スマートフォン時代に重要な役割を持っているのが、クラウドです。
携帯回線の常時接続により、常にインターネットアクセスが可能になり、データ保存先をスマートフォン本体のストレージからインターネット上のクラウドストレージに移行することができるようになりしました。

このクラウド環境の利用により、
・本体データのバックアップが自動でネット上に保存できる
・複数のスマートフォンでの作業データをクラウド上で保存、共有ができる
・電子書籍やコミックなどの配信サービスのデータをクラウド上に保管できる
など、スマートフォン本体ストレージ以上のデータを、常に扱えるようになりました。

この便利なクラウドですが、クラウドが無かった時代には、一体、どうしていたのでしょうか?

まだクラウドが使えなかった時代は、モバイルユーザーはモバイル機器でデータの共有やバックアップに苦心していました。

インターネットはまだ無く、パソコン通信がメインだった1980年代、
文書の保存はフロッピーディスクという媒体に保存するスタイルでした。文書の作成も、ワードプロセッサー(通称、ワープロ)という文書作成専門機器とパーソナルコンピューター(現在のデスクトップPC)を利用していました。

この時代では、さらにワープロで作成した文書とPCで作成した文書に互換性がありませんでした。
そこで、両者を利用するユーザーは、MS-DOSのテキスト形式で保存するといったデータ形式を揃える工夫もしていました。

その後、1990年代に入り、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)やノートパソコンというモバイルデバイスが出現します。

PDAの登場で、ユーザーはさらにデータ共有で悩むことになります。
例えば、PDAの予定表に予定に入力しても、今のようにクラウド経由で複数の機器間で同期できません。したがって、その予定を見るには、PDAの予定表を確認しなければならなかったのです。
しかし、予定というものは、ノートパソコンや、自宅にあるデスクトップPCでも確認、参照したくなります。

そこで、PDAには、パソコンとデータ同期の仕組みが搭載されていました。
当時は、パソコンに専用ソフトを入れて、無線ではなくケーブルでパソコンとPDAを接続して同期をしました。今のように、無線の携帯回線で自動同期は行われませんので、同期したいときにPDAとパソコンをケーブルで接続します。

今から見れば、少々面倒に見えますが、当時はそれでもPDAとパソコンが同じデータを参照できるので、とても便利でした。

そうしたPCとのデータ同期で特に便利だったのが、Palm OSです。
Palm OSを搭載したPDAの同期ソフトは、パソコン用OSのWindowsとMacOSの両方に対応していたからです。
つまり、Palmを通じて、WindowsとMacOSのデータの同期ができる、まるで、Palmが現在のクラウドのような役割をする存在だったのです。

それまでは、フロッピーやメモリカードなどの外部の記録媒体に、MS-DOSのテキスト形式にデータ変換して保存し、PDAやWindows、MacOS間でデータのやりとりをしていた、面倒な手間の呪縛から逃れることができたのです。

筆者も、このPalm OSを搭載したPDAのおかげで、当時持ち歩いていたノートパソコンMacBookと自宅の自作Windowsパソコンとのデータ同期ができていました。
Palmという小さなモバイル機器がクラウド代わりに利用できることで、PDA、ノートパソコン、デスクトップPCという複数の機器間でデータ同期をして、現在のような利用シーンにあわせて使いやすい機器を使うというモバイル環境を体験、実現できたのです。

このPDAをクラウド代わりに使った体験から、現在のスマートフォンでも情報ハブのような感覚で使うことができています。
実際には、当時とことなり、無線環境のクラウド経由でデータ同期はしているのですが、
・パソコンで作業した内容をクラウドに保存
・スマートフォンに反映されていることを確認
といった手順で、次の作業に移るようにしています。

データ同期によるシームレスに複数のガジェットを利用することができるクラウド。
クラウド活用の基本や使い方の源流とは、PDAでのデータ互換活用だったのかもしれません。


伊藤浩一