開幕戦で1得点・1アシストをマークした小林。大宮戦での苦闘ぶりを語った。写真:徳原隆元

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[J1リーグ開幕戦]大宮 0-2 川崎/2月25日(土)/NACK

 間違いなく、大宮のゲームだった。決定機の数は90分を通じてホームチームのほうが多く、川崎の選手たちは洗練された大宮守備組織の穴を突いてく作業に苦戦した。

【大宮 0-2 川崎 PHOTO】新旧キャプテンの活躍で川崎が勝点3!
 
「苦しかったですし、やっていて楽しくなかったですよね。パスは回らないし、ボールはイージーなミスで取られたし……」
 
 開始早々にポスト直撃のシュートを放って大宮ゴールを脅かした小林も、苦い表情を見せながら口にした。だが、結果はどうだろう。後半に訪れたチャンスをしっかりと決めきった川崎が2-0で勝利を収めた。
 
「試合を通して言いますと、川崎らしい戦いかと言われればそうではなかった。ただ本当に、こういう長いシーズンを戦っていく上では、いろいろな勝ち方があると思いますので、また新しい勝ち方ができたと思います」
 
 鬼木監督のこの評価通り、川崎は試合を支配して攻撃的なサッカーを展開することはできなかった。これでドローもしくは黒星に終わっていれば、雰囲気は悪くなり先行き不安な船出となっていたはずだ。同時にチームにもより大きなプレッシャーが掛かっていたかもしれない。
 
 そんな最悪な状況に片足を踏み入れていたチームを救ったのが、先のコメントでこの試合の苦しさを語っていた小林だった。
 
 66分、中村の右CKを頭で合わせて先制点を記録し、終了間際の90+2分にはディフェンスラインの裏に抜け出してクロスを供給し、中村のダメ押し点をお膳立てした。
 
「崩して点を取るというのは難しい展開だったので、セットプレーで自分のところに『来い来い来い!』と思っていましたし、憲剛さんが良いボールをくれたので。強い気持ちを持って決めることができた」
 
 自分たちの流れではない試合展開で相手ゴールをこじ開ける方法として、セットプレーはひとつの大きなポイントだった。そこをしっかりと決めきるあたり、やはり彼はストライカーだ。2点目も、やや事故的ではあるが裏に流れたボールに相手DFよりも数歩早く反応した小林の“ゴールに向かう”姿勢が実を結んだもの。そして、これが新体制となった川崎に足りなかったものでもある。
 この日の川崎は1トップに家長昭博を、右に小林を置く4-2-3-1で臨んだが、前半途中から小林と家長の位置を変更している。これについて鬼木監督は「前への意欲と言いますか、ゴールへ向かっていく姿勢がもっと欲しかった」と語ったが、指揮官の中でも前への圧力、ゴールへと迫る力に物足りなさを感じていたことは明白だ。
 
 開幕戦の3日前に行われたACL・水原戦でも顕著に現われたこの課題の解決に取り組んだのだろう。左サイドに登里を入れて前への強度を出し、後半途中で森本を入れた采配にもそうした意図が窺える。
 
 そして、結果として2-0で勝利を収め、“決めるべき人”である小林が1ゴール・1アシストという活躍を果たした。
 
 ただ、これですべて良かったかと言えばそうではない。冒頭に述べた通り、“らしい”戦いはできなかった。
 
「相手の嫌がることをもっと、怖がることをやらないと。ボール回しのためのボール回しになってしまっているので。ゴールを目指すためにもっと危険なところに入っていかないと相手は怖くない。相手の3分の1コートに入ったら、敵がいようが(くさびのボールを)当てて入ってきてほしいですし、そこを横に逃げてしまったりサイドに行ったりするのは……。なんとも言えないですし難しい。中に入れて取られたらもったいないと思うかもしれないですけど、そこの感覚をもっとすり合わせていかないと」
 
 このメンバーによる最大出力が見られるまでには、もう少し時間がかるだろうし、課題は多い。ただ「内容が悪くて、結果も悪かったら前に進めなかった。しっかりと結果をものにできたということで、全員でひとつ前に進めると思う」と小林は続けて語った。
 
「最初からすべてがうまくいくわけではない」(谷口)新チームにとっては、ある意味で望ましい結果だったと言えるかもしれない。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)