原川は左インサイドハーフで先発。2ボランチの形に変更した後半途中からはボランチを担った。中盤ならどこでも対応する柔軟性も魅力だ。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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[J1リーグ開幕戦]鳥栖1-3柏/2月25日(土)/ベアスタ
 
 柏との開幕戦に敗れた鳥栖だが、小さくない収穫があったはずだ。
 
 今季、チームのファーストゴールを決めたのは川崎からレンタルで加入した23歳の若武者だった。
 
 38分、ペナルティエリアから3メートルほど離れた位置で鎌田大地が倒され、FKを獲得する。ボールを置いたのは、原川力だった。絶好のチャンスに原川は「大地がボールを持ってたんですけど、蹴りたかったのですぐに取りました」と自らキッカーを願い出る。
 
 2メートルほどの助走から放たれたボールは、壁に当たりながらも綺麗な軌道を描き、ゴール左隅に突き刺さった。セービングに定評のある柏のGK中村航輔も手が出ないほど鮮やかなキックだった。
 
 さらに、この日チームは敗れたものの、フル出場の原川は試合を通じてプレースキックでチャンスを創出。得意のロングカウンターを封じられ、攻め手を欠いていたチームにとって、そのキックは唯一得点の雰囲気を感じさせた。
 
 セットプレーのキッカーを任されたのは前日の練習だった。昨季からレギュラーを担う福田がインフルエンザにかかったため急遽出番が回ってきたのだ。

 原川は昨年、川崎でわずか4試合と出番に恵まれなかったが、もともとリオ五輪代表にも選出されるほど能力は高く、京都や愛媛ではそのパスセンスを生かして攻撃の要としてチームを牽引していた。プレースキックにも「自信はあった」と口にする。
 
 エースの豊田を筆頭に、谷口、F・スブットーニ、キム・ミンヒョクといった空中戦に強い長身のタレントが揃うチームにとって、原川の加入は大きい。

 昨季、鳥栖はキム・ミヌ(現・水原三星)や富山らが担ったものの、確固たるプレースキッカーが不在だった。マッシモ・フィッカデンティ監督も待ち望んでいたのであろう。試合後、この指揮官は「原川の攻撃性は評価できる。(出場の)チャンスを生かしてくれた」と称賛した。
 しかし原川自身は、待望であったはずのJ1初得点を決めても「得点に欲はない。自分の得点よりチームが勝つことの方が大事」と淡々と語り、その表情は浮かなかった。覚悟を決めて新天地に移籍した原川にとって、チームを勝利に導けなかった悔しさの方が大きいのだろう。
 
 とはいえ、開幕戦で見せた高精度のキックはチームの新たな武器になるはずだ。なによりもチームの勝利のために--。勝利に飢えるプレーメーカーの右足が、鳥栖を上位に押し上げる鍵になるかもしれない。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)