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これさえあれば、タクシー運転手に転職しても稼げるかも……。

タクシーに乗るとついつい運転手さんのドライビングテクニックに注目してしまいますが、稼げるドライバーになるための秘訣はむしろ、乗客を効率よく見つけるテクニックにあるんだそう。そうはいっても、乗客を効率よく見つけるには個々のドライバーの経験やカンに頼る部分が大きいのが現状なんですって。そんな状況を変えてくれるかもしれない技術が登場しました。NTTドコモが開発した「AIタクシー」というシステムです。

このシステムは携帯電話のネットワークを利用し、エリアごとの人口統計と、タクシー事業者である東京無線が持っている運行データ、それに気象データや周辺施設のデータを用いて、リアルタイムでタクシーの利用需要を予測するというもの。「AIタクシー」というだけあって、需要の予測には人工知能技術が使われています。実はこのリアルタイム移動需要予測技術は、すでに2016年6月から実証実験が始まっているんだそうですよ。

実証実験に参加したドライバーの平均売り上げが約49%もアップ!





▲このようにタブレットでデータを確認できます。500m間隔のメッシュで区切られた地図が表示され、タクシーの需要予測台数がブロックごとに数値化される仕組み。

この実証実験は、東京23区と武蔵野市、三鷹市にて、東京無線のタクシー12台を使って行われており、なかなか驚きの結果を叩き出しています。実証実験に参加したドライバー26人の平均売上げは、東京無線組合の全体平均に比べて約49%も向上したとか。NTTドコモでは需要予測の正解精度を92.9%と評価しており、なかなか高い精度をたたき出しているようです。



▲30分後までの乗車台数を10分ごとに予測。海の上にかかるエリアは、さすがに需要0台となっています。



▲特に需要予測が高いエリアは、より細かい100m間隔のメッシュで区切られており、赤い点線で囲まれます。さらにどちら向きの需要が多いかまでが矢印で示され、駆けつけたら反対車線だった……みたいなことがないよう配慮されています。

現在、東京無線では4000台以上のタクシーが走っていて、1か月の総走行距離は地球727周分(2914万km)に相当するのだとか。しかも、そのうちの388周分(1554万km)は空車での走行とのことなので、このシステムを使って効率良い営業ができれば、CO2排出量の削減にも効果がありそうですね。

また、これまではベテランドライバーのカンに頼るしかなかった部分を数値化・視覚化することで、新人ドライバーの教育にも効果があると考えられているようです。今までは「この辺は人が多そう」とカンに頼ってクルマを走らせるしかありませんでしたが、エリアごとにタクシー需要がわかれば乗客の多いエリアを狙って行けるようになりますもんね。

「AIタクシー」搭載タクシーに試乗させてもらいました





ドライバーは、実際に実証実験へ参加された方です。データが表示されるタブレットはカーナビのように配置されているのかと思いきや、運転中はしまっておき、お客さんを降ろした後、次の行き先を決める際に見るとのことでした。



確かに、すでにカーナビ(と一体化した配車システム)や料金メーターなどが搭載されているスペースに、さらにタブレットまで追加するのは無理そうですね……。将来的には配車システムと需要予測システムを一体化させることも視野に入れているそうです。



走行中はタブレットを借りて、アイコンが示す自車位置が移動していくのをリアルタイムに見せてもらいました。さすがに、実際そのエリアに見込み客がいたのかどうかまでは確認できませんでしたが……。



短時間の試乗だったので、「これを使えば自分でもタクシードライバーで稼げる!」という確証までは得られませんでしたが、少なくともお客さんを探して無駄に走り回る時間は減りそうに思えました。タクシーを利用する人の立場で考えてみても、ちょっと駅から離れた場所でやっているイベントなどに参加した後に「タクシーに乗りたいけど全然来ない!」みたいな状況が減るのではないか、という期待感を持たせてくれるテクノロジーではないでしょうか。今年度中にはサービスを開始したいとのことでしたが、早く実用化されてほしいものです。

文・撮影/増谷茂樹