「無償の愛」とはなにか? 幸せな結婚を手に入れるヒント

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「無償の愛」と聞いてあなたはどんなイメージをしますか? 見返りを一切求めない愛? 自己犠牲を厭わない愛? 知ってるようで知らない「無償の愛」。果たして今の自分が恋人や家族に対して抱く愛は無償の愛なのか、気になる人も多いのでは? 今回は、専門家の見解や社会人男女に取ったアンケートを元に、無償の愛について紐解きます。

<目次>
■知ってるようで知らない「無償の愛」の意味
■無償の愛なんて嘘? 無償の愛を信じる人の割合は
■対象者でどうちがう? 「無償の愛」のカタチ
●恋愛関係において「無償の愛」を感じた瞬間4つ
●夫婦関係において「無償の愛」を感じた瞬間4つ
●親子関係において「無償の愛」を感じた瞬間4つ
■無償の愛を理解したい人に見てほしい映画5つ
■まとめ

■知ってるようで知らない「無償の愛」の意味

「無償の愛ってなに?」こう聞かれたら、あなたは何と説明しますか? 自信を持って答えられる人はきっと少ないのではないでしょうか。そこでまずは「無償の愛」に対する世間一般のイメージについて、社会人男女にアンケートしてみました。果たしてみんなの考えとは……。

(※1)有効回答数402件

●みんなが考える「無償の愛」5つ

(1)見返りを求めない

・「相手に見返りを求めない。自分のすべてを捧げられる」(女性/53歳/その他/その他)

(2)自分が犠牲になれる

・「どんな犠牲を払っても、相手を守ること」(男性/53歳/医療・福祉/事務系専門職)

(3)一生その人だけを愛すること

・「一生、恋愛感情を持ち続けること! 多分、無理だと思うけど」(男性/65歳/金属・鉄鋼・化学/経営・コンサルタント系)

(4)いつでも味方でいる

・「いつまでも味方でいることと、側にいることを忘れないでいてほしい。大きな愛で包み込む気持ち。自己犠牲ですかね」(女性/44歳/その他/その他)

(5)生存を助ける

・「病気になったときの看病や、赤ちゃんの世話など」(男性/50歳/印刷・紙パルプ/営業職)

家族が病気になったら仕事を休んででも看病することがあるように、「無償の愛」とは相手に見返りを求めない、自己犠牲的なイメージをみなさん持っているようですね。では「愛の宗教」とも言われるキリスト教が説く「無償の愛」とはどのようなものなのでしょうか。牧師でもありプリマリタル(結婚前)カウンセラーの石井希尚さんにお話を聞いてみました。

石井さん:

「無償の愛」というと、キリストや善人しかできない、そんな大それたイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。古代ギリシャ語では愛を意味することばが4つありますが、「他人に提供する愛」としてエロス、フィレオ、アガペーの3つがあります。

まず、(1)エロス(情念的な愛)。これは獲得の欲求ともいえます。不倫関係にある男女はこのエロスによる行動だと言えます。つづいて(2)フィレオ(兄弟愛)。これは友情や兄弟、師弟関係などの間で自然に生まれる愛を指します。そして(3)アガペー(無償の愛)。これがいわゆる日本語でいう「無償の愛」を指します。日本語で「愛」を表す言葉は1つしかありませんが、ギリシャ語だとこんなに種類があるんですね。日本語で「愛」を理解するのが難しいのはこれが原因かもしれません。

さて、「無償の愛」は何か考えるときに一番重要なことは、それが「自分の意思により選択したものかどうか」です。つまり、自分の意思で「この人を愛する」と決めたのであればそれは「無償の愛(アガペー)」と言えます。

フィレオ(兄弟愛)と違う点は、自然に沸いてくる愛かどうか。友情は自然に生まれますよね? それがフィレオです。一方「無償の愛(アガペー)」は、自分の意思によって決めたことなので、相手が見返りをくれるかくれないかは関係ない、そういった愛になります。では「恋」とは何か。恋は感情(フィーリング)に動かされて生じるものなので、愛とは言いません。無償の愛は、恋のように感情に左右されて終ったり始まるものではないのです。

一般の人が抱く、「相手に見返りを求めず、自己犠牲的」といったイメージは、どうやらキリスト教における「無償の愛」と同じだと言えそうです。しかし、「一生同じ相手に恋愛感情を持ち続ける」こととは違うよう……。感情ではなく、意思によって「この人だけを愛する」と決めたかどうか、そこが重要のようです。

さて、そんな「無償の愛」ですが、実際に信じる人はどれくらいいるのでしょう? アンケートを取ってみました。

■無償の愛なんて嘘? 無償の愛を信じる人の割合は

Q.あなたは「無償の愛」はあると信じますか?

