大宮戦では1トップに入った家長。しかし、昨季の大宮で見せたような輝きは放てなかった。写真:徳原隆元

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[J1リーグ開幕戦]大宮 0-2 川崎/2月25日/NACK
 
 大宮と川崎のリーグ開幕戦、0-0でゲームが進むなか、57分に両チームを通じて最初の選手交代が行なわれた。ピッチ脇に立ったレフェリーが掲げた背番号は「41」。両サポーターがよく知る男、家長昭博が後半早々にベンチへと下がったのだ。
 
 今季、大宮から川崎へと移籍した家長にとってリーグ初戦は、奇しくも古巣との対戦になった。「最近までいたのでこんなに早く帰ってきて、逆に違和感がなかった」と、慣れ親しんだNACK5スタジアムでのゲーム。試合前の選手紹介では、その危険性を熟知する大宮サポーターから盛大なブーイングを受けた。
 
 この日、家長が担ったのは4-2-3-1での1トップ。川崎での初陣となった3日前のACL・水原三星戦では2トップの一角に入っていただけに、新たなポジションでのプレーとなった。そのせいか、序盤からパスを受けようと必死に動き回るが、周囲と呼吸が合わず、なかなか意図した形で前を向けない。
 
 家長の苦戦と呼応するかのようにチームの調子も上がらず、前半は大宮に主導権を握られた。開幕前、そして水原三星後も川崎の独特なパス回しに「順応し切れていない」と吐露していた男は、この日もピッチの上で悪戦苦闘していた。
 
「監督にはボールをもっと引き出さないといけないと言われましたが、実際にそうだと思います。そういう点で、求められていることができていない。チームと合っていない。僕自身の問題を改めて感じました。ボールの引き出し方がまだまだと感じます。そこが良くならないといけないです」
 
 皮肉にも背番号41がピッチを退いてから9分後にチームは先制に成功し、勝利を収めた。試合前に注目を集めていた男は仲間と白星スタートを喜びながら、静かにロッカールームへと引き上げた。
 
 それでも試合後の家長の表情に悲壮感はなかった。「厳しいなかで勝てたことは良かった」とチームの勝利に手応えを示し、前を向いた。
 
 振り返れば、ここ数年の川崎の新戦力、特に前線の選手で即座にチームに順応できた人材は少ない。現在は主軸となっているボランチのエドゥアルド・ネットにしても、昨季、スタイルに慣れるまでは一定の時間を要した。
 
 だからこそ、中村も「うちはこうという崩しのパターンがない。なので、アドリブでやっていくなかで、ここに入って行けば崩せるんだと感覚で覚えていくしかない。大切なのは慣れ。こればっかりはやっていくしかない」とフォローする。
 
 今は生みの苦しみを味わう時なのだろう。しかし、家長が本領を発揮できるようになれば、川崎が強力な武器を手に入れることになる。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)