<食専門の人気テレビ局がFacebookに投稿した「餃子の作り方」動画が、あまりにもヒドい! 案の定コメント欄は炎上しているが......>

最近、日本では「餃子ブーム」が起きていると聞く。一方、和食人気に沸くここニューヨークでは「日本の餃子」は今もスシやラーメンのような市民権を獲得しておらず、日系ラーメン店のサイドメニューか、IZAKAYA(居酒屋)にある一皿という扱いだ。ニューヨーカーにとって、餃子は小籠包を含む「ダンプリング」カテゴリーの一種であり、まだまだ中華料理なのだろう。

餃子の街・宇都宮出身の私としては寂しい限り。何とかして餃子を「和食」として認知させたいと意気込んでいたところ、先日驚くべきニュースが飛び込んできた。

朝起きてFacebookを開くと、料理番組でアメリカ人女性が「餃子の作り方」を教えている。アメリカ人も餃子を作るようになったのか、と驚いたのも束の間、観ていてギョッとした。「ポーク・ダンプリング」として紹介されているのは、今まで見たこともない餃子だったからだ。

動画を提供しているのは、アメリカ版『料理の鉄人』を放送したこともある食専門の人気テレビ局「フード・ネットワーク」。真っ赤なマニキュアをした女性がキャベツや白菜、ニラを入れない代わりに細ネギを千切りにして炒め、豚挽肉にまさかの卵を投入。オイスターソースではなく甘味噌である海鮮醤を垂らしている......。この動画が、アップされてから1日で200万回以上も再生されていた。

FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアで「フェイクニュース」が拡散し、受け手それぞれに「ファクトチェック(事実確認)」をする姿勢が求められるなか、この餃子動画に思わず「フェイク餃子に気を付けて!」と言いたくなった。

【参考記事】ネットに広がる「フェイク・ニュース」― 嘘と真実の見分け方とは

人々の情報ソースとして、ここ数年で特に成長しているのがソーシャルメディア上に流れる「動画」だが、そのうち動物と料理を取り上げたものは多くのオーディエンスを獲得するキラーコンテンツの代表格。Facebookの動画再生回数は1日に80億回を超えるというから、この餃子動画も世界中に拡散されているに違いない。

フード・ネットワーク局にフェイクニュースの意図はないにしても、これを餃子と紹介するのはいかがなものか――。そう思っていたところ、案の定Facebookのコメント欄が炎上していた。

中国系とみられる人たちからの批判的なコメントが多いなか、なかには「これは彼女流のポーク・ダンプリングの作り方だ。これが正真正銘の中華ダンプリングとは言っていない。怒るほどのことではない」といったコメントも。

確かに、ネット上にこれだけ「我流」レシピが氾濫しているのを見ると、全ての人が「正統なレシピ」を求めているとは限らないし、そもそもアレンジしたらフェイクなのか、という疑問もある。「味の好みは人それぞれだ。彼女は彼女のレシピを使っただけで、それを美味しいと思うのであればいいじゃないか」というコメントも腑に落ちた。料理レシピに限っては、「フェイク」という概念は当てはまらないということなのか。

日中「餃子」戦争の勃発に備えて

ニューヨークに来たばかりの頃はおよそ「和食」とは呼びたくない代物を出す「ジャパニーズレストラン」に目くじらを立てていたこともあったが、そうした和食を美味しいと慣れ親しんだ人たちが、いつか「本場の和食を食べたい」と日本を目指してくれればいいのかもしれない。

【参考記事】インチキ和食屋に感謝せよ

最近もイタリア系アメリカ人から「ニューヨークはピザが有名だが、あんなものはピザではない」と聞いて笑ったのだが、一方でイタリアには「本場のピザ」があるという言い方はできたとしても、これは「本物」のピザ、こちらは「偽物」という線引きは難しいだろう。

それを言ってしまうと、日本で食べるピザやニューヨークのデリでサンドイッチのように売られているスシなどはすべて偽物になってしまう。もっと言えば、本場の味を追求できるかどうかは場所に限らず、店であれ家庭であれ、作り手の腕次第だ。

アメリカ人の間で餃子ブームが起きたとき、彼らが「本場」として目指すのは中国なのか日本なのか。今はアメリカ流の餃子に物申すよりも、餃子戦争が勃発したときに備えて日本の餃子の魅力を伝えるほうに専念したほうがいいのかもしれない。

先日、ニューヨークで大人気の日本人シェフ・萩原好司さん(居酒屋「六ツ木」料理長で、専門は中華料理)に絶品餃子の作り方を伝授してもらったので、次のページで紹介します。餃子好きの皆さん、外国人に美味しい餃子をたらふく振舞って、「本場は日本だ」と言い張りましょう。

小暮聡子(ニューヨーク支局)