(※1)有効回答数402件

アンケートの結果、約7割の男女が「無償の愛」の存在を信じているようです。それでは「信じる派」の意見から見ていきましょう。

●信じる派の意見

(1)親の愛情を受けて

・「親の愛情とか家族に対する愛情が当てはまる」(女性/34歳/その他/その他)

・「親の愛情は子どもに対して、まさにそうだとおもう」(女性/34歳/その他/その他)

(2)無償の愛を与えた経験がある

・「自分の子どもが車の前に飛び出たら、身をていして助けようとしたことがある」(男性/54歳/その他/その他)

(3)尽くし・尽くされる愛をした(してる)

・「一生懸命に尽くしてくれる人がいたから」(男性/48歳/商社・卸/営業職)

・「愛したらとことん尽くします! 子どもに対してもパートナーに対してもそのスタンスは変わりません! 重くならない程度に……」(女性/56歳/その他/その他)

(4)世の中には他人にやさしい人がいるから

・「やさしくていい人はたくさんいるとおもいます」(女性/53歳/その他/その他)

(5)自分には無理でも信じたい

・「あるとは思うけど、自分は無理かな」(女性/45歳/食品・飲料/その他)

・「あると思いたい。自分には無理かもしれないが」(男性/54歳/金融・証券/その他)

実際に自分で誰かに尽くしたり、まわりにいる人からの愛情を受けた記憶がある人は無償の愛を信じる傾向があるようですね。自分には自己犠牲的な行動は無理だと思っていても、他人の美談を聞くと無償の愛そのものはあるのだと納得できるかもしれません。

●信じない派の意見

(1)自己満足かも

・「無償の愛情は、しょせん自己満足でしかない」(男性/42歳/医療・福祉/専門職)

(2)何かは求める

・「何かしら求めるから人間関係が成り立つ」(女性/59歳/その他/その他)

・「あげたら求めるのが普通だとおもう」(男性/53歳/その他/技術職)

(3)期待した時点でちがう

・「子どもへ裏切られても与え続ける愛は無償の愛かもしれないが、そこにはいつかわかってくれるだろうという期待があるとおもう。期待がある限り無償ではないとおもう」(女性/53歳/通信/販売職・サービス系)

(4)結婚しても愛は続かない?

・「結婚して30年も経つと、愛だけではない(笑)と思う。我慢のほうが多い」(男性/65歳/金属・鉄鋼・化学/経営・コンサルタント系)

・「結婚していても、素敵な人が現れたらいいな、好きと考えますね」(女性/61歳/その他/その他)

(5)与えさせてもらう喜びがある

・「与えることによって喜びを得る、与えた相手の笑顔で精神的に満たされるから、それは十分な見返りであり、だからこそ与えることができるとおもう」(女性/53歳/医療・福祉/専門職)

一方「無償の愛」を信じないという男女の意見です。もっと厭世(えんせい)的でクールな理由が多いのかとおもいきや、愛について深く考えないと出てこないような意見が集まりました。

何をもって無償の愛と定義するかで意見も変わってきそうですが、割合的には「無償の愛はあると信じたい!」という人を含め、信じる人が多いようです。1つ気になったのが、信じる人たちの意見には「親子の関係」をたとえにあげる人が多くいたことです。「無償の愛」とは家族、とくに血を分けた親子の関係にのみ生まれるものなのでしょうか。次からはもっとつっこんで「無償の愛」を探っていきたいと思います。

■対象者でどうちがう? 「無償の愛」のカタチ

「無償の愛」を実感できそうな関係といえば、アンケートでも多く出た「親子関係」、それから夫婦関係・恋愛関係に大きく絞られるのではないでしょうか。そこで気になるのが、対象によって「無償の愛」は違のかどうかです。社会人男女に、それぞれの関係において「無償の愛」を感じた瞬間についてアンケートを取ってみました。果たして違いはあるのでしょうか。専門家の解説も交えて詳しく検証していきましょう。

●恋愛関係において「無償の愛」を感じた瞬間4つ

Q.過去の恋愛関係において「無償の愛」を感じたことがありますか?

