By NOAA Ocean Exploration & Research

漂着ゴミや有害物質の人間の活動が原因で排出された廃棄物による海洋汚染は地球全体で起こっている環境問題であり、各国が対策を講じてもなかなか解決には至らないのが現状です。海洋汚染を防止するのが難しい現状で、今度は人間がほとんど立ち入ったことのないマリアナ海溝やケルマデック海溝でも有害物質が発見されました。

Marine, extreme, but not pristine: Anthropogenic pollution in the deepest ecosystem on Earth | Nature Ecology & Evolution Community

https://natureecoevocommunity.nature.com/users/27531-alan-jamieson/posts/14982-marine-extreme-but-not-pristine-anthropogenic-pollution-in-the-deepest-ecosystem-on-earth

The world’s deepest ocean trenches are packed with pollution | The Economist

http://www.economist.com/news/science-and-technology/21716891-nasty-chemicals-abound-what-was-thought-untouched-environment-worlds

海溝とは海底が細長い谷のようになっている場所のことで、世界最大と言われるマリアナ海溝は長さが2550kmにおよび、現在までの調査で判明している最深部はチャレンジャー海淵と呼ばれており深さが1万911mもあります。これは標高8848mのエベレストを沈めても、山頂から海面まで約2000mほどあるという想像を絶する深さです。

海洋の比較的浅い部分では太陽光が植物の成長を促し、魚や貝などの生物が植物を消費するという地上とほとんど同じ生態系を形成しています。太陽光が届かない深海の場合は、化学物質を放出する熱水噴出孔の周辺に生態系が形成されています。しかし、熱水噴出孔は5000m以下の海底には存在が確認されておらず、5000m以下に生息する生物は、浅い海洋から降り注ぐ生物の死骸などに含まれる有機物を重要な栄養素として厳しい環境を生きています。



By USFWS - Pacific Region

海溝に降り注いだ有機物は海溝から二度と出ることがありません。その海溝にたまっている有機物に人間由来のもの、つまり人間の活動によって生み出された汚染物質が含まれていると考えたのがニューカッスル大学のアラン・ジェイミーソン博士です。ジェイミーソン博士は腐らないポリ塩化ビフェニル(PCB)やポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)といった汚染物質が海溝にいる生物の体内に侵入しているのではないか、という仮説を立てました。

実際にジェイミーソン博士は調査チームを結成し、マリアナ海溝とケルマデック海溝の7000mから10000mの間に無人調査機を沈めて端脚類を捕獲する調査を実施。調査の結果、捕獲した端脚類からPCBとPBDEが検出されました。PBDEの濃度は中程度で大きな問題ではなかったものの、問題はPCBの濃度です。



By NOAA Ocean Exploration & Research

汚染が進んでいない沿岸にいる生物から検出されるPCBは組織1gあたりに対して1ナノグラム以下ですが、汚染が進んでいる地域では100ナノグラムを上回ります。マリアナ海溝の1万250mの場所で採取された端脚類からは1gあたり495ナノグラムのPCBが検出され、8942mの場所では1gあたり800ナノグラム、7841mで採取された端脚類に至っては1gあたり1900ナノグラムのPCBが検出されました。ケルマデック海溝ではマリアナ海溝よりも検出されたPCBが少なかったものの、それでも1グラムあたり50〜250ナノグラムという高い数値だったとのことです。

なぜマリアナ海溝のPCBレベルが高かったのか、正確な原因は不明ですが、ジェイミーソン博士は「北太平洋の海流が形成している北太平洋旋廻には大量のプラスチックが蓄積されていて、ここからマリアナ海溝に分解されたプラスチックが入り込んでいる可能性がある」と予想しています。