今作は「自分が歩んできた軌跡をめぐる1枚」と語るTRUE

 アニソンシンガーのTUREが2月22日に、2ndアルバム『Around the TRUE』をリリースした。2014年にシングル「UNISONIA」でデビュー。『響け!ユーフォニアム』など数多くのアニメテーマソングを歌うほか、「唐沢美帆」名義で作詞家として、ワルキューレ(アニメ『マクロス』)やAIKATSU☆STARS(アニメ『アイカツ!』)など多くの声優やアーティストの楽曲に参加している。「自分が歩んできた軌跡をめぐる1枚」と話すこのアルバムは、ジャズやスカ、エレクトロなど多彩なサウンドに支えられながら、アニソンシンガーとして、作詞家として、苦悩しながらも未来に希望を馳せる、TRUEという一人の人生が描き出されたものになった。楽曲、そして言葉に込めた想いとは。

物作りの葛藤をそのまま歌詞に反映

TRUE

――『Around the TRUE』というタイトルは、どんな気持ちでつけたんですか?

 今まで自分が歩いてきた軌跡や、自分が辿ってきた音楽をめぐる1枚になればいいなと。聴いてくださる皆さんには、私と共に音楽の旅をしてもらえたらと思ってつけました。作品に自分自身を投影することで一つのジャンルにこだわらず、幅広いジャンルを歌えるアニソンシンガーだからこそ作れるアルバムになったと思います。

――実際にいろんなジャンルが収録されていて、1曲目「Rainbow The Daydream」は、なんとミュージカル調!

 私は突き抜けて前向きな人間なので、そういう自分を許容してくれる広い音楽はどんなものだろう? と考えて。それで、ミュージカル感やテーマパーク感、おとぎ話のような世界観を考えました。

――曲の後半から突然ミュージカル調になりますが、主人公の女の子が音楽に目覚めて駆けだしていくような雰囲気で。それは、きっとTRUEさん自身のことですよね?

 そうなんです。私は子どもの頃、自分の声にコンプレックスがあったので、言葉で自分の気持ちを表現するのが得意ではなくて。嫌なことがあったときは、ノートに書いて気持ちを消化していたんです。だからこそ、中学生で初めてマイクを持ったとき、私が歌うことで喜んでくれる人がいることを知り、すごく目の前の世界が開けました。おっしゃる通り、まさしく私の経験を歌っています。

――それまでモノクロだった世界が、色づき始める瞬間だったんですね。

 はい。人前で歌うことが楽しいとか、自分というものを表現するのがこんなにも楽しいんだと思えるようになったのは、そのときでした。最初に苦手意識を持ってしまうと、なかなかやろうとしないですよね。それは大人になればなるほどそうで。でも、そこで一歩を踏み出すことで、新しい景色が見えるんです!

――今作には、アニメ『響け!ユーフォニアム』の楽曲で、ブラスバンドの演奏をバックに歌った「DREAM SOLISTER(Movie Ver.)」を始め、ジャズやスカなどのホーンの入った曲が多く、ストリングスの曲もあったりと、生楽器がたくさん使われている印象でした。そこは意識してのことですか?

 すごく意識しました。今の私は、聴いてくださる皆さんの中では、『響け!ユーフォニアム』のオープニングテーマを歌っている印象が強いと思います。自分が歩んでいく道の一つの答えを提示してくれた作品だと思うし、先に進むために背中を押してくれたと思っています。そうした『響け!ユーフォニアム』に対する感謝の気持ちも強くあったので、こういう生楽器を採り入れる作品になったのは、すごく自然な流れだったと思います。

――新曲にはTRUEさんの気持ちを歌われたものが多く、跳ねたビート感で圧倒的なハイトーンを聴かせるナンバー「グレースケール」もそうですね。

 私が歌詞を制作するときの、物作りの葛藤をそのまま歌詞に反映しました。私は自分自身と向き合って歌詞を書くとき、毎回スケッチを描く感覚で、思った言葉をバァ〜ッと手書きしていくんです。でも、自分と向き合って言葉にしていくと、どうしても理性が働いてしまって、こう見られたいとか、こうありたいとか、本来の自分が伝えたいことではないものに塗り固められていく感じがあって。本当に伝えたいことは真っ白なのに、それがどんどん黒くなってしまう感覚と言うか。それで白から徐々に黒へと変わっていくという意味で、「グレースケール」と名づけました。

――でも最終的に歌詞として完成されるものは、黒のままではなく実にカラフルですよね。

「Around the TRUE」初回盤ジャケ写

 そう。だからそうなるまで、何度でも書き直すんです。やっているうちに、最終的に、また最初に書いた言葉に戻ったりもするし。理想とする自分の言葉と、もっと自分の奥底に眠っている言葉はこんなものじゃないという、2つの気持ちの間で葛藤しながら、仕上げていきます。普段は完成されたキラキラしたものしかお聴かせしていないので、たまにはこういう曲があってもいいかな?って。きっと作詞家だからこそ、書けた歌詞だと思いますね。

