジニアリングを担当)、ホンダシリコンバレーラボもある。

「R&DセンターX」は、「ロボット技術」、「モビリティシステム」、「エネルギーマネジメント」などの新価値領域を担う研究開発組織としてのセンターとなる。人工知能をはじめとしたデジタルテクノロジーという「新たな追い風の出現」に対し、新しいR&Dセンターで新たな領域に挑戦するという。

センターXは、既存の各センターとは切り離した形でのR&Dセンターとなる。当面はロボティクスと、その基盤となるAIを中心に取り組むが、臨機応変にターゲットを変化させていくということで「未知」の意味を持つ「X」という名前としたという。「(本田技術研究所も)そこそこの規模になった」ため、もっと原点に立ち返り、コンパクトで素早い決定でアクションができる組織にしたい、ということで、松本社長いわく「(R&Dセンターの)出島」のような存在」と位置付ける。

何を生み出すのかという出口を明確にし、固定組織ではなく、プロジェクト運営で、極力フラットな組織とする。「6M」という6カ月ごとに成果を判断するシステムを導入する。またオープンイノベーションにも取り組み、外部にも門戸を開放する。

これまでホンダは1981年に商品化された、カーナビの原点ともいえるジャイロケーター(昨年のIEEEマイルストーンに認定)や「ASIMO」といったユニークな技術を作ってきた。今回は「AI×データ×Hondaの強み」というコンセプトで、従来とは異なるアプローチで、人と協調する新たな価値を持った「モノ・コトづくり」にチャレンジをしていくとする。

「研究所は技術を研究するところではない、人を研究するのだ」という、創業者の本田宗一郎の言葉を引用し、これがホンダの原点であり、ホンダの強みであると語る。

人と協調できる新しい領域の技術と商品の開発を行う

ホンダが目指すロボティクス社会とは、他人に共感できる、仲間と協調できる、という人間の素晴らしさをさらに引き立てる社会でありたいと考えているという。そのためホンダではAIのことを、社内で人と協調できる人工知能という意味でCI(Cooperative Intelligence=協調的知能)と呼び、人と共感し、人と共に成長し、人の可能性を拡大する、新しい領域の技術・商品開発を行なって世に出していくとする。

人工知能の第一人者のひとりであるエドワード・ファイゲンバウム博士は、このR&DセンターXのアドバイザーに就任する。ホンダが初めてアメリカに研究所を立ち上げた際に、エンジニアの卵である若者を研究するために、教えを乞うた大学の教授こそが、そのエドワード博士だという。

エドワード博士は、この発表会の席上で、ポータブルミュージックを世に出したソニー、そしてデジタルカメラをいち早く開発したコダック社を例に挙げ、ソフトウエアへの対応の遅れを指摘する。同様に現在、AIに対していち早く対応する重要性を強調した。

同じく、このアドバイザーには、日本の企業再生・新規事業創出で実績のある経営協創基盤の冨山和彦代表取締役CEOも参加する(発表会へはビデオレターで出演)。

同時に公開された「HondaイノベーションラボTokyo」は、東京・赤坂にある赤坂BIZタワーに2016年9月に開設。すでにオートモーティブR&Dセンターとして、コネクティビティや自動運転に関するハードウエアの開発部隊がこの場で作業を進めている。

そのエントランスには、この場所を象徴する一枚の絵(オブジェ)が飾られている。額の右側は真っ白で、左に行くにつれて、ブドウの木が浮かび上がり、立体となって、最後はブドウ以外の果物も実をつけている、というこのオブジェ。何もないところから創出し、最後は誰もが驚く成果を見せる、という意味である。

ハード寄りのものから、もっとソフトウエア開発に特化したスペースである。この場所からホンダの、人にやさしい、あらたな商品が生み出されることとなるだろう。