エアバッグの死亡事故に端を発したリコール問題で巨額の費用負担に揺れるタカタ(株)(東京都品川区)および同社のグループ企業と取引する企業の約9割が、今後も取引の継続を望んでいることがわかった。
 すそ野が広い自動車業界でもタカタ製のエアバッグのシェア(市場占有率)は高い。サプライチェーンでの重要な位置付けを背景に、タカタと取引先の協業体制は強固なことを示している。
 2月10日、タカタは2017年3月期の連結最終損益を640億円の赤字見込みと発表した。アメリカ司法省との間で合意した罰金や被害者への賠償など司法取引に関連した損失引当金が969億円、リコール関連費用が106億円の合計1,075億円を計上したことに起因している。発表に先立つ2月4日、タカタはスポンサー候補のキー・セイフティー・システムズ社について外部専門家委員会から推薦を受けたことを明らかにしている。再建に向けた動きが活発になるなか、自主再建かスポンサー受け入れか、法的手続きか、今後の動向が注目されている。


  • 本調査は、東京商工リサーチが保有する国内最大級の企業データベース(298万社)から、タカタグループの仕入先132社を抽出。2月1日〜21日に電話にて聞き取りを実施し、51社から回答を得た。
  • タカタグループは、タカタと同社の有価証券報告書に国内連結子会社として記載のあるタカタ九州の2社とした。

取引企業の属性分析 1次仕入先は132社

 アンケート実施にあたり、東京商工リサーチの企業データベースからタカタグループと取引のある企業を抽出した。タカタグループと直接取引のある1次取引先は仕入先で132社、販売先で28社あった。1次取引先と取引のある2次取引先は仕入先で613社、販売先で158社だった。
 1次仕入先132社の地区別は、近畿が最多の54社(構成比40.9%)だった。132社のうち滋賀県は33社、タカタ九州のある佐賀県は11社、2次仕入先613社は滋賀県が23社、佐賀県は18社だった。1次と2次合計では滋賀県が延べ56社、佐賀県が同29社で、中部、関東にも分散している。
 業種別では、1次仕入先は自動車部品・付属品製造業が20社(同15.1%)でトップ。資本金1億円以上は17社にとどまり、中小企業が多いのが特徴だ。

タカタグループ取引先 地区別

タカタグループ取引先 資本金別

タカタグループ取引先 業種別社数ランキング

Q1:タカタグループのどの部門との取引ですか?(複数回答)

 51社の回答では、シートベルト部門の取引が最も多く36社(構成比70.5%)だった。次いで、エアバッグ部門の21社(同41.1%)。両部門との取引がある企業は12社(同23.5%)あった。

タカタグループとの取引部門

Q2:前期と比較して現在のタカタグループとの取引額に大きな増減はありますか?(択一回答)

 51社に取引額を聞いたところ、最多は「変わらない」の29社(構成比56.8%)だった。これ以外では、「増えている」は11社(同21.5%)、「減っている」は7社(同13.7%)と拮抗している。
 エアバッグ部門の取引先21社では、7社が「増えた」と回答。シートベルト部門の取引先36社では、7社が「増えた」と回答した。エアバッグ部門の取引先からは、「リコール対応に関する部材の受注が増えた」との声が聞かれた。

タカタグループとの取引額

Q3:タカタグループへの売上高は全体の何%を占めますか?(択一回答)

 自社の売上高に占めるタカタグループの売上高比率は、最多が「5%未満」の14社(構成比27.4%)だった。
 以下、「5%以上10%未満」が12社(同23.5%)、「10%以上20%未満」が11社(同21.5%)と続く。
 51社のうち、タカタグループ向け売上高比率が10%を超えているのは20社(同39.2%)だった。

タカタグループ向け売上高比率

Q4:タカタグループとの取引方針に変更の予定はありますか?(択一回答)

 今後のタカタグループとの取引意向については、最多は「現在の取引条件で取引を続けたい」が45社(構成比88.2%)と約9割を占めた。
 次いで、「取引条件を変更して取引を続けたい」が2社(同3.9%)だった。
 「取引をやめたい」との回答はなかった。

タカタグループとの今後の取引

Q5:万が一、タカタが法的整理による再建となった場合、望むことは何ですか?(複数回答)

 法的整理による再建となった場合、最も多かったのは「売掛金等の債権の全額弁済」の28社(構成比54.9%)だった。以下、「スポンサー主導による調達先変更の回避」の9社(同17.6%)、「商流の確保による滞りない納品」7社(同13.7%)と続く。

タカタが法的整理となった場合、望むこと

 2月10日にタカタが発表した2017年3月期第3四半期の決算短信によると、連結ベースの純資産額は478億8,000万円となっている。一方、商取引にかかわる買掛金、未払金、未払費用は合計1,263億9,100万円が計上されている。この他、決算には未計上だが自動車メーカーが負担しているリコール費用は総額1兆円を超えているとみられる。
 今回のアンケート調査に回答した51社のうち、約9割にあたる45社(構成比88.2%)が今後もタカタグループと「現在の取引条件で取引を続けたい」と答えた。自由回答では「自動車産業は車の型ごとにサプライチェーンが形成されており、自社の判断のみで取引離脱はできない」、「海外でも協力関係にあり取引量の多さからも取引の見直しは難しい」などの声も聞かれた。
 自動車に使用される部材は、完成車メーカーの性能試験などがあり参入障壁は高い。このため、他の工業規格品に比べると協業体制は強固で、1社の離脱がサプライチェーン全体に及ぼす影響は大きい。それだけにタカタグループに部材を供給している企業は、取引に関して独自の判断が難しい側面もあるようだ。
 万が一、法的整理での再建となった場合に望むことは、当然ともいえるが「売掛金等の債権の全額弁済」が28社(同54.9%)に上り、債権保全と納入責任の板挟みで取引企業のジレンマが滲み出ている。
 タカタは世界的なエアバッグメーカーに成長した。だが、製品不具合で尊い人命が失われた事故の事実を避けて通ることはできない。本田技研工業(ホンダ)がインフレーターについてタカタ製から他社製へ切り替えるなど、自動車メーカーでは一部製品の「タカタ離れ」も進んでいる。しかし、自動車産業でタカタのエアバッグのシェア(市場占有率)は高く、タカタの再建混迷によるサプライチェーンの滞りは避けなければならない。
 今回の調査で、タカタグループの取引先(仕入先)からは「定期的な工場見学会の開催など非常に対応の良い取引先だ」、「タカタグループの担当者と人間関係は非常に良好」との声も多く聞かれた。一方で、「オーナーが誰になろうとタカタが手がける事業の継続が大切だ」、「リコール問題に早く結論を出してほしい。次の展望を早く聞きたい」との切実な要望もあった。
 2009年5月のアメリカでの最初の死亡事故から、もうすぐ8年。取引先の間では再建に向けた道筋を求める声が高まっている。