――言葉に対する執着はさすが作詞家だけありますね。

 通っていた学校も変わっていて、作文をよく書かせる学校だったんです。宿題も文章を書くようなレポート形式のものが多くて。それで、日々思ったことや人に言えないことなど、全部ノートに書くのが習慣になって。言葉や文章を書く癖がついていたと思います。

 実はMCも、大まかに書いてまとめるようにしています。それプラス、お客さんの反応を見ながらその場で考える部分もありますけど。伝えたい大事な部分は、書いて頭に入れておくようにします。

――書くことが創作活動のベースになっているんですね。

 そうですね。そういう意味で「グレースケール」は、ちょっと変わった視点からの曲になったと思います。

かわいいだけではない、すてきな大人のおとぎ話

TRUE

――今作は、1曲目の「Rainbow The Daydream」や「TRUE COLORS」もあったり、色にまつわる曲名が多いようですけど、色にもこだわった?

 はい。曲ごとに違った色を付けられるような、構成にしたいと思っていました。ブックレットも、ページをめくるごとに新しい色が付いているみたいなイメージで作っています。大人のおとぎ話というテーマがあって、そこにデザイナーさんからのアイデアで、写真の上に手描きのイラストを入れていただいて。かわいいだけではない、すてきな大人のおとぎ話が表現できたと思います。

――その大人のおとぎ話って?

 子どものころは、キラキラとした世界に漠然と憧れたと思うんです。でも私は大人なので、汚いものや黒いもの、目を背けてしまうようなものもたくさん知ってしまっている。だから、そういうものも胸に抱きながら、子どものころのキラキラとした夢をもう一度見られるようなものが、大人のおとぎ話じゃないかなって。いろいろ乗り越えた上で、その先に見られる夢と言うか。

――その流れでいくと、エレクトロサウンドの「鍵のない鳥籠」は、大人のおとぎ話が表現されている。大人だからこその視点やシニカルさもあって。

 私は作詞家として、自分で歌うことを一度手放した時期があって。でも音楽に携わることが諦めきれず、またいつかマイクを手に取りたいと思いながら、どんどん内へ籠もって自分自身とばかり言葉を交わしていました。だけどもう一回歌いたいと、光に向かって手を伸ばしている自分も同時にいて。この小さい部屋から出て、もう一度大きな場所へ行きたいと思っていました。

――でもその鳥籠に鍵はかかってないんですよね?

 そうです。出ようと思えばいつでも出られたんです。でも、出ないことを選んだのは、私自身だったんですよね。TRUEとしてデビューしたときによく、飛ぶための翼をもらったと表現していたのですが、歌詞にも羽が出てくるし、ジャケット写真にも羽の絵が散りばめられています。TRUEとして飛び立つ前の私が、この歌詞の中にいます。

――歌詞の内容に絡めて言うと、あの頃のTRUEさんが見て、恥ずかしい大人にはなっていないですね。

 そうなっているために、頑張らないといけないですね。大人になると、諦めるのが上手くなるし、言い訳も上手になる。逃げることが容易くなってしまうのは、私は嫌だなと思っているので。

何かを見たり読んだりして感じることは、すごく大切

TRUE

――TRUEさんの軌跡や音楽が表現されたアルバムというところで、そもそもTRUEさんって、どんな人なんでしょうか?

 ひと言でいうと、バカがつくほど前向きだと思います。一度や二度手放してしまったものを、今また掴んでいる実感がすごくあるので、そういう力強さや諦めない前向きさは、一貫して私の中にあると思いますね。

――へこむこともあります?

 ありますよ、めちゃめちゃ。でもその苦悩する実感もわりと好きで。何度も苦悩を重ねてきたけど、その先には自分で解決できる答えが見つけられることを、大人なので知っているし。その先に、葛藤したぶんだけ大きな光があることもわかっている。だから苦悩していても、決して怖くはないですね。

――苦悩も糧にしていけるのは、それだけの強さがあるということだと思いますが、なんでそんなに強くなれたんですかね?

 なぜでしょうね(笑)。でもそういう自分の強さって、今の年齢でマイクを取って歌って行く上では、すごく心地良いものなんです。パッとその場に立ったとき、これが10年前ならきっとこんな風に考えてはいないだろうと思うときがよくあって。それだけ、初めてマイクを取った日から18年経って、本当に全部必要な経験ばかりだったと思っています。覚えていること、もう記憶にないようなことでも、私がここにいるためには、すべてが必要だったと思う。これは、まさに「TRUE COLORS」の歌詞なんですけど。

――煮詰まったりしたときは、どうしているんですか?

