オックスフォード大学 実験心理学部 主任研究員 ケヴィン・ダットン氏

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政財界のリーダーは「サイコパス度」が高い人が多いといわれる。その理由は「冷静」「自信」「メンタルの強さ」。そしてずば抜けた「集中力」だ。サイコパスのような高い集中力を持つためには、どうしたらいいのか。

■見返りがあれば、驚異的な力を出す

――普通の人と比べるとサイコパスには、どういう能力があるのでしょうか。

「冷酷」「恐れを知らない」「プレッシャーの下でパニックにならず冷静である」「自信がある」「ナルシシスト」などいくつかありますが、「集中力が高い」こともそうです。わかりやすく言えば、「仕事をやり遂げる能力」です。これは人を魅了する能力ですね。

ただし、サイコパスの人がいつでも集中力が高いというわけではありません。彼らが異常な集中力を発揮するのは十分な見返りがあるときだけです。サイコパス度が高いといわれる外科医も、普通のときは一般人よりも集中力が低いかもしれませんが、いざ手術となると、そのときの集中力はすさまじい。一切の感情移入をせず、冷静を保つことができます。特殊部隊の兵士もそうです。命を危険にさらして敵陣の前で戦っているときの集中力はすさまじい。勝利という「見返り」があるからです。

サイコパスというとマイナスのイメージを持つ人が多いですが、実際はそうではありません。サイコパスの性格を持っていれば、そうではない人よりも仕事を完璧にしようとするため、プラスのほうが大きい。自身が持つスキルを最大限に使おうとするのがサイコパスの人です。さらにルールが明確ではない、金融界のような世界でも、サイコパスの人は目的を設定して集中力を発揮します。

――サイコパスで有名な人は?

ブックツアーでドイツに行ったとき、読者からアドルフ・ヒトラーのことを聞かれました。確かにヒトラーはサイコパス度が高い。でも読者が驚いたのは、ヒトラーに劣らずサイコパス度が高いのが、ウィンストン・チャーチルであることです。首相や大統領に立候補するような人は、かなり自信家で、ナルシシストが多いので、もともとサイコパス度も非常に高いのです。首相や大統領という仕事は、さまざまな脅威、独裁者と対峙していかなければなりませんし、絶えず、難しい決断を迫られる。ひとつ間違えると国際問題に発展してしまうような決断です。

戦闘機のパイロットもサイコパス度が非常に高い。ただ彼らは敵機を追撃するというミッションを果たすために、そのことだけに集中しすぎて戦闘機の燃料が切れかかっていることに気づかず、最後は燃料切れで墜落して死んでしまうこともあります。ですからサイコパス度が高いことは諸刃の剣です。バランスが重要です。

――サイコパス度とIQは相関関係にあるのでしょうか。

それはいささか神話です。『羊たちの沈黙』に出てくるハンニバル・レクターは、天才サイコパスの典型ですが、これはフィクションです。実際はサイコパスにおけるIQは一般人のIQと同じです。私が研究のためにインタビューしたサイコパスの人の中には非常にIQが高い人もいましたが、そうではない人もいました。

たちが悪いのは、頭の悪いサイコパスです。特にバイオレントな人であれば即刑務所に入れられるような悪事を働いてしまう。知性と衝動性は関係していることがわかっています。知性が高ければ高いほど、満足したり、喜んだりすることを遅らせることができますが、知性が高くない人はより衝動的な行動をとる傾向にあるからです。

ですから、知性が高いこと、サイコパス度が高いこと、そして向いている専門職についている、という3つの条件がうまく組み合わさると、集中力が発揮できて、成功に導かれます。

■トランプ大統領はサイコパス度が高い

――今度アメリカ大統領になったドナルド・トランプのサイコパス度は高いでしょうか。

私は昨秋“Scientific American Mind”誌に、ドナルド・トランプ、ヒラリー・クリントン、テッド・クルーズ、バーニー・サンダーズの4人を分析した論文を発表しました。その中でドナルド・トランプはサイコパス度がかなり高かった。社会的影響力、恐れを知らない度合い、ストレス耐性、自己中心性、感情移入をしない度合い、服従しない力、無責任さ、冷酷さ、という8つの要素で分析しました。

その結果、ドナルド・トランプはサイコパス度が非常に高いことがわかりましたが、それは驚きではありません。彼は選挙に勝った剣闘士です。そのことを忘れてはいけません。次から次へと大統領令に署名していますが、その決断は日本を含め、諸外国に甚大な影響を与えます。

――サイコパスではない人が、サイコパスと同じように集中力を養うことはできますか。

今世界中で流行っているマインドフルネス・ムーブメントがまさにそれです。サイコパスの人は自分に関係のない情報を遮断し、一点に集中することが自然にできますが、一般の人でもマインドフルネスを実行すればできるようになります。

マインドフルネス哲学のリーダーの一人とオックスフォード大学で会って話しました。彼は「サイコパス的なマインドフルネス」と「ノーマルなマインドフルネス」の違いを説明してくれました。「ノーマルなマインドフルネス」というのは、「瞬間を味わう」(savor the moment)ことを教えられますが、サイコパス的なマインドフルネスというのは瞬間を味わうのではなく、その瞬間を貪り(devour)、できるだけ自分のためになることを最大限得ようとするのです。その違いは大きい。

――サイコパスではない人がサイコパスの集中力を得たいなら、一般的なマインドフルネスだけでなく、「サイコパス的なマインドフルネス」(利益になるのであれば、集中する)も意識すればいいということでしょうか。

そうです。サイコパスは利益にならないことには集中力を発揮しません。その場合の集中力は一般の人以下かもしれません。

――今は集中しづらい時代ですか?

ソーシャル・メディア、スマホなどはすべて集中力を妨げるものです。欧米のような先進国に住んでいる人が24時間で脳内に取り入れる情報の量は、中世イギリスの田舎に住んでいた人が生涯にわたって取り入れる情報の量と同じです。現代人は膨大な情報にさらされています。ですから、今ほど集中力が重要である時代はないのではないでしょうか。そしてサイコパスの人は圧倒的に有利な立場にあります。彼らは集中力を妨げる、膨大な情報があってもそれに影響されず、集中することができるからです。

株式市場で成功する人にはサイコパスの人が多いですが、それは重要な情報だけを取り入れてパニックにならず、冷静さを保ち、集中することができるからです。金融界にサイコパス度が非常に高い人が多いことは別に驚きではないのです。

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Q.「サイコパス」とは?
A.「共感しない」「自己中心的」「攻撃的」「平然とうそをつく」「道徳心の欠如」「他人を操る」などの特徴を持つ人格を指す心理学用語。サイコパス的要素は、多かれ少なかれ誰にでもあり、サイコパスであるかについては明確な境界線はない。
Q.「マインドフルネス」とは?
A.「今、この瞬間」に意識的に目を向けることで脳を休める、ストレス対処法。「瞑想」などを通じて体現できる。これにより一時的に脳の機能を停止させることができ、脳の疲れを取り、「集中力アップ」や「パフォーマンスの向上」につながる。

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オックスフォード大学 実験心理学部 主任研究員
ケヴィン・ダットン
1967年、英ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学のセント・エドマンズ・カレッジのファラデー科学・宗教研究所を経て、現職。英国王立医学協会およびサイコパシー研究学会会員。著書に『サイコパス 秘められた能力』(NHK出版)、『 サイコパスに学ぶ成功法則』(アンディ・マクナブとの共著、竹書房)。

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(国際ジャーナリスト 大野和基=取材・文 斎藤久美=撮影)