ゆくゆくは祖国に帰りたかったという証言も

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 マレーシアの空港で殺害された北朝鮮の金正男氏が生前、マカオ在住の知人に対して、「私は将来的に故国(北朝鮮)に帰って、何らかの政治的な役割を果たしたい」などと語り、政治的な野望を抱いていたことが分かった。

 正男氏は父の金正日総書記や、現在の最高指導者である異母弟の金正恩委員長には触れず、具体的な構想にも言及しなかったが、いつの日か、正恩氏に代わって、北朝鮮の最高指導者として「国民のために働きたかったのではないか」とこの知人は述懐しているという。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

 この知人はマカオの韓国人コミュニティの一員で、正男氏とは数人の知人と定期的に食事をともにする関係だった。これらの知人の間では、正男氏は「ジョン」と呼ばれており、酒を飲むと、ときどき「弟(正恩氏)が私を殺そうとしている。いつ人生が終わるか分からない」と身の危険を感じていることを隠さなかったという。

 しかし、マカオは中国領であり、北朝鮮側がマカオで正男氏を狙うことはないと信じていたそうで、知人は「正男氏は中国に守られていると感じていたようだ。マカオは彼に安全と娯楽を提供していた」と同紙に語っている。

 また、正男氏はマカオの旧宗主国のポルトガルと、フランスのワインを愛し、サウナで汗を流すことが好きで、ときどき興が乗ると、カジノに行ってスロットマシンで遊んだりしたという。正男氏はカジノのデータベースで、「政治的に特別な人物」として登録されており、賭け金は50万パタカ(約720万円)までの制限は受けないようになっていたというが、正男氏はスロットマシンで遊ぶだけで、大きな額の賭けごとはしなかったようだ。

 この知人は2月14日の夜、正男氏を囲んで友人ら一緒に食事をする約束をしていたが、その確認のために、13日に正男氏の携帯電話に連絡したが、通じないため、他の友人に問い合わせたところ、「いま、テレビで正男氏が殺害された事件が流れている」と言われ、正男氏の漏らしていた暗殺の危険性が現実となり大きなショックを受けたという。

 正男氏はここ数年、欧州で不動産や古美術品、ワイン関連のビジネスに従事していたが、ほとんど単独で行動し、身辺警護にはほとんど無頓着だったため、この知人が見兼ねて「もっと安全に気を使った方が良いのではないか」と忠告していた矢先の暗殺だったという。