石井正忠監督(鹿島アントラーズ)インタビュー(後編)

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――クラブW杯の決勝は、1-0になった後、レアル・マドリードが一瞬、緩みましたね。

「楽勝ムードになったと思います」

――そんな中、小笠原満男選手が惜しいミドルシュートを放った。そうしたら、スタンドも”おっ”という感じになり、それがピッチにも波及して、何となくムードが変わったような気がしました。

「遠藤康が打ったシュートで後半を終えたのですが、あれも自信をつけさせてくれたシーンでした。

 2戦目のマメロディ・サンダウンズ、3戦目のアトレティコ・ナシオナル戦も前半は滅茶苦茶、押されながら、そこから逆転してるじゃないですか。あの2試合に勝ったことも、チームにとって大きな自信に繋がっていました」


1967年2月1日、千葉県生まれ。現役時代はNTT関東、住友金属工業を経て、鹿島アントラーズ創設時のメンバーに。98年に現役引退後、鹿島で指導者の道に進む。2015年、監督に就任。2016年、Jリーグアウォーズで最優秀監督賞を受賞――セルヒオ・ラモスが退場になると思ったら、ならなかった判定の問題については、試合後の監督はことのほか冷静でした。

「あそこでいろいろ言っても仕方ないことで、冷静に対応できる方法はないかなと思って、ああいうコメントになりました。『レフェリーに勇気がなかった』という言い方をしたんですけど。こちらは勇気を持って戦ったのに。悔しかったですけれど、力の差は感じていました。

 その中で、曽ヶ端(準)と小笠原ですね。やはりベテランの存在が大きかったと思います。小笠原はゲームの流れが読めます。いま待つべきか、もっと攻撃的にいくべきかの駆け引きが巧い。その点に関しては、他のチームのベテラン選手と比べても上かなと思います。それは彼が年々積み重ねていったもので、若いときにジョルジーニョ等に教わったり、ゲームに出ながら、彼らの姿を見て学んだ経験がいま生きているのだと思います」

――得点のパターンの話なのですが、チャンピオンシップからクラブW杯にかけて、そのほとんどが外からの折り返しでした。

「サイドから崩す。これは徹底してやっています。そこからはいろんなコンビネーションを使って崩そうとしていますが、Jリーグでは分析されているので、十分に発揮できていません。クラブW杯では研究されてない分、出せたのかなと。今季は、新加入選手の特徴を活かしながら、研究されても、さらにその上をいくような得点パターンを作っていきたい」

――メンバー交代も見事でした。昨季終盤の1カ月、試合が立て込んでいた時にうまく使い回すことができました。

「疲労度、パフォーマンスを見ながら、ハッキリ決断することが僕の大きな仕事だと思っています。誰であろうが、戦術も含めてダメなときはスパッと」

――4-4-2は今シーズンも継続しますか。

「中盤の4枚がどういう形になるか、いろいろ試したいと思います。横並びの2トップも、相手ボールの時は変わります。そこは従来の形にこだわらずに。試合が始まると、相手に対応しなくてはいけませんので」

――永木亮太選手がサイドハーフに出たり、サイドバックの西大伍選手がボランチに入ったり、ユーティリティな選手が多いのも鹿島の特徴です。

「それは練習を見ながら探っています。ボランチの選手でも、瞬間、ポジションが変わったりするじゃないですか、流れの中で。その時にどのような対応をしているのか、この場所でも使えるかどうか観察しています。それが後々、生きてくる」

――土居聖真選手はどこでもできますよね。もともとの資質なのでしょうか。それとも監督が練習でユーティリティ性を意識させているのですか。

「うちのサイドハーフは守備の役割が多いので、そこをやらせて、そして本来の2トップに戻す。そこでまたフォワードとしての守備の意識が薄らいできたら、またサイドハーフをやらせてみる。そうした試みを繰り返しながら、2トップ、サイドハーフともにできるようにしていく。そうした練習はしてますね」

