これまでショールームであったソニービル、その最期は建築そのものが主役となって幕を閉じるのです。

昨年末から開催されている「It’s a Sony展」。その第2段となる「It’s a Sony展 Part-2」が2017年2月21日(火)から2017年3月31日(金)にかけて開催されています。展示内容もガラッと変わったので、前回たとえ何度も訪れた人でも楽しむことができるでしょう。

「Its'a Sony展 Part-1」についてのレポートはこちら:ひとりで行くか、別行動が吉。ソニーを大回顧する「It's a Sony展」が時間泥棒すぎる

展示終了後は大規模リニューアル計画「銀座ソニーパークプロジェクト」にともない建替え工事がはじまります。そのため、この「It’s a Sony展」は現在のソニービルの最期の姿を見る機会でもあるのです。


ソニービル最期の姿を目に焼き付けておきたい。「It's a Sony展 Part-2」レポート02


今回の展示、なんといっても驚きなのは歴代のソニー製品で満たされていた前回の内容とは打って変わって、フロアにはほとんど何も展示されていないこと。しかし、だからこそソニービル本来の姿を通して、その空間コンセプトを感じられる展示となっています。

壁に描かれた大規模なウォールアートや、4Fから2Fまで連なる長さ約35mにも及ぶ「パークの木琴」もソニービル特有の花びら構造を引き立てる、そんなインスタレーションとなっています。



木琴の玉はちょうど人の歩くスピードで転がっていきます。2つ下のフロアまで見渡せるのも花びら構造ならでは。


ソニービル最期の姿を目に焼き付けておきたい。「It's a Sony展 Part-2」レポート03


期間中はアーティストの方が巨大なウォールアートに絵を描き足していきます。よく見ると遊び心あふれるイラストも隠れているので、お見逃しなく。


ソニービル最期の姿を目に焼き付けておきたい。「It's a Sony展 Part-2」レポート04


それでは、あらためて建築について見ていきます。ソニービル建設されたのは今から半世紀以上も昔の1964年。建築家芦原義信が設計を手がけました。今回の展示では当時の青焼き図面のコピーを見ることができます。まず注目してほしいのが、こちらの3Fの平面図。中央の空間に着目してください、間仕切り壁が一切存在しないんです。


ソニービル最期の姿を目に焼き付けておきたい。「It's a Sony展 Part-2」レポート05


SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の建築は柱(写真赤)と梁により構造を持たせているため、基本的には構造用の壁が必要なく大きな広い空間を実現することができるのが利点。しかし、実際の美術館といった建築では展示空間を仕切るため、壁を立てているのが実情です。この「空間の仕切り」をソニービルでは90cmの段差、花びら構造で生み出し、壁の存在しないSRC造の特徴を最大限に活かした空間を再現しているのです。


ソニービル最期の姿を目に焼き付けておきたい。「It's a Sony展 Part-2」レポート06


そして、もう一つこの図面で注目しておきたいのが階段やトイレ、エレベータといった部屋の集まり、通称「コア」(写真青)と呼ばれる部分の位置です。思い返してみてください、多くのオフィスビルでは通常このようなコア部分はフロアの中心に配置されていないでしょうか? エレベーターがフロアの中心にありその周りに各部屋が配置されている、そんなビルが多いかと思います。しかし、ソニービルではこれらのコアをあえて外側に出すことによって、中心の大きな空間をつくりだしているのです。


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1Fの平面図にも目を見張るものがあります。通り沿いの外部空間は「サンクンガーデン」と名付けられているのです。つまり、この空間は決して看板やサイネージを置くためにもうけられているのではありません。「ガーデン」=「庭」を、地価の高い銀座の一等地のフロア面積をわざわざ削り確保したのです。今でこそこういった緑地空間を持つ建築は珍しくありませんが、周りの多くの建物が敷地いっぱいに建つ中、半世紀も前の時代に芦原義信がランドスケープデザインに対して敬意を払っていたことに驚きを隠せません。


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こちらが現在の「サンクンガーデン」の様子です。


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今後のリニューアル計画では、花びら構造の2段目までを残し、ソニービルは「減築」されます。そしてサンクンガーデンを広げるかのように、敷地全体が緑で覆われ、2018年夏から2020年秋の間は「銀座ソニーパーク」という名の公園に生まれ変わります。その後2022年までに新しいソニービルが開業する予定です。


ソニービル最期の姿を目に焼き付けておきたい。「It's a Sony展 Part-2」レポート10

image: kazoomii


この姿を見ることが出来るのも残す所あとわずか。写真を見て気づいた方もいるかもしれませんが、ソニービルの隣に建つ、イタリアを代表する建築家レンゾ・ピアノ氏が設計した銀座メゾンエルメスはちょうど道を挟んでシンメトリーになるようデザインされているんですよね。そして興味深いことに、現在のソニービルは建設当時のブラウン管を用いた外観が再現されているのですが、こうして並べて見ると銀座メゾンエルメスのガラスブロックを用いた外観が非常に当時のそれと似ていることに気づかされます。例えソニービルが姿を消すことになっても、こうやって次の時代の建築に影響を与え、そのDNAが受け継がれていく様には感慨深いものがあります。

2022年、この場所に一体どのような姿をしたソニービルが新たに建つことになるのでしょうか。


image: suzuko
source: It's a Sony展, GINZA SONY PARK PROJECT|ソニービル
(kazoomii)