榎本が浦和に去り、GK陣の中では最年長に。置かれている立場が変わり、「引っ張っていかなければならない」という想いをさらに強くしている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

[J1リーグ開幕戦] 横浜F・マリノス 3-2 浦和レッズ/2月25日(土)/日産スタジアム
 
 手元の取材ノートを見返せば、改めてその貢献度の高さが伝わってくる。
 
 浦和の決定機の数は全部で10。そのうちのふたつをラファエル・シルバに決められたが、残る8つのうち、実に5つものピンチをGK飯倉大樹は止めてみせた。
 
 その5つの中でも、とりわけ70分と90+1分のビッグセーブは、勝負の行方を大きく左右したと言っても過言ではない。
 
 前者は、1-2と逆転されたわずか5分後、エリア内で興梠慎三から強烈な一撃を浴びたが、素早い反応でキャッチ。ここで決められていれば、1-3。戦意を削がれ、勝負を決定づけられていてもおかしくはなかった。
 
 後者は、ウーゴ・ヴィエイラの同点弾が決まって2-2になった後、横浜の最終ラインの背後を取った関根貴大と1対1の局面を迎えるも、我慢して先に動かず、コースを限定させて確実にストップ。このワンプレーがなければ、前田直輝の今季初ゴールも決勝点にはならなかっただろう。
 
 守備力には定評のある浦和を相手に、3ゴールを奪った横浜アタッカー陣の奮闘は賞賛に値する一方で、守護神の活躍なくして開幕戦の大金星を語ることはできない。
 
 ハイパフォーマンスを見せた飯倉の原動力は、簡単に言えば、責任感の強さだろう。
 
「哲くん(榎本哲也/現・浦和)が抜けて、自分がGK陣の中で最年長になったし、引っ張っていかなければいけないという想いでプレシーズンを過ごしてきた。まだ1試合目だけど、ここまでやってきたことが結果として出せて良かった」
 
 また、セービングやシュートストップ以外でも、キックやフィードで工夫を凝らしながら、攻撃陣をサポートしていた。
 
「(浦和の)裏が少し空いていてスペースがあったので、(齋藤)学とかマルちゃん(マルティノス)が走っていた分、対空時間の長いボールで、高い位置で勝負させようかなというのはあった。でもそれだと、DFが勢いを持ってボールを取りに来れるので、なるべく低くて速いボールを足もとにつけるっていうのは意識していた」

【横浜3-2 浦和 PHOTO】終盤の逆転劇で横浜が浦和を撃破!
 攻守両面で大きな働きを見せた飯倉は、「結果的に勝てたのは良かった」としながらも、「チームとしてまだ全然出来上がっていない。勢いで勝負に行ったようなもんだし、内容もあまり良くなかった」と厳しい視点で試合を振り返る。
 
 チームの仕上がり具合について詳しく聞けば、自分に言い聞かせるかのように、次のように応じた。
 
「もういない俊さん(中村俊輔/現・磐田)と比べるのはあれかもしれないけど、例えば浦和のリズムの時、うちのリズムに変えるようなタメやコーチングができる選手がまだまだ少ないと感じている。勢いで行ってしまう反面、カウンターを喰らって失点とか。もっと勉強しなければならない戦い方があるんじゃないかと思う」
 
 何人かのベテランがチームを去り、自身の立ち位置が変われば、気持ちの面でも変化が生じる。
 
「いろんな意味で俊さんに頼っていた部分があるから。自分も含めて、なるべく上の人間が、若いやつが困っている時には支えてやらないと、チームが成長していかない」
 
 今季も副キャプテンに任命されている飯倉は、牽引役としての自覚をさらに高めながら、ゴールマウスの前に立つ。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)