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NHK番組では自由すぎるパフォーマンスを披露し、司会も驚嘆


2月12日の「シブヤノオト」(NHK)に出演してニューアルバム『SUPERMAN』に収録されている「一休さん」をパフォーマンスした水曜日のカンパネラ。お客さんの真ん中に脚立を立ててその上で歌い始め、そこから降りたあとは本来テレビに映らないスタジオ脇の階段を登り、最後には「大晦日あけてます」と毛筆で書かれたたれ幕(のようなもの)を披露しました。



この日の自由なステージに対して司会を務めるチュートリアルの徳井義実は「NHKは君の遊び場ではありません」と苦言(?)を呈していました。なにげなく発されたこのコメント、実は水曜日のカンパネラの存在についてのかなり的確な批評であるように思います。というのも、テレビ番組を「遊び場」にすることで自分たちの表現の幅を広げていっているのが水曜日のカンパネラというグループだからです。


過去4回出演した「ミュージックステーション」(テレビ朝日、以下Mステ)は、まさに彼女らのそんな資質が堪能できるものでした。初出演となった2016年2月26日のMステでは、テレビの画面を紙芝居に見立ててのアナログな演出で代表曲「桃太郎」を披露。



「ツチノコ」をパフォーマンスした同年7月のMステでは客席から歌い始めたり、「アラジン」を歌った同年11月のMステでは巨大なボーリング玉と衝突したりとやりたい放題。また、最新の出演となった2017年2月のMステでは、「一休さん」のミュージックビデオにおいて一休さん役を務めるダンサーのえんどぅとの共演を果たしました。



これらのステージは、「自分たちの曲をプロモーションする」というそもそもの目的にとどまらず、「テレビ番組の出演そのものを作品として完結させる」ような取り組みになっていると言えると思います。


画面全体から発せられるユーモアと少しの毒っぽさから想起されるのは、「何かいけないものを見てしまった……」というなんとも言えない背徳感とそこから生まれる恍惚感。


そこには職場や学校で思わず「アレ観た?」と語りたくなる魅力が詰まっているように思いますし(ネットに感想を書くというより直接口に出したい感じです)、「音楽ファン」ではなくても音楽番組の内容が共通の話題として成立していた時代の匂いがするような気もします(「HEY!HEY!HEY!」や「うたばん」がまだ放送されている時代だったら、ダウンタウンや石橋貴明にどんなふうにいじられていたのでしょうか?)。


 


音と言葉の両面での快楽原則を理解している稀有な作り手


不思議だけどメジャー感のある水曜日のカンパネラのテレビでのパフォーマンス。この絶妙なバランスは、彼らの楽曲とコムアイのキャラクターなくしては成立しません。時代感のあるビートミュージックと奇想天外な単語を組み合わせることでクセになる音楽を生み出すケンモチヒデフミ(作詞作曲を担当)は、音と言葉の両面での快楽原則を理解している稀有な作り手です。


発語の気持ち良さだけでなく話の設定にもこだわって生み出される歌詞(「MUSICA」2017年3月号掲載のインタビューによると、「アラジン」には“アラジンがランプを磨いて、普通はそこから魔人が出てくるんだけど、とにかくランプが汚れていることに気づいて、一生懸命磨くために研磨剤を買いに行くっていう話”“その研磨剤を売っているホームセンターが「アラジンホームセンター」っていう名前で、10時オープン”というような設定があるそうです)には、昔話や伝記の外伝を聞かせてもらっているような面白さがあります。



そしてなんといっても、そこに息を吹き込むコムアイの存在感。先日のCOUNTDOWN JAPANで初めて彼女を生で見た際にはテレビで観る以上に顔が美しくてハッとしましたが、そんな人が奔放、というか破天荒な動き(前述の「アラジン」でのMステ出演時には映画「エクソシスト」のようにブリッジで動き始めてびっくりしました)を織り交ぜながら呪文のような言葉を歌うわけで、「呪術」や「政治」と結びついていたであろう古来の日本の芸能のあり方を彷彿とさせます。


 


YouTube時代における「アーティストとテレビとの関わり方」


シーンに登場したタイミングからそのユニークなミュージックビデオが話題となっていた水曜日のカンパネラは、当初から「視覚的要素まで含めた総合的なエンターテインメント」を志向していたとも言えます。


YouTubeの浸透以降に改めて強調された「耳だけじゃなくて目も楽しめることが大事」という流れに対して自覚的なミュージシャンは水曜日のカンパネラ以外にも多数存在していますが、そういった動きをテレビの世界までうまく拡張して展開した人たちは思いのほか少ない印象があります。


テレビというメディアが「日本中のすべての人に情報を届ける圧倒的強者」から「数多あるメディアのひとつ(でも影響力は大きい)」という位置づけに変わりつつあるなかで、音楽番組においては数年前と比べると尖った表現を積極的に取り入れる土壌が整いつつあるように思います。


そんな最近の空気感と、水曜日のカンパネラの「テレビでも面白いことをやってやろう」というスタンスはとても相性が良いのではないでしょうか。


「アーティストとテレビとの関わり方」で思い出すのが、2010年代初頭のサカナクションです。テレビの場でも自分たちの世界を表現することで支持を広げていった彼らは、2013年末には紅白歌合戦への出場を果たしました。


テレビでもユニークなオーラを放ち続ける水曜日のカンパネラは、サカナクションと同じ道を歩むことができるでしょうか? 「シブヤノオト」でユーモラスに掲げられたメッセージは今年達成されるのか、そしてその暁には格式の高い場でどんなことをやるのか、とても楽しみです。


TEXT BYレジー(音楽ブロガー/ライター)



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