(※1)有効回答数402件

先ほど73%の人が無償の愛を信じると回答したにも関わらず、恋愛関係において「無償の愛」を感じたことがある人は37%にとどまりました。少数にはなりますが、「感じた」と回答した人はいつそう思ったのでしょうか。

(1)尽くし続けてもらったとき

・「何も求めず、こちらの要望に応え続けてくれたこと」(男性/57歳/アパレル・繊維/技術職)

・「何の見返りもなく、いろいろと尽くしてもらっている」(男性/49歳/建設・土木/技術職)

(2)彼氏・彼女のすべてが愛おしいから

・「好きな人がすること、行動などすべて素敵に見える」(女性/43歳/その他/その他)

(3)どんなときも受け入れてくれる

・「こちらの気分が悪くてひどい言動をしても理解してくれる」(女性/52歳/その他/その他)

(4)弱ってるときもそばにいてくれた

・「自身が事故を起こしたときにすぐにかけつけてくれた」(女性/56歳/その他/その他)

・「入院しても毎日様子を見て励ましてくれた」(男性/56歳/運輸・倉庫/営業職)

まだ夫婦ではない、彼氏・彼女の関係。それでも相手がケガをしたり病気になったときに必ずそばにいてくれる。そんな行動に「無償の愛」を感じる人が多いようです。また、相手の悪いところも含めて全てを愛せるから、これは「無償の愛だ」と感じる人もいるようです。

●夫婦関係において「無償の愛」を感じた瞬間4つ

つづいて夫婦関係において「無償の愛」を感じた瞬間を見ていきましょう。恋人関係と比べると8%ほど増えて44.8%の人が経験したことがあるようですね。

Q.夫婦関係において「無償の愛」を感じたことがありますか?

(※1)有効回答数402件

(1)いつも「無償の愛」を実感

・「いつも思っています。感謝しています」(女性/53歳/その他/その他)

・「いつも大事にされていると感じている」(男性/53歳/団体・公益法人・官公庁/生保・損保)

(2)手料理に感謝

・「手の込んだ料理を作ってくれたときや体調を崩し看病されたとき」(男性/52歳/その他/営業職)

(3)子どもの世話をしている姿に

・「子どもに文句を言われながらも毎日弁当を作っていた」(男性/54歳/電機/事務系専門職)

・「妻が子どもに授乳しているとき。自分が家族を守ると思ったとき」(男性/58歳/その他/その他)

(4)献身的な態度

・「健康管理や私の親の介護など、自身のことより私を中心に物事を進めてくれることが日常多々あります」(男性/56歳/医療・福祉/専門職)

夫婦関係において「無償の愛」を感じた瞬間は、夫から妻に対する日々の感謝がほとんどでした。奥さんの献身的な態度を「無償の愛」として感じている男性が多いようですね。

■親子関係において「無償の愛」を感じた瞬間4つ

つづいて親子関係において「無償の愛」を感じた瞬間を見ていきましょう。やっぱり恋人関係、夫婦関係と比べるとダントツで多く、71%の人が無償の愛を感じたことがあるようです。無償の愛は家族関係に近くなるほど生まれるものなのでしょうか?

Q.親子関係において「無償の愛」を感じたことがありますか?

