水商売で働く人々のための労働組合がある。キャバクラユニオンだ。2009年の結成以来、水商売に携わる人々の労働相談に乗ってきた。

キャバクラというと、「アゲ嬢」など華やかなイメージが強いが、現場ではどのような労働問題が起きているのだろうか。共同代表の布施えり子さんと、自身も現役のキャバクラ嬢である共同代表の田中みちこさんにお話を伺った。

理不尽な即日解雇と給与未払い ドリンクバックもたったの100円

―キャバクラユニオンはどのような経緯で結成されたのですか。

布施:キャバクラユニオンは、フリーター全般労働組合の分会として2009年に発足しました。フリーター全般労組は、非正規労働者でも一人で加入できる労働組合です。当時は世間のイメージが実態とかけ離れていることも課題でした。

―どのような点でイメージと実態の乖離があったのでしょうか。

布施:当時は小中学生の「将来なりたい職業」にキャバクラ嬢が入っていました。『小悪魔ageha』という雑誌もありましたし、キャバクラを舞台にしたドラマも放映されていました。そのため綺麗な格好をして楽に稼げる職業であるというイメージが世間に流布していたんです。しかし実際にはノルマ・罰金、お客さんからのセクハラや暴力などが横行しています。

―ユニオンにはどのような相談が寄せられているのでしょうか。

布施:一番多い相談は、賃金の未払いと即日解雇です。両者は密接に関係しています。経営者はお給料を支払いたくないので、突然解雇するんです。例えば「お前は勤務態度が悪い」などといって解雇する。そして解雇されたのだからと辞めた月の給与を支払わないんです。こうした給与の未払いは、100万円以下であることが多いですが、場合によっては300万〜400万になることもあります。

―他にはどのような問題がありますか。

布施:キャバ嬢へのセクハラも深刻です。ただセクハラの被害にあっていると認識している人は多くありません。給与の未払いなどでユニオンに訪れた人に「セクハラはありましたか?」と聞いても「セクハラはありません」と答えるんです。しかし詳しく話を聞いていくと「店長に足や尻を触られていた」「口説かれた」「プライベートを根掘り葉掘り聞かれた」という人は非常に多いです。中にはお客さんから足を折られるなどの暴行を受けた子もいます。

田中:求人広告のうたい文句が嘘であることも多いです。求人広告通り、ノルマも罰金もないお店なんてないと思いますよ。「特定の期間に指名のお客さんを何人以上呼ぶように」というノルマを課されて、もしノルマを達成できなければ罰金ということもあります。

ひどいケースでは、当日欠勤したら4万円の罰金を科されたり、同伴デーに同伴のお客さんを呼べないと、それだけで罰金を科されたりすることもあるんです。こうした罰金は本来、給与から引いていいものではないのですが、「お客さんを呼べていないから罰金を取られても仕方ない」と思ってしまう女の子が多いんです。

布施:時給が4000円と書いてあっても、「はじめは稼げないから仕方ない」「頑張れば時給は上がるよ」と女の子を言いくるめて、安い時給しか払わない店もあります。またもし仮に時給が求人広告通りだとしても、そこからヘアメイク、送り代、雑費、積立金など様々な名目の諸費用を引くんです。実質的には時給が最低賃金レベルになることもあります。

田中:ちなみにドリンクバックもあまりよくないお店が多いんです。私の勤めているお店では、1000円のお酒を飲んでも女の子には100円しか入りません。

―男性からの相談もあるのでしょうか。

布施:ボーイの方やホストの方などが相談に来ます。男性でも賃金未払いや即日解雇で相談に来られる方が多いです。寮で生活していた場合、寮から追い出されたり、寮に置いてあった荷物を捨てられてしまうということも起きています。

背景には非正規雇用の増加 「昼だけでは食べていけず夜も働いているという人がほとんど」

―いま水商売で働いている人はどのようなことに気を付ければよいですか。賃金の未払いや解雇に直面したときはどのように対応すればよいのでしょう。

布施:まずは店の情報を集めておくということが大切です。店の入り口に営業許可証が貼ってあるはずなので、経営者の名前と住所を記録しておいて下さい。また毎日、働いた時間を記録しておくとよいでしょう。店側から契約書などの書類をもらったら必ず保管しておいてください。給与明細も2年間分は保管しておくとよいと思います。

もし突然解雇すると言われた場合はとにかくその場で承諾してしまわないことです。それから時給を下げられたり、時給が求人広告と違ったりした場合は、メールなど形に残る方法で経営者に問い合わせてください。何も言わずに働き続けているとその時給で合意しているということになってしまいます。

―相談を寄せられた場合はどのように対応するのですか。

布施:経営者に団体交渉を申し入れ、もし応じてもらえない場合には争議を行います。店に入っていってビラをお客さんに配ったり、経営者に交渉に応じるように要求したりします。店舗の入り口で拡声器を使って呼びかけたり、通行人にビラをまいたりすることもあります。

―そもそも最近はどのような方々がキャバクラで働いているのでしょうか。

田中:以前は、夜だけ働いているという人もたくさんいましたが、いまは昼の仕事もしているけど、そのお給料だけでは足りなくて、夜も働いているという人がほとんどです。いかにも水商売の世界に生きているというタイプの女性はあまりいませんよ。

布施:背景には、非正規雇用の女性が増えていることがあると思います。10数万円の手取りだけでは、一人で暮らしていけない、一人で子どもを育てていけないという人がダブルワークをしているんです。

―今後の展望について教えて下さい。

田中:キャバクラの問題を組合で解決できるということをもっと多くの人に知ってほしいと思います。またキャバクラユニオンだけでは、やはり東京近郊にしか対応できません。全国各地でキャバクラの問題に対応できるユニオンが増えていってほしいと思います。

布施:地方の人から緊急の相談を受けても、駆け付けることは難しいのが現状です。全国どこの労働組合でも水商売の問題に対応できるようになればいいと思います。