自信がなくても大丈夫、「心を手当て」し自己肯定感を保つ方法

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現代人が抱える孤独や、昨年のドラマ「逃げ恥」でも話題になった自己肯定感・・・。この分野にエビデンスをもって取り組んでいるのが、NYの人気セラピストであるガイ・ウィンチ氏だ。

彼のTEDスピーチ「How to practice emotional first aid(心が傷ついたときの応急手当の方法)」は約430万回も再生され、「2015年で最も人気のトーク」にもランクインした。彼の著書『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当する方法』から、日本人の自己肯定感の取り戻し方について聞いた。

――まず、日本に対してどのような印象をお持ちかお聞かせいただけますか。

ウィンチ氏:昨晩日本に着いたばかりですが、お会いした皆さんはみんな優しくて礼儀正しい方ばかりでした。私はニューヨークに住んでいるんですが、ニューヨークと比べて非常に綺麗な街ですね(笑)。来日できてとても嬉しいです。

――では、さっそくご著書の内容から「自己肯定感」について主に伺っていきます。本書は全7章で構成されており、7章目の「自己肯定感」の部分は、じわじわと傷つくタイプの心の傷で、1〜6章は自覚しやすい傷について書かれているように感じました。そもそも自己肯定感が低いと、1〜6章に書かれた傷も受けやすくなるのでは。



ウィンチ氏:とても観察眼のあるコメントですね。最初の1〜6章は心の傷について、7章はその結果について書きました。自己肯定感は全てに関わってくるので、確かに他の6章とは異なりますし、別の本にしようとも考えましたが、全てに関わるからこそ一緒に語ったほうが良いと思い、この構成にしたんです。

――自己肯定感は結果ということですが、私は逆に元々自己肯定感が低いと1〜6章の傷を受けやすいと捉えました。2つはどのような関係なんですか?

ウィンチ氏:心理学では、1つの出来事が1つの結果につながり、またそれが次の結果につながるというピンポンのような考え方をします。やはり自己肯定感が低ければ傷つきやすいですし、傷つきやすいから失敗してしまい、さらに自己肯定感が低くなるという相互関係にあります。これは心理学において「下向きのスパイラル」と呼ばれています。

本書で伝えたかったのは、この下向きのスパイラルを出来るだけ早く止め、「感情の健康」を取り戻すことが重要だという点です。

混同しやすいので注意してほしいのが、「メンタルヘルス」ではなく「エモーショナルヘルス」であるということです。「メンタル」は実際の病気のことを指すので、「エモーショナル(感情)」を使っています。

――1〜6章の傷と比べ、自己肯定感の低下は自分では気づきにくいように思いますが、セルフチェックする方法はありますか?

ウィンチ氏:はい。まずは「自信を持っているかどうか」を確認しましょう。自信がないと失敗ししやすくなりますよね。「自信」には「一般的な自信」と「具体的な自信」があり、セルフチェックでは後者、つまり自分の仕事や人間関係に対して自信を持っているのかをチェックします。

もう1つは、「自己疑念が強すぎないか」。例えば「自分はこれができるかな?」と心配しすぎるのも自己肯定感が低くなっているサインの1つですし、自己批判的な考えに囚われすぎていないかどうかも診断の基準になります。

また、目標に対する自分への問いかけでもチェックすることができます。「HOW?=どのように達成するのか?」と問いかけるのは良いんですが、「Can I?=自分はできるのか?」という問いかけをしてしまう場合は、自己肯定感が低くなっているサインです。

――友人の起業家で、社会的に成功しているように見えるのに、「自己肯定感が低い」と悩んでいる人がいます。彼らは「今回はたまたま上手くいっただけで、次は失敗するかもしれない」「過大評価されているけど、本当はこんなにすごい人間ではない」と言います。どのようなアドバイスが有効ですか?

ウィンチ氏:多くの起業家にアドバイスをしているのが、成功のステップ毎に自分を認めてあげることです。起業家にとって、成功のステップはたくさんあります。まずアイデアがあり、そのアイデアが現実になる、資金調達ができる、そして会社規模が大きくなって売却するなどです。多くの起業家は、それぞれのステップで自分に対してご褒美をあげません。それが問題なんです。

起業家に限らず言えることですが、自分が良いことをしたとき、頑張ったときは自分を評価し祝ってあげてください。各ステップに対して達成したことは、ラッキーだったわけではなく、自分がちゃんと頑張ったこと。それを毎回きちんと評価することを勧めています。

――日本の特徴なのかもしれませんが、「こんなことをやりました!」と、ソーシャルメディアなどに投稿すると「大したことない」と批判されることがあります。ちゃんと自分を祝ってあげるためには、どうすれば良いですか?

ウィンチ氏:公の場で発表するのは、確かに少し威張っているように思われてしまう可能性があるので、心の中でパーティーを開くんです。

例えば、私の本は20か国語に翻訳されていますが、エージェントから「この言語で売れた」と知らせがあるたびに、その国の料理が食べられるレストランに行ってご馳走を楽しんだりします。自分のお祝いだと誰も知らなくても、自分自身で功績を認めてあげることが重要なんです。



起業家として成功する人より、失敗する人のほうが遥かに多いですが、成功している人は自分より成功している人を意識しており、失敗した人に目を向けて「自分はすごくラッキーだった」と思う人はあまりいません。「たまたま幸運だった」と考えてしまっては、自己肯定感は得られませんが、自分より成功した人・そうでない人、双方と比較して適切に評価することがポイントです。

――最後に、TEDや今回出版された本で「みんながもっと”感情の健康”に気を遣うようになり、心が健康になったら、もっと素晴らしい世界になる」とおっしゃっていますが、今後その世界を実現するために、どのような活動をしていくのか教えてください。

ウィンチ氏:すごく大きな目標ですが、実現したいですね。TEDでも話しましたが、100年前まで、人間は手を洗うことも歯磨きすることも知りませんでした。でも、認識さえできればすぐに改善できるんです。感情の健康も、今はまだ気づく段階。スタート時点に立ったばかりでゴールは見えませんが、少しずつ感情の健康の大切さについての認知を広げる活動をし、変えていきたいと考えています。

ガイ・ウィンチ(Guy Winch, Ph.D)◎ 心理学者。ニューヨーク大学で臨床心理学の博士号を取得後、セラピストとしてニューヨーク大学メディカルセンターに勤務。その後マンハッタンで開業し、20年以上にわたって心理療法を実践している。講演家としても定評があり、TEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は430万回以上(2017年2月時点)視聴され「2015年で最も人気のトーク」にランクインした。