photo by Myriams-Fotos via pixabay(CC0 Public Domain )

写真拡大

 ジーンズが世界的に広まったのは1950年代からであるが、これがまたトランプ大統領が問題視している北米自由貿易協定(NAFTA)の今後のメキシコとの交渉の行方に左右されることになりそうである。というのは、米国で販売されているジーンズの50%はメキシコで生産されているからである。(参照:「BBC」)

 ジーンズの代表的なブランドであるLevis´s、Diesel、Gap、Hollister、Cimarron、Calvin Klein、Guess等はメキシコで生産されているのである。メキシコはバングラデシュについで世界で重要なジーンズの生産国なのだ。

 23年前にNAFTAが成立すると、米国のジーンズメーカーはメキシコでの生産を図るようになった。何しろ、メキシコでの労働コストの安さが生産者側にとって魅力だったのだ。当時、米国に比較して、メキシコの労賃は8分の1から10分の1であるとされていた。(参照:「BBC」)

 この魅力が要因となって、米国からメキシコへの投資は<1994年に170億ドル>であったのが、<2015年には928億ドル>まで急増したのである。

 勿論、そこには無関税という利点と、隣国同士であるということから道路と線路を利用しても輸送費も大幅に削減されるという点もあった。米国は南米のコロンビアとも同等の自由貿易協定を結んでいるが、コロンビアから米国への輸送手段が割高になっているため、やはりここにメキシコの地の利はあったのだ。

◆12万人以上の雇用が失われる!?

 米国からの投資のお陰で、メキシコ社会保障協会によると、<12万5000人がジーンズの生産に従事している>という。その主な生産地域は<ドゥランゴ、プエブラ、グアナフアト、メキシコ・シティー>に集中している。一方の米国ではメキシコで生産された<ジーンズの販売業者は6万4000人いる>と米国衣類及び靴協会が明らかにしている。

 米国とメキシコでジーンズへの需要が如何に高いかを示すものとしてメキシコ社会保障協会の調査が示しているが、<米国ではひとりにつき7枚のジーンズ>を持ち、メキシコでは5枚のジーンズを持っている>ということである。また、アパレル産業会議所はジーンズだけで<両国の年間取引総額は80億ドル(9200億円)に成る>と報告している。それはメキシコで生産されている<ジーンズの60%>を意味するものである。残り<40%は国内消費とペルー、チリ、コロンビア向けに輸出>しているという。(参照:「Fashion United」)

 トランプ大統領がメキシコからの輸入に20%の関税を掛けると発言しているが、そうなれば最終的にそれは米国の消費者の負担に繋がることになる。しかし、それはジーンズの生産体制の見直しを迫るものとなって来る。そして、その影響でメキシコでのジーンズの生産が減少すれば、メキシコ経済の後退を意味するようになる。それは同時に米国における雇用の減少にも繋がるようになる。メキシコが米国に代わる別の市場を見つければ理想的であるが、米国で消費されるだけの輸出量を他の国で見つけることは先ず不可能なのである。

 しかし、実質的に現状のままでのNAFTAが継続される見込みはなく、メキシコは新たな市場開拓が必要となっており、同時にアメリカ人はこの先ジーンズの新たな仕入先が必要になってくる。

<文/白石和幸  photo by Myriams-Fotos via pixabay(CC0 Public Domain )>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。