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東京医科歯科大学(TMDU)は2月27日、肝がん特異的変異遺伝子ARID2による発がんメカニズムを解明したと発表した。

同成果は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子腫瘍医学分野 田中真二教授、島田周助教、同大学院生の大庭篤志氏、同研究科システム発生・再生医学分野 浅原弘嗣教授、同研究科口腔放射線腫瘍学分野 三浦雅彦教授、同研究科肝胆膵外科学分野 田邉稔教授らの研究グループによるもので、2月24日付けの英国科学誌「Journal of Hepatology」に掲載された。

近年、C型ウイルス肝がんに特異的な変異遺伝子としてARID2が報告され、その後の大規模解析によってARID2を含むSWI/SNF複合体は約20%の肝がんに変異を認めることがわかっている。しかし、その分子メカニズムは不明なままとなっていた。

今回、同研究グループは、肝がんにおけるARID2異常の意義を明らかにするため、ゲノム編集法によりヒト肝がん細胞のARID2遺伝子を特異的に欠失させる実験を行った。この結果、高い腫瘍形成能を獲得したため、ARID2はがん抑制遺伝子であることが明らかになった。

また、遺伝子発現解析を行ったところ、ARID2欠失肝がん細胞は紫外線(UV)によるDNA損傷・修復応答に脆弱性が認められた。実際にUV照射を行った結果、ARID2欠失肝癌細胞はUV感受性が高いことがわかった。さらにARID2欠失肝がん細胞は、DNA損傷・修復応答の異常によってベンゾピレン・塩化鉄といった肝発がん物質に対する感受性が亢進し、ARID2変異がんは体細胞変異数が多くなることも示されている。

以上により、ARID2変異によってDNA損傷・修復応答の異常をきたし、高頻度遺伝子変異を起こしている可能性が示唆されたといえる。同じファミリーのARID1Aでも同様のDNA損傷・修復応答の関与が認められたことから、これらのメカニズムはSWI/SNF複合体に共通する可能性があるという。

高頻度遺伝子変異がんは免疫チェックポイント阻害剤のターゲットとして注目されており、同研究グループは今回の成果について、肝がんのプレシジョン・メディシンへの展開が期待されると説明している。

(周藤瞳美)