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“韓国サッカー界のカリスマ”ホン・ミョンボが全幅の信頼を寄せる日本人フィジカルコーチ、池田誠剛。杭州緑城で再びコンビを組んだ2人は、どんな思いを持って中国サッカーに挑んでいるのか。

連続インタビューの最終回は、池田誠剛が“目指すもの”をテーマに聞いた。

――日本、韓国、そして中国を知る池田コーチが、日韓の長所を知るホン・ミョンボ監督とともに、中国サッカーで何をしようとしているのか、とても気になります。

「ホン・ミョンボ監督がどういう表現を使ったかはわかりませんが、日韓のストロングポイントをコンバインさせた上で、中国らしさもあるチームを作ろうというのが、ひとつの目標としてあります。

日本や韓国のサッカーはある程度の絵が出来上がった状態ですが、中国サッカーのキャンバスはまだ真っ白な紙の状態に近いと思うんですよ。その真っ白なキャンバスにこれからいろんな絵が描けるんじゃないかなという思いが、私やホン・ミョンボ監督にはあるんです」

――中国というバカでかく白いキャンバスに、日韓合作の絵を描く。とてもスケールが大きく痛快なチャレンジだと思いますが、その一方で日本や韓国では中国サッカーというとどうしても“爆買い”のイメージがあります。また、日本や韓国のサッカーファンの間では中国サッカーの可能性について今ひとつ懐疑的な意見があるのも事実です。

「中国サッカーの驚異的な成長スピードについては先ほどお話した通りですが、これからますます伸びていくことは明らかでしょう。極端な言い方かもしれませんが、ACLで中国のクラブが優勝するのは当たり前のような時代が、すぐ目の前に来るかもしれません。

外国人選手や海外からやってきた指導者たちによって、リーグのレべルは急成長を遂げていますし、選手の技術も意識レベルも上がっている。そうなると、どうなるか。中国サッカー界は必然的に世界を意識するようになり、それがさらに彼らを成長させていくわけです。中国サッカーの可能性は決して侮れませんよ」

――興味深いのは、その中国サッカーの発展に池田さんやホン・ミョンボ監督といった日本や韓国の指導者が携わっているということです。それって、うがった見方をすれば、日韓にとっては強烈なライバルを新たに作っているわけですよね?

「見方によってはそう見えるかもしれませんが(笑)、韓国代表のフィジカルコーチを務めたときも、“韓国を強くしたい”ということが私の最大のモチベーションではありませんでした。

あのときも、そして今でも根底にあるのは“アジアサッカーの発展が日本サッカーの強化につながる”ということです。ホン・ミョンボ監督も“アジア”という視点を持って取り組んでいます。日本のサッカー関係者とも交流が多い彼の視野は、広くて考えも深い」

――池田さんが韓国代表のフィジカルコーチに招聘される前は、韓国サッカー界で不安の声があったとも聞きます。「代表内部やチーム運営手法を日本人に明かしていいものか」と。

「ホン・ミョンボ監督は韓国での経験やノウハウを日本に伝えてもまったく構わないと。むしろ“使えるものがあれば、どんどん生かしてほしい”と。そうすることで、互いに学び合い、刺激し合える。

“韓国と日本が切磋琢磨してさらに成長していかなければ、アジアの未来はない”という考え方で、私もそこに共感するので彼と一緒に仕事をするんです」

――かつて韓国と日本の選手たちが夜通しで日韓サッカー比較や両国の未来について語り合った交流の席で通訳を務めたことがあるのですが、そこで出た言葉も「切磋琢磨できるライバルがいてこそ互いに成長できる」ということでした。
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「どんなことでも競争原理がなければ、いいものは生まれてこないと思うんです。例えば今、中東勢が強くなっていますよね。日本も韓国も中東勢に簡単に勝てなくなってきました。それを脅威に感じるのではなく、“勝てなくなってきたらどうすべきか”と、次のアプローチに進めばいい。

中国の成長も同じことです。日本や韓国にとっては乗り越えなければならない壁がまたひとつ増えるわけですが、目の前に壁が立ちはだかるからそれを乗り越えようとする意志が生まれ、成長発展するわけです」

――中国の成長を脅威として捉えず、日本も韓国もレベルアップできる好機として捉えるべきなんですね。

「ライバルがいて、そのライバルに刺激されてこそ成長できる。それは日本も韓国も体験してきたことだと思うんです。そこにこれからは中国も加わってくる。

そうすることで、アジア全体のレベルが上がり、その競争に勝つために日本も韓国ももっと頑張る。そんな健全な競争が東アジア全体で展開される日が一日にも早く来ることを期待したいですね」(了)

(文=慎 武宏)