球際で激しく競り合う大久保とレオ・シルバ。ともに今季の補強の目玉と言える存在だ。写真:田中研治

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 FC東京にとって、開幕戦の勝利には3つの意味がある。
 ひとつは王者、鹿島を敵地で倒したということ。もうひとつは、優勝候補の重圧に打ち克ったということ。そして最後のひとつは、控えの中島が勝利の立役者になったということだ。
 
 決勝点となったオウンゴールは、63分からピッチに立った中島の思い切りのいいミドルから生まれた。ゴールシーンを演出しただけではない。中盤での潰し合いが続いたゲームは、中島の投入から東京に流れが傾いた。
 
 一瞬の動きでマークを外してスペースを駆け上がり、ゴールを狙う。体力的に厳しい時間帯に、こういう選手が出てくることは敵にとっては悩ましく、味方にとっては非常に心強いだろう。
 
 これもまた、大型補強の効果かもしれない。
 5人の代表経験者が開幕スタメンを飾ったことで、去年までの主力や中島のような伸び盛りの若手がベンチを温めることになった。これで結果が出なければ、不協和音がくすぶりかねないが、控えの若手が勝利を引き寄せたのだ。これでチームの結束は強くなるだろう。
 
 大型補強を敢行したチームは、不満がくすぶる要素を抱えている。新戦力はいずれも大物、ベンチに座ることはプライドが許さないだろう。一方彼らにポジションを奪われた選手たちも、面白いわけがない。
 
 だが、こうした不満の種は必ずしもマイナスの要素になるとは限らない。開幕戦で中島が奮起したように、監督が上手い起用をすれば勝利への原動力になりうるのだ。中島に主役の座を明け渡した大久保や永井も、次は自分が、と思っているだろう。それはチームが勝っていく上で、とてもいいことだと思う。
 
 控え選手に救われた東京とは違い、鹿島では補強の目玉レオ・シルバが圧倒的な存在感を見せた。だが、それは勝利には結びつかなかった。
 
 レオの素晴らしいところは、ボールを奪うところだけではない。キープ力があり、多少のプレッシャーには動じない。この日も腰で敵を弾き飛ばしながらボールを保持して、観衆をどよめかせた。
 
 いいチームというものは、誰かの好プレーを周りが膨らませていくものだ。だが、この日はそうはならなかった。
 
 レオは自らがリスクを負い、敵を引きつけてからパスを出しているのに、味方がそのアドバンテージを生かし切れていない。終盤にはレオが敵の間にいる永木にパスを通したが、永木は前に持ち出せずに下げてしまった。レオは残念そうな顔をしていた。
 
 レオばかりが目立つようだと、鹿島の王座防衛は危ないかもしれない。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)