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木村拓哉が主演のTBS系ドラマ『A LIFE〜愛しき人〜』(毎週日曜 21:00〜)は、木村が演じる外科医の沖田一光を中心に、壇上記念病院の人々が描かれている。

一話ごとに、さまざまな問題が起こり、それを解決していく一話完結の要素もありつつ、木村のかつての恋人で、現在は壇上記念病院副委員長の妻である深冬の脳腫瘍の手術を、どうするかということも大きな軸になっている。

この作品は「ヒューマンラブストーリー」とうたっているだけあって、木村拓哉演じる主人公の沖田だけでなく、それ以外のキャラクターにも毎回焦点が当てられていて、組織のしがらみの中で半ばうまく立ち回ることだけに執心していた人々が沖田の存在によって徐々に変化していく姿も見られる。そういう意味では、医療ドラマではあるが、群像劇としても見ることができる。

折り返し地点を過ぎてこのドラマを振り返ると、登場人物それぞれが、傷や悩みを持ちながら生きていて、そこが視聴のポイントになっている。

○沖田は傷を癒やす存在となるのか

例えば、オペナースの柴田由紀(木村文乃)は、沖田からも一目置かれるほどの技術を持った人物。その知識は医師にも迫るものがあるのだが、実は彼女は実家が病院で親も医者だったが、手術ミスのために病院はつぶれ、医師の夢を志半ばであきらめた過去があり、その傷に触れそうになると、感情が高ぶってしまう。

柴田の傷にときおり触れてしまう井川颯太(松山ケンイチ)は、鈍感なところがあるからこそ、柴田の気持ちの受け皿になっている。そんな彼も、関東外科医学会会長の父を持ち、のちには満天橋病院を継ぐ二世医師である。周囲からは、そんな出自をうらやまれているが、井川自身は、色眼鏡で見られるのではなく、自分の力を認められたい、自分の力で一人前の医師になりたいと考えているため、最初は反発していた沖田に、次第に共鳴していく。

また、脳に腫瘍を抱えた深冬は、大病院の院長の娘で、自分自身も小児科医になり、同じ医師の壮大(浅野忠信)と結婚し、子供にも恵まれて何不自由なく暮らしているとどうしても見られてしまう。しかし、時短勤務で周囲に対してひけめを感じており、自分が医師としても母親としても半人前ではないかというコンプレックスも持っているのだ。とはいえ、その立場に対して、病院の顧問弁護士である榊原(菜々緒)に、「今は医者で妻で母で、おまけに腕のいい元彼が病院の実績に貢献してくれている。恵まれてますよね」と言われるシーンで、「そうね、私は幸せよ」と言い返すシーンがせつない。深冬は脳腫瘍を持ち、手術が成功しなければ命を失う可能性もあるからだ。

そんな深冬の夫の壮大も、ただ病院での地位や権力を欲しがる高圧的なだけの人物ではない。沖田と幼馴染の壮大は、子供のころから秀才だったが、父親からは、テストで98点を取っても「医者っていうのは少しのミスも許されないんだ。ほんの些細のミスが命取りになることだってあるんだからな。98点は0点と同じだってことを忘れちゃいけない。価値がない。100点以外は価値がない」と言われて育っている。そんな完璧でないといけないというプレッシャーが、今の壮大を形作ったのである。

病院の顧問弁護士でありながら、壮大の愛人でもある榊原もまた、ナースの柴田のように、苦労して今の職業についた。父が愛人を作り家を出てったあとは、母がパートをかけもちし、大学にいき弁護士とあった。6話では、その父親に再会するが、「今後一切、私に頼るようなことをしないでください」と誓約書を渡し、父と決別する。榊原は父と別れるのと同時に、壮大とも別れることになるのだが、帰り道、人とぶつかって地面に散らばったその誓約書を見て「どうして、どうして愛してくれなかったの」と泣くシーンはこの回のクライマックスであった。6話は、これまでで最高の15%を超える視聴率を記録したが、この榊原の傷の深さも視聴率に関係しているのではないかとも思えた。

主人公の沖田については、幼馴染の壮大に幼い頃からコンプレックスを抱いているほか、壮大の思惑により、自分の居場所をなくした過去もある。また、愛する深冬を失ってしまった過去も描かれるが、そのことで壮大を責めたりはしていない。沖田の傷にも焦点をあてる日がくるのか、それとも沖田は人々の傷を癒す存在なのか、これからの見どころはそこになるのではないだろうか。

西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。

(西森路代)