 制作しているときは、自分で解決するしかないので、落ち込んでようが何しようが、とにかく書くしかないですね。髪をうしろにひっつめて、メガネをかけてパソコンに向かっていて、とても人に見せられたものではないです(笑)。

 気分転換は上手だと思います。アニメのテーマソングの歌詞を書くことが多いので、それとはまったく関係のないアニメを見たりとか、外に出かけるとか。一度気持ちを手放して、他のことを考えるようにします。

――散歩も良いと聞きますね。

 そうですね。散歩と、あとアニメイトに行くこと(笑)。アニメやアニソンが好きなので、好きなものに囲まれていると、単純に気分がアガるし。あとは、映画に行くとか。映画が始まっちゃうと、約2時間は仕事はできないし携帯にも出られないし。強制的に仕事から離れることができるので。

――見る映画もアニメですか?

 普通の実写映画を見るときもありますけど、基本はアニメです。昨年は『聲の形』『君の名は。』『この世界の片隅に』、もちろん『響け!ユーフォニアム』も、劇場版アニメが豊作でしたね。中でも『この世界の片隅に』は、もう泣けて泣けて。目が真っ赤に腫れてブサイクになりすぎて、タクシーで帰りました(笑)。

『この世界の片隅に』は、もうしばらくは見られないです。悲しすぎて。でも見たことは忘れないです。

――僕も昔、『火垂るの墓』を見たとき、そういう感じがありました。つら過ぎて。

「Around the TRUE」通常盤ジャケ写

 わかります。幼稚園のとき、家にあった『はだしのゲン』の絵本を見たときは、衝撃と怖さでちょっとトラウマになりました。表紙を見るのも怖くて、本棚の裏に隠していたんですけど、でも次の日になると、本棚に戻ってるんです。それは、親が戻していただけなんですけど。捨てても隠しても戻ってくるし、「なんで〜!」って、それもすごく怖かったです(笑)。

――『はだしのゲン』は、5年くらい前に閲覧規制がかかるなどで話題にのぼりましたね。

 そうですね。でも思うのは、歴史的事実うんぬんは別にして、何かを見たり読んだりして感じることは、すごく大切だということ。自分の心でしっかり何を思うか。『この世界の片隅に』を見て、改めてそう思いました。

――歌を唄うことも、きっと自分が何を感じるかですよね?

 そうですよね。だから、記憶に残る作品を作りたいです。自分の中で衝撃だったものは、大人になっても絶対に忘れない。そういう音楽を手掛けていきたいです。今作の全14曲のうち1曲でも、聴いた人の心に残ったらいいですね。

――さて、6月〜7月にはツアーが。どんなライブに?

 アルバムからたくさんやりますし、今までのシングル曲もやるし。作詞家として歌詞提供させていただいた曲のセルフカバーも歌う予定です。

 セルフカバーは2ndワンマンでもやっていて。そのときは、アイドルマスターミリオンライブの「深層マーメイド」と、ワルキューレの「一度だけの恋なら」を歌って、みんなにすごく楽しんでいただけたので。今回は東名阪で全4公演あるので、いろいろやりたいなと思っています。追加公演は初めてのバースデーライブ、更にツアーファイナルなので特に楽しみにします!

――TRUEさんの歌はパワー感がすごいので、音源も良いですけど、絶対に生で聴いたほうがいいですよね。

 ありがとうございます! 初回盤には1stライブの映像が収録されますけど、映像だけでは伝わらないパワーとか熱さとかが、生のライブにはあるので。それを、ぜひとも体感しにきてほしいです!

(取材・撮影=榑林史章)

 ◆TRUE 唐沢美帆名義での歌手活動の後に作詞家に転向。2014年に名前をTRUEと改め、TVアニメ『バディ・コンプレックス』のオープニング主題歌「UNISONIA」でデビュー。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』エンディングテーマ「STEEL-鉄血の絆-」や『響け!ユーフォニアム2』オープニングテーマ「サウンドスケープ」など、数多くにアニメソングを歌い人気。作詞家としてワルキューレ「一度だけの恋なら」などキャラクターソングをはじめ、新田恵海や水瀬いのりなどの声優などに提供。

ツアー情報
<TRUE TOURS 2017 鶴子と鶴男の三日間 〜Around the TRUE〜>

6月25日(日)東京・新宿BLAZE
7月8日(土)大阪・梅田Shangri-La
7月9日(日)愛知・名古屋APOLLO BASE
全3公演ともチケット完売

<TRUE TOURS 2017 鶴子と鶴男のお誕生日感謝デー 〜Around the TRUE〜>

7月15日(土)東京・LIQUID ROOM