――ああいう選手が1人いると……。

「楽ですね。聖真もそうですし、鈴木優磨、永木亮太、柴崎岳にはチャンピオンシップからですけれど、左のサイドハーフをやってもらいました」

――同時に、選手の潜在的な能力も上がりますよね。

「上がります。僕は柴崎岳には、代表でもボランチで出てほしかった。だからずっとボランチで起用してきましたが、代表ではちょっと高い位置で使われることが多かった。トップ下とか。ならば、うちでもサイドハーフをやっておくと代表に呼ばれたときにいいかなと思って(笑)」

――優しいですね。

「選手に能力があるからです。鈴木優磨にも練習で右サイドバックをやらせました。それをやっておくと、自分がサイドハーフとして高い位置で出たときに、後ろのサイドバックとの連携、動きのタイミングが分かる。ゲームの中で、サイドハーフは相手のサイドバックにオーバーラップされると、一緒に戻らなきゃならないじゃないですか。そうした時の対応の仕方とか、サイドバックをやったことがあるかないかで全く違います。紅白戦で20分間はやらせるとか。今シーズンもいろいろ試していきたいです」

――畑を耕しながら、シーズンを乗り切る?

「バランスが難しいですけどね。最初にガーンと落ちてしまうと、上位に戻るのが難しい。自分へのプレッシャーも少なくしながら(笑)、チーム内でいろんな形を作っていきたいなと」

――もう一度クラブW杯に出場するためには、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)に勝たなくてはなりません。並大抵のことではありません。

「今回のクラブW杯のように、短い時間で相手の分析をして、対応しなければいけない。前半は相手の力を見ながら耐えて、後半どううまく戦い、勝ち切るか。むしろクラブW杯の経験が生きてくると思う。ACLに出ても同じような戦いができるのではないでしょうか。今までとは違ったACLの戦いができると思います。

 グループリーグはどうにか乗り切れるかなと考えています。その先、西アジアのチームと戦う時は、戦ったことのないタイプだと思うので、そういうときこそ、前半バタつかないで安定した戦いをして、相手の力量を見ながら、後半ゲームを変えていく。そうした戦いをしたいです」

――短期間の偵察は大変ですよね。

「今回、チャンピオンシップからクラブW杯にかけて、うちの分析の担当者が大活躍してくれました。僕とコーチ陣が映像を見ながら、その分析に合わせてミーティングをするのですが、チームはその分析の能力に支えられていました。彼のよさは、選手に与える情報量が適度だということです。与えすぎず少なすぎず。たくさん与えてもキャパをオーバーするので」

――監督としてもっと磨きたいことはありますか。

「一番はコミュニケーションの部分だと思います。選手とコーチングスタッフの間に入ったり、そういうことを意識してやっているつもりですが、もっとやらなければ、と。今年は有望な選手が多く加入したので、質の高い選手がサブに回るじゃないですか。ですから余計にコミュニケーションを取っていかないと。

 また、Jリーグの監督としては、Jリーグ自体のレベルを上げていきたいと思うし、だから、他のチームももっと前からプレッシャーにいって、バチバチやってもらいたいなと思うんです」

――そういう試合を期待しています。

「こちらもチャンピオンシップ(準決勝)で、フロンターレ相手に守る感じになっちゃったんで、そこをもっともっと前からいかせなきゃいけないなと。そうすれば相手も来るわけです。強くなる要素は、そうした戦いの先にあると思います。とにかく仕掛けていきたいです。行ったり来たりではなく、サイドバックをそこに絡めながら、相手の陣内でしっかりボールを保持する形を目指したい。守備の時間を少なくしたい。

 今季は左利きのサイドバック(三竿雄斗)が入りました。ペドロ・ジュニオール、レアンドロ、そして攻守にフルに活動できるレオ・シルバも入ってきたので、速い攻撃もできるし、相手陣内で保持する時間も増えるのではないかと。そういうサッカーにしていきたいです」

――バルセロナが目指すべき方向ですか。

「あれが理想だと考えます」

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