決勝点を挙げた千葉の町田(10番)。指揮官は狙い通りの形から生まれたゴールを喜んだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 良くも悪くも“落ち着かない展開”であり、応援する側からすれば冷や汗をかかされる場面の連続だっただろう。ただ、新指揮官としてフアン・エスナイデルを迎えた新生ジェフ千葉のスタイルは、攻守においてハッキリとした色が付いていた。
 
「自分たちの形がゴールになった」とエスナイデル監督はこの日の決勝点となった町田也真人のゴール、そしてそこまでの流れを褒め称えた。中盤の底を務めるアランダが右へ大きくサイドチェンジをし、受けた北爪健吾が2列目から前線に飛び出した町田也真人へ送る。これを町田がボックス内で冷静に沈めたという形だ。
 
 能動的なプレッシングでボールを奪ってから両ワイドへ展開し、幅を広げたことで間延びした相手のスキを突く、というプレーは「狙っている形」(北爪)。大事なリーグ開幕戦で理想的な形でゴールを奪うという成功体験をリーグ初戦にできたことは、まだ実績のない新体制のチームにとって非常に大きな意味をもたらす。
 
 得点する前の14分にも、左サイドに開いた清武功暉が逆サイド深くへと展開して相手の目を寄せ、受けた北爪が放ったクロスをファーサイドで合わせる、というシーンがあった。これは町田GKの高原寿康のセーブに遭い先制点とはならなかったものの、ピッチの横幅を最大限に使ったダイナミックな攻撃で今季の“千葉らしさ”を象徴するものだった。
 
「チャンスもあったので。そこでしっかり決めきりたい」と1点のみに終わり追加点が取れずじまいだったことを船山貴之は嘆いたが、形が出せなかった訳ではまったくない。
今季から10番を背負い「得点を積み重ねていきたい」と強く意気込む町田という”取るべき人”がネットを揺らしたこともこの勝利の意味を大きくする要因のひとつでもある。
 
 ただ、その裏には課題も多くある。守備においては最終ラインをJリーグ全体を見ても類を見ないほど高く保ち、それによってGKの佐藤優也は広大な守備範囲をカバーする力、正確な判断力を伴った上でボックス外へ飛び出し、第4のCBとしてのプレーが求められた。
 
 ちばぎんカップを含めた開幕前の複数の試合でそうしたスタイルをすでに披露していたが、相手にとっては明らかにディフェンスラインの裏のスペースは「狙い所」であり、この日の町田も積極的に裏のスペースを終始突こうと狙っていた。
 町田戦では、ピンチは決して少なくなく、相手のゴール前での精度の低さに助けられたというのが正直なところだ。それに関してディフェンスリーダーである近藤直也は「前半はうまくオフサイドを取れた場面があったんですけど、後半は2列目から出てくる選手の対応で後手を踏む場面があった。そこは次に向けての課題かなと思います」と語った。
 
 が、正確に裏を通せる中盤の選手と裏抜けに優れたFWがいる相手を前にすれば、守りきるのは簡単ではない。また、積極的な上下動を求められるため、試合中に蓄積する疲労と、そこから生まれるラインのズレにも不安はある。
 
 これは前線の選手にも言えることで、敵最終ラインの背後に出るロングボールを狙い走る、サイドチェンジのたびにサポートに寄る、奪われたら切り替えてプレスにいく、という作業を繰り返すことにより、最も求められるゴール前で“決める”力が残されないという悪循環も生まれかねない。
 
 ダイナミックな攻撃に期待感はあるが、逆に守備の不安も少なくない。多大な運動量を要求されるスタイルは夏場にはどうなるのか? 1-0でリードしている時には最終ラインを低くして耐えるのも必要では? と様々な問いは生まれてくる。
 
 それでも、選手たちの中には“このサッカーをやっていく”という覚悟と良い意味での割り切りがある。“極端”な形であることは間違いないが、明確なスタイルを打ち出して愚直に貫くチームがあっても面白い。そういう意味では、今季の千葉の動向に期待したいところだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)