浦和戦では齋藤に何本も好パスを通した金井。「今日は点にならなかったけど、シーズンを通して、何点か取れるようにしていきたい」。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ開幕戦] 横浜F・マリノス 3-2 浦和レッズ/2月25日(土)/日産スタジアム
 
 学年はひとつ上だが、同じ90年生まれで、横浜のジュニアユース時代からともにプレーする。07年のU-17ワールドカップにも一緒に出場した。だから、「(齋藤)学がやりたいことは分かっている」。
 
 金井貢史――SB、CB、ボランチをこなす守備のマルチロールは、浦和との開幕戦では左SBで先発フル出場を果たす。敵の駒井善成や関根貴大と激しい攻防を繰り広げながら、ひとつ前にポジションを取る齋藤には好パスを何本も通し、チャンスをお膳立てした。
 
「あいつが良い動きをしていたから。“出させられている”っていう部分もあるし」と金井は謙遜する。もちろん、「チームのストロング(=齋藤学)を生かすために、どうポジショニングすればいいかは常に心がけている」と、自分なりのプレービジョンはある。
 
 この日は持ち味の攻撃参加が少なかったが、浦和のシステムを踏まえたうえで、齋藤の良さを引き出そうとしていた。
 
「相手が3バックだったし、自分が外から回って学が仕掛けるスペースを消したくなかった。あいつには広いスペースで勝負させたかったので。ただ、学がふたりを相手にするような状況になれば、そういう時だけは前に出て2対2の同数にしたり。そこは上手くできたと思います」
 
 少々強引でも、齋藤のスピードを最大限に引き出す正確なロングパスを供給すれば、思い切りの良いオーバーラップを仕掛けて、齋藤とふたりで局面を打開する。いずれの形も、彼らだけが共有するタイミングで攻撃を繰り出していく。
 
「ずっと一緒にやってきているので。学がどういう動きをするかも分かっている。分かっているうえで、練習中も常に話しながら、動きを確認し合っている。キャンプでも同部屋だったので、いろんな話もできました。そういう意味では、今年はいつも以上にコミュニケーションが取れている」
 
 阿吽の呼吸を見せる金井と齋藤だが、長い年月をかけて築き上げてきたものとは別の次元で、金井は齋藤をサポートしようとしている。

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「いや、普通の学ですよ。背番号が変わっても変わらなくても、学は学なんで」
 
 横浜で絶対的な存在だった中村俊輔が磐田に移籍し、その中村が担っていた「キャプテン」と「背番号10」を継承したのが齋藤だ。もっとも、大役を引き受けた男の姿は、旧知の間柄である金井の眼には特別に映っていないようだ。
 
 それでも、金井なりの考えはある。
 
「でも、少なからず背負っているものはあるはず。その重みを少しでも軽くさせるとは言わないけど、プレーに集中できるように、好きにやれるというか、あいつが楽しくできるように。そこも自分としては心がけるようにしています」
 
 浦和戦の63分、右サイドのマルティノスからサイドチェンジが入る。中央の天野純が反応したが、やや球足が長く追いかける形に。流れたボールにすかさず反応した金井が、迷いなくダイレクトで右足を振り切る――浦和の守備陣を置き去りにするドンピシャのパスが齋藤の足もとに収まった。
 
 結局、GKと1対1になるビッグチャンスを齋藤は決め切れなかった。
 
「しっかり叱っておきました(笑)」と、言葉の意味とは真逆の柔らかい笑顔を見せた金井は、齋藤への揺るぎない信頼感を口にする。
 
「でも、試合を決めるのはあいつだと思っているから。“違い”を生み出せる選手なので」
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)