Googleは2016年9月、さまざまなモジュールを組み立てて自分の好きな機能を詰め込んだスマートフォンが作れるプロジェクト「Project Ara」の中断を発表しました。このプロジェクトではサードパーティによるさまざまな奇想天外なアイデアが同時に開発されていたのですが、その中にはスマートフォンに「水族館」のような機能を持たせるというものが含まれていました。

Complicated. Weird. Beautiful! The secret Google project to put an aquarium full of tiny, wiggly water bears inside your phone | VentureBeat | Mobile | by Harrison Weber

http://venturebeat.com/2017/02/24/complicated-weird-beautiful-the-secret-google-project-to-put-an-aquarium-full-of-tiny-wiggly-water-bears-inside-your-phone/

「手のひらに載るスマートフォンで水族館を再現する」というプロジェクトを進めていたのは、スタートアップ「Midnight Commercial」のチームです。同社はラテアートで顔を描くロボット「Barista Bot」などを作成してきた企業で、Googleの「Project Araで今までに見たことがないモジュールの開発を」という理念に賛同して「スマホ水族館」のコンセプトを作り上げました。



「水族館」とはいっても、実際の魚を小さなスマートフォンの中で飼育することは不可能。ここで考案されていたのは、大きさ1mm程度の緩歩動物である「クマムシ」を飼育してカメラで観察できるというモジュールです。クマムシは極めて生命力が高い生き物であり、スマートフォンの限られたスペースの中でも生存できることを見込んでのアイデアでした。



スマホ水族館の実現のため、開発チームがうち立てた初期のイメージ画像がコレ。スマホケースのような本体全体を覆うモジュールの中央にクマムシが住む区画を設け、スマートフォンに装着することでいつでもクマムシの観察を行うというアイデアです。もちろん、GoogleやMidnight Commercialは本当の実用性を考えてこのプロジェクトを進めたわけではなく、Project Araだからこそ実現可能な突拍子もないアイデアを形にするためのプロジェクトでした。



とはいえ、開発は真剣そのもの。このような検証用の器具を独自に開発し、実際に飼育や撮影が可能かどうかの確認と開発が進められました。



構想スケッチでも実際の使用イメージが描かれています。画面には数匹のクマムシが映っており、その一匹をタップすると拡大され、さまざまな情報を見ることができる、というもの。いわば、顕微鏡を内蔵したスマートフォンになるわけですが、非常に小さい本体のなかに光学系を内蔵して十分な倍率を得ることは簡単な開発ではなかったそうです。



開発の中で、いくつかの問題も見つかってきたとのこと。生命力が高いと思われていたクマムシですが、実際にはカメラが発する熱に耐えられずに死滅してしまうことが判明。乾燥や冷所には強いクマムシですが、近距離からの熱に耐えることは難しかったようです。また、飼育スペース内に複数のクマムシが入っていると、なんと共食いを始めてしまうケースもあったとのこと。ちなみに、カメラの熱問題については、一定時間以上にわたって撮影が行われて熱くなった際には自動でカメラがシャットダウンし、十分に冷やされるまで使用を中断する仕組みが取り入れられていたとのこと。その際には画面に「今クマムシはお休みしています。その間は、これまでに撮影した動画を見てみませんか?」といったメッセージを表示するようになっていたとのこと。



さまざまな問題に直面しながらも、開発が進められたスマホ水族館ですが、2016年9月に決定されたProject Araの中止とともに中断されることになったとのこと。その際には、プロトタイプとして作成されていた試作品は全てGoogleによって回収されてしまったそうです。最終段階間近まで練られていたスマホ水族館のラフイメージが以下のようなもので、つきだした部分を持つ半透明の本体にするという案が考えられていたとのこと。残念ながら実現されることはなかったスマホ水族館ですが、Project Araとは別の形で実現することは否定されていないため、何らかの形で再び日の目を見る可能性も残されているそうです。