アメリカのネブラスカ州などの7州で、「ハードウェアの修理をする権利」を求める法案が提出されています。この法案が成立すれば、ユーザーはゲーム機などの電化製品が故障した場合に、メーカー以外の修理業者で修理できるように純正パーツや修理マニュアルを提供することをメーカーに求めることができますが、ゲーム業界を中心にメーカーが法案を廃案にするべくロビー活動にいそしんでいます。

The Video Game Industry Is Lobbying Against Your Right to Repair Consoles - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/the-video-game-industry-is-lobbying-against-your-right-to-repair-consoles

ゲーム機やスマートフォンなどのハードウェアメーカーは、製品が故障した場合にメーカーやメーカーが指定する一部の業者に修理先を限定しており、万一、他の業者やユーザー自身が修理作業をした場合、それ以降のメーカー保証を打ち切るというユーザー規約を設定しています。

しかし、「自分のハードウェアが故障した場合に修理するのは当然の権利である」「メーカーはユーザーやサードパーティが製品を修理するのを妨げるべきではない」「メーカーはサービスマニュアルを公開し、純正パーツを提供して修理する権利を保障するべきだ」という「修理する権利」が注目されており、修理行為を制約しているメーカーに対する批判の声が高まっています。



例えば、PlayStation 4の「ブルーライトデス現象」、Xbox 360の「レッドリング・オブ・デス」などのゲーム機特有の欠陥が知られており、ゲーム機に内在する不具合をユーザーが早急に解消できるように修理する選択肢を広げることを望む声は数多くあります。しかし、ソニーやMicrosoftはゲーム機のネジに封印シールを貼り付けて、修理のためにシールを破けば保証が破棄されるという運用をしており、ユーザーの修理する権利は保障されていません。なお、このようなステッカーで封印する行為は、1975年に成立した「Magnuson-Moss Warranty Act」(アフターマーケットの修理保証の包括的無効を禁じる連邦法)によって違法行為とされていますが、消費者がメーカーを訴えるには訴訟費用がかかりすぎるため、実際問題としてユーザーが泣き寝入りを強いられているというのが現実です。

このような悪い慣行を正してユーザーの修理する権利を保障するべく、アメリカのネブラスカ州・ニューヨーク州・ミネソタ州・テネシー州・カンザス州・マサチューセッツ州・イリノイ州の7州で、電化製品メーカーに修理業者に修理用の部品を提供し、修理マニュアルの公開を義務づける法案が議会に提出され、審議されています。なお、この法案には修理を妨げる目的でソフトウェアロックが組み込まれている場合には、端末を元の状態に戻すためのソフトウェアツールやファームウェアの提供がメーカーに要求されるため、例えばiPhoneなどのスマートフォンはロック解除ツールの提供を強制されることになります。



しかし、Motherboardが報じるところによると、ほぼすべての大手ゲーム機メーカーは、最も厳しい法制化で知られるネブラスカ州にロビー活動を行って、修理する権利法案を廃案に追い込もうとしているとのこと。ESAなどはリディア・ブラッシュ上院議員に宛てた書簡で、「修理する権利を認める法案は、消費者の安全を脅かすため不要である」と主張しているとMotherboardは指摘しています。

メーカーの主張は大きく分類すると、「修理行為は安全ではない」「修理を認めることでサイバーセキュリティに問題が生じるおそれがある」「修理は知的財産の盗難につながるおそれがある」という3つだとのこと。しかし、メーカー側の主張は極めて抽象的な表現に終始しており、実際に法案によってどのような不具合が生じるのかを具体的に言及するものではないと指摘されています。また、そもそもこの法案は、ゲームメーカーが公認する修理業者に提供しているよりも強力なツールの提供を求めているわけでないことから、安全性やセキュリティは理由にはならず、知的財産に関しては営業秘密を保護するための特別法がすでにあるため著作権法や特許法の問題ではなく単なる契約上の問題になり、修理する権利を妨げる理由にはならないとMotherboardは一蹴しています。

仮にアメリカで「修理する権利」を保護する法案が成立した場合は、アメリカ国内の他の州だけでなく、アメリカ国外でも同様の権利を求める声が上がる可能性があるため、現在審議されている7州の動向は、全世界の消費者・メーカーの注目を集めそうです。