心配性の人は特に、ちょっとした異変にも敏感に反応し、悪い方へ悪い方へと考え、結果として身体のあちこちに“重大病”を抱え込んでしまう。こうした要因の裏に、受診した医者の言葉によって「落胆と不信に追いやられる」場合がある。患者が優しい言葉を求めているのに、それに応えきれない医者のコミュニケーション力のなさも指摘されているのだ。
 「患者さんや家族にとって、医者とコミュニケーションが上手く取れるかどうかは、治療法の選択や決定の際にはもちろん、治療後の精神状態やQOL(生活の質)にまで関わる問題です」

 『死にゆく患者と、どう話すか』(医学書院)の著者で、日本赤十字社医療センター化学療法科の國頭英夫医師は、その著書の中でこう記している。
 「私は患者さんにがんを告知の際、3つに絞って伝えるようにしています。その(1)は、がんという病気ではすぐには死なない。(2)しかし、このがんは治らない。(3)自分が主治医として責任を持つ。これを誤解のないよう、生きる希望を失わないよう話すことを心掛けています。この3つが伝われば、まず十分です。患者さんがこれで納得してくれれば、最初の主治医の務めは終わります」

 専門用語を並べて説明する医者もいるが、素人が詳細を理解するのは無理だ。だから、告知に立ち会った人ががん患者に「どういうことなのだろう?」と聞かれたら、「実は私もよく分からなかった」と、正直に言ってもらって構わないという。
 さらに國頭医師は「ただ、余命宣告は別です」とし、その理由について「余命1年という言葉だけが独り歩きしてしまい、『1年半は絶対に無理だが、半年や9カ月は保証された』との誤った考えを持たれる恐れがあり、これは間違いです」。
 そもそも“余命”は、一般的に「生存期間中央値」と呼ばれるものを指し、平均値とも違う。これを素人が理解し、さらに人に正確に伝えるのは不可能だ。

 また、別な専門家も、余命説についてこんな言い方をする。
 「患者さんが『余命1年』と言われたら、その意味は『治療を行った過去の患者さんの半分が、1年以上生きたという統計数字。そのため、これから治療を行うあなたの予測ではない。ただし、その間に何かあったらいけないので、例えば長期ローンなどはしない方がいい』と言う程度に伝えて頂ければよいと思います」
 ただ、そこに至るまで、積極的にコミュニケーションを取って説明してくれる医者がどれほどいるかも問われるところ。

 ある医療機関が実施したアンケート調査では、通院先を変えた一般の患者800人の半数以上が「医者とのコミュニケーションが取れなかった」を理由に挙げている。その中身は主に次の4つだ。
 (1)診療時間が短くてゆっくりと会話ができなかった。
 (2)対等な立場で話ができる雰囲気がない。
 (3)話が筒抜けで落ち着いて話ができない。
 (4)何を質問してよいか分からない。
 このように、一般の患者でさえも医者とのコミュニケーションに苦労していることが分かる。