驚いたことに、小学生が「なぜ塾に通っているのか」との質問に、「勉強して良い中学・高校から有名大学に入り、一流企業に就職すれば一生安定して暮らせる」と自信ありげに話していた。小さい時からそのように叩き込まれたのであろう。

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先日、教育問題を取り上げたフォーラムで、塾通いの小学生を紹介するビデオを見た。驚いたことに、小学生が「なぜ塾に通っているのか」との質問に、「勉強して良い中学・高校から有名大学に入り、一流企業に就職すれば一生安定して暮らせる」という返事を自信ありげに話していた。どう考えても年齢からいって、一生安定して暮らせるという発想など持てるはずかないと思うのだが、小さい時からそのように叩き込まれたのであろう。

子供に夢を託したい、親以上に成功人生を送らせたいという親のエゴが子供の個性を潰し、小さい時から型にはまった面白くない人間にしてしまっている事実に気がついていないのであろうか。

これではまるで子供は親のおもちゃでしかない。この背景には企業が有名ブランド大学から多く採用するという学歴偏重の社会を作った結果、有名大学志向に根ざす受験勉強の激烈化をもたらしたこともある。

しかし企業もこのことの弊害を反省し、幅広く多くの大学からの採用に変えつつある。ある大手企業では、かつて大学名を不問にして採用に踏み切り、一万人もの応募があったのは有名な話で、英断だった。

企業自身の将来の発展を考えた場合、企業活動の多様化によりさまざまな職種に適した能力に重点を置いた選別的採用が、事業運営上や活力を保つためにも不可欠になっているのである。すなわちバラエティーに富んだ人材、例えば専門性に優れた人、一芸に秀でた人、創造性・挑戦心に富んだ人―などが、企業が求める学生像である。

今後は、こういう多様な人たちを輩出しうる教育への改革を期待し、企業も人の面での変革を行っているので、親も、子供が個性に合った多様な楽しい将来の夢を語れる人間に、すくすく育つように、勇気をもって子供に対してのエゴを捨てていただきたい。

■立石信雄(たていし・のぶお)
1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)「The Taylor Key Award」受賞。同志社大学名誉文化博士。中国・南開大学、中山大学、復旦大学、上海交通大学各顧問教授、北京大学日本研究センター、華南大学日本研究所各顧問。中国の20以上の国家重点大学で講演している。