創立50周年を迎える日本女子ゴルフ協会にとって節目のシーズンが、3月2日からの『ダイキンオーキッドレディスゴルフ』(沖縄・琉球CC)で開幕する。

 3年連続の賞金女王を狙うイ・ボミ(韓国)、大きな飛躍が期待される20歳の堀琴音(賞金ランク11位)などに加え、昨年は日本女子オープンを17歳で制し、今季はアメリカツアーを戦う畑岡奈紗も出場する。有力選手が一堂に会するなかで、今シーズンから国内女子ツアーに本格復帰する有村智恵も注目選手のひとりだ。



2017年はフルシーズン日本ツアーで戦う有村智恵
 有村は2013年からアメリカを主戦場にしてきたが、昨年は地元・熊本を襲った震災がきっかけになり、シード権を持たないながらも国内ツアーを戦うことを決めた。6月から推薦などで出場した9試合でシード権の確保を目指したものの、最高位は日本女子オープンの10位タイ、3試合で予選落ちを味わった。賞金ランクは80位に終わり、同50位以内が手にするシード権を逃した。有村は昨シーズンの戦いを、こう振り返る。

「限られた試合数でも挑戦しようと決めて日本に戻ってきたけど、やっぱり難しかったですね。いまの実力を思い知らされました。でも、悔しさばっかりではなく、光も見えた。そんな10試合でした」

 シード権を逃した選手たちが翌年ツアーの出場試合数をかけて争う熾烈なQT(※)で、有村はファイナルQTに進んで17位になり、今シーズンは11月末の『LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ』まで、トーナメント全37戦のほとんどに出場ができることになった。開幕を目前に控えた心境を訊ねると、「不安ですね」と答える有村だが、その言葉とは裏腹に表情は明るい。理由は昨季に見えた”光”にあると言う。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。


「アメリカに行った最初の年、2013年の終盤からショットの感触が悪くなっていって。もう何をやってもダメで、球に当たった感触が悪いものしか残らなくて……。それで2015年途中から新しいコーチのもとでスイングの改造を始めて、ようやく去年それがいい方向に進んでいる手応えがつかめた。ずっと苦しんできた感触の部分で光が見えたのは大きいです。ただ、それをスコアに繋げるまでには昨年は至らなかった。今年の課題はそのいい感触をいかにスコアに結びつけるかですね」

 2012年までに国内ツアーで13勝をマークし、2009年、2011年、2012年は賞金ランク3位になった実力者が、一新したのはスイングだけではない。プロになってから初めてウエアやシューズ、ギアを変更する決断を下し、ウエアとシューズは今シーズンからニューバランスと、クラブはヤマハと新たに契約を結んだ。

「今年の誕生日で30歳になる節目というのが大きかったですね。私自身がやるべきことは目の前にあるボールをいかに少ない打数でカップに入れるかということで、これまでと変わらないけれど、一度、自分の気持ちをしっかりと切り替えたかった。ニューバランスはオシャレな人たちが着るイメージがあったので、お話を頂いたときは『着こなせるかな』と不安でした。それで実際にウエアを着たら客観的に見て、まるで別人(笑)。ただ、気持ちを新たにさせてくれるし、観る人たちにも”新しい有村智恵”というイメージを作ってもらえそうだなと楽しみにしています」

 これまでのプロ生活11年間で愛用してきたものを変えたことは、気持ちを新たにするだけではなく、肉体的な変化をもたらすことにもなった。新しいシューズを履いたことで、有村は「新たな気づきがあった」という。

「ゴルフはとにかく長時間、傾斜もあるコースを歩くので、18ホールを回った後の体の状態がすごく変わりましたね。いままでシューズに無頓着で、足が痛んだり、張ったりしても自分のせいだと思っていたけど、シューズでこんなに違いがあるのかと驚きました。いままでは結果を出すには、とにかく練習して努力してと考えてきたけど、ここから先は年齢的にも体を鍛えて追い込んでも、自分ひとりの力だけでは若い世代と戦えなくなっていく。だから、シューズにしろ、ギアにしろ、頼れるところは道具の力もどんどん借りて、いろんなサポートを受けながら戦っていきたいと思うようになりました」

 有村が今シーズン見据えているのは、「賞金ランキング何位というよりは、とにかく優勝したい。それに尽きます。1勝もできずにシーズンで何億円も稼ぐよりも、1度の優勝がほしいです」と、2012年に悲願の国内メジャー初制覇となった『日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯』以来5年ぶりとなる優勝だけだ。

 これほどまでに優勝を渇望するのは、「優勝がかかる極限のプレッシャー状態でパットを決めたときの快感をもう一度味わいたい」こともあるが、それ以上に「地元中の地元であった熊本地震の被災者に勇気を与えたい」という強い想いがある。

 昨年4月14日に熊本で最初に発生した震度7の地震の影響で、同日から熊本CCで開催予定だった『KKT杯バンテリンレディスオープン』は中止となった。熊本県嘉島町の実家に滞在していた有村も被災し、大会中止後も1週間ほど熊本にとどまって復旧作業や避難所での支援活動にあたった。


「避難所で出会った人たちや知り合いに、『試合ないの?』『活躍を楽しみにしていたのに』と声をかけられて。こんなに大変な状況なのに、私のプレーを楽しみにしてくれる人たちがいる。プロゴルファー有村智恵にしかできない方法で、地元のみんなを元気づけたいと思うようになって、昨年は日本に戻ることにしました。でも、成績を残してテレビに映って元気づけるところまではできなかった。まだまだ復興は道半ばなので、優勝することで少しでも力になりたいんです」

 3年半のアメリカツアーはゴルフに苦しんだけれど、ゴルフ観は「ワクワクする、楽しいポジティブなものに変わった」という有村。心機一転して5年ぶりに本格的に臨む国内ツアーでどんな復活劇を見せてくれるのか。20代ラストイヤーの節目となる有村智恵から今シーズンは目が離せそうもない。

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