増谷栄一の経済コラム: アメリカの失業率5.0%への低下は本物か
2005年07月11日00時37分 / 提供:ライブドア・ニュース
米経済の回復基調確認でも製造業は依然不振
【ライブドア・ニュース 2005年07月11日】− 先週末、米労働省は6月の雇用統計を発表したが、失業率が前月から0.1ポイント低下して、5.0%と2001年9月以来、約4年ぶりの低水準を記録した。アメリカの失業率は長期トレンドで見ると、2003年6月に6.3%のピークに達して以来、低下傾向を示しており、この3ヵ月(4−6月)は0.1ポイントずつ3ヵ月連続で低下、1990年代後半の景気ブーム時に近づいているといわれる。アナリストやエコノミストの多くは、今度の失業率低下は本物、つまり、これまでは、失業率が低下しても、それは統計上のテクニカルなものだったが、今度は米経済の回復の強さ(成長率3.5%)を反映した、しっかりしたものという見方を強めている。失業者数は5月の765万人から6月は750万人に低下し、ピークだった2003年6月から170万人も減少している。失業率は、失業者数を労働力人口(就業者と失業者の合計)で割算して求められるのだが、失業者数というのは、まだ仕事に就いていないが、将来、働く意思があって、過去4週間のうち1回は仕事を探したことがある人という定義なのだが、これまでは、あまりにも長期間、失業しているために、仕事を見つけるのを諦めてニート状態の人(休業者)が増えてしまい、統計上、失業者とは認定されず、その結果、失業者数が見かけ上、減り、失業率も低下していると見られてきたのだ。
それが、6月の失業率の低下については、景気が強く、企業はこれまでは新規採用を控えて従業員の労働時間を長くすることで生産性を高める努力をしてきたが、それだけでは追いつかなくなり、新規採用を増やし始めたためだと見られているのだ。その大きな根拠になっているのが、長期失業者の割合の低下だ。失業者のうち、27週間以上、失業していた人の比率は、6月が前月の20.1%から17.8%に2.3ポイントも低下、より仕事が見つけやすくなっているというのだ。5月はこの比率はほとんど変わっていなかった。
しかも、6月の就業者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)の増加数は14万6000人で、市場予想の19万4000人を大幅に下回ったものの、それほど悲観することはないという見方が大勢だ。このところの就業者数の増加は、4月が29万2000人(速報値の27万4000人から1万8000人の上方改定)、5月は10万4000人(同7万8000人から2万6000人の上方改定)とまずまずの増加傾向を示しており、1−6月の累計では、月平均18万1000人増で、2004年の月平均18万3000人増にかなり接近、政府の目標である月17万5000人増を上回っている。また、労働力人口の増加を吸収するのに必要な月平均の就業者数の増加15万人を上回る水準で推移していること、さらに、6月の就業者数の増加の大半がこれまでのような臨時雇いではなく、フルタイムの雇用、いわゆる常用という雇用の質の変化も悲観論でない根拠にもなっている。
もちろん、悲観論もある。現在、米国の景気回復は44ヵ月目に入っているといわれるが、第2次世界大戦後の過去5回の景気拡大期と比較すると、直近の景気回復期31−43ヵ月目の約1年間の就業者数の増加は、過去5回の景気拡大期の平均3.4%増に対し、今回の拡大期ではそれがわずか1.6%増にすぎないので、雇用の伸びは弱いと言えるからだ。また、6月の雇用統計の特徴の一つだが、住宅業界のバブルに近いような活況が雇用を支えている点だ。建設業では採用を前月比で1万8000人増やしたが、不動産販売や住宅ローン関連の金融機関、不動産登記など住宅関連の企業での新規採用を含めると前月比3万人以上が新たに増えている。ある意味、こうした住宅業界の活況がいつまで続くかによるという危うさもあるようだ。
また、6月のもう一つの大きな特徴として、ほとんどの業種では就業者数が伸びているのに製造業だけが減少しているということだ。製造業全体では前月比2万4000人の純減で、昨年8月以降の累計では9万6000人減と減少が著しい。6月の場合、製造業の減少の大半は自動車業界の不振によるもので、同業界では前月に比べ1万8000人の純減となった。これは米自動車最大手のGM(ゼネラル・モーターズ)と米2位のフォード・モーターの減産が影響していると見られている。北米での自動車販売の低迷で在庫が積み上がっているための生産調整が原因だ。
ライブドア・ファイナンシャル・ニュース 増谷栄一記者
(参照:http://blog.livedoor.jp/emasutani/)
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