(※1)有効回答数402件

(1)家族円満

・「いつでもラブラブ。子どもたちとはいつも仲良し」(男性/44歳/その他/その他)

(2)子どもへの尽くす気持ちに

・「子どものためなら、命を懸けてもいいと感じたので」(男性/58歳/その他/その他)

・「子どものために自分を犠牲にして働いてくれた」(男性/53歳/運輸・倉庫/その他)

(3)子どもの親への態度

・「いくら理不尽なことをされても、許してくれるから」(男性/64歳/アパレル・繊維/事務系専門職)

(4)自己犠牲的な援助をされた

・「自分が若いころ、お金に困ったときです。返せないのがわかっているのに、親が援助してくれた」(男性/51歳/その他/その他)

・「私の体調が悪かったとき母は寝食を忘れて私の看病してくれたこと」(女性/59歳/その他/その他)
そばにいて当たり前、尽くしてもらって当たり前……。家族とは、ついそんな風に勘違いしがちですが、自分のために必死に尽くしてくれる姿や、自分が家族のために尽くしてしまうときにふと「無償の愛」を感じる人が多いようですね。

アンケートでは恋人関係<夫婦<親子の順に、無償の愛を感じる人が増えているようですね。関係性が「家族」に近くなるほど実感するものなのでしょうか。もっと言えば、「無償の愛」とは家族関係からのみ、生まれるものなのでしょうか、石井さんの意見を聞いてみましょう。

石井さん:

たしかに「母親から子どもへの愛」がもっとも無償の愛(アガペー)に近いと言われています。母親は自己犠牲を厭わずに、わが子を守ったり育てたりできますからね。とても好きとか愛してるといった感情だけではできないことです。自分でこの子を育てる、守ると決めた(意思)からこそできる行為です。しかし聖書で「無償の愛」というと、キリストの十字架に象徴されるように、他人に対する自己犠牲を厭わない愛を指します。つまり無償の愛(アガペー)は、血の繋がってない人間のあいだで、身内(親子)に抱くような愛を抱くことなのです。難解でしょう。でもそれをわれわれはやっているのです。そう、「夫婦関係」です。

アンケート結果では親子関係の次に夫婦において「無償の愛」を感じる人が多かったようですが、そもそも夫婦の間で感じるもの・感じるべきものなのです。それができない人が増えてるからこそ「離婚」が増えているのではないでしょうか。

なんと、石井さんいわく「無償の愛」とは恋人でも、親子関係でもなく「夫婦」の間でこそ生まれるものだ、とのこと。そして自分で「この人を愛する」と意思を持って決めた相手とじゃなければ、「夫婦関係」を築くことは難しいとも話されました。アンケート結果、石井さんのお話を聞いていかがでしたか?

■無償の愛を理解したい人に見てほしい映画5つ

最後に、もっと無償の愛について理解を深めたい! という人向けに、アンケートの中で多くあがった「無償の愛」をテーマにしたオススメ映画を紹介して終ります。

(1)アルマゲドン

・「アルマゲドン。究極の自己犠牲=死、愛する人を救うため自分の命を捨てる、これこそ無償の愛だとおもう」(女性/53歳/通信/販売職・サービス系)

(2)ゴースト

・「ゴースト。非現実的だが 死んでも幽霊になって恋人の側に現れる」(男性/61歳/アパレル・繊維/経営・コンサルタント系)

(3)八日目の蝉

・「八日目の蝉 。主人公の母親は、連れていた子どものためなら 命すら捨てても構わないと感じるから」(男性/52歳/建設・土木/技術職)

(4)容疑者Xの献身

・「容疑者Xの献身。自分が犠牲になって相手を守ろうとしていたところ」(女性/44歳/建設・土木/技術職)

「アルマゲドン」「ゴースト」「容疑者Xの献身」など。さまざまな名作があがりましたね。このほかタイタニックやレ・ミゼラブルなど、悲劇的な題材の裏に無償の愛が詰まった作品もあがりました。「無償の愛」とは一体なにか。ぜひ大切なあの人と一緒に観賞しながら、語り合ってはみては?

■まとめ

「無償の愛」について、専門家の見解や社会人男女に取ったアンケートを元に紐解いてきました。いかがでしたか? 無償の愛とは理屈でもなく、感情でもなく、「意思」だということに、いろいろと考えた人もいるのではないでしょうか。幸せな結婚をするためにも、今一度無償の愛についてじっくり考えてみるといいかも知れませんね。

(監修/石井希尚 文/ファナティック)

※画像はイメージです

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マイナビウーマン調べ
調査日時2017年2月13日〜2017年2月15日
調査人数:402人(40歳〜70歳の男女)