金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄・金正男氏殺害事件について、正男氏の後ろ盾だったとされる中国は沈黙を守っている。関与が強く疑われる北朝鮮への不快感を隠しながら、事態の推移を慎重に見守っているとみられる。写真はマレーシアの新聞。

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2017年2月24日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄・金正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害されてから10日余。正男氏の後ろ盾だったとされる中国は沈黙を守っている。関与が強く疑われる北朝鮮への不快感を隠しながら、事態の推移を慎重に見守っているとみられる。

金正男氏の殺害が発覚した翌日の15日、中国外交部の耿爽報道官は定例記者会見で「マレーシアで発生した事件であり、現地当局が調べている」と繰り返すばかり。マカオで中国の保護下にあるとされる正男氏の長男ハンソル氏の動向についても、耿報道官は21日の記者会見で「状況を把握していない」と説明を避けた。

国営新華社通信は14日夜、韓国のTV朝鮮の報道を引用したソウル発記事を配信した後、続報を伝えていない。中国国営中央テレビ(CCTV)は金正男氏の名前には触れずに、「マレーシアのクアラルンプール国際空港で北朝鮮の男性1人が倒れ、病院に運ばれたが死亡した」と短く伝えただけだった。

中国共産党中央委員機関紙・人民日報系の環球時報は17日、殺害事件に関連して中国当局のメディア対応を批判する異例の論評を掲載。論評は殺害をめぐり、韓国メディアの報道が国際世論の「価値判断」を主導しているのに対し、中国側は「何の情報も発信せず、沈黙する傍観者」になっていると指摘。沈黙を保つことで当局者は「責任を負うリスクを下げている」と批判した。

しかし、その後も中国当局は事件について言及しないまま。朝鮮日報は中国の専門家の「今回の事件は北朝鮮が金正日時代よりもさらに独裁的で勝手に振る舞うことを中国に悟らせる警鐘だ。中国は北朝鮮をこれ以上特別な国として対応しないのではないか」「中国にとって金正男氏は北朝鮮の急変事態に備えたカードだった。北朝鮮の犯行だと判明すれば、中国も見過ごすことはできないだろう」などの見方を紹介している。

こうした中で中国は18日、北朝鮮からの石炭の輸入を19日から年末まで停止すると発表した。石炭は北朝鮮の主要な外貨獲得源。表向きは昨年11月に国連安全保障理事会で採択された北朝鮮に対する制裁決議に基づいた措置と説明しているが、12日には北朝鮮のミサイル発射、13日には殺害事件と続いており、別の意図もあるのではとの臆測を呼んでいる。

一方、北朝鮮側には今回の事件で中国を刺激するのを回避した形跡がうかがえる。マレーシア警察が事件に関与したとして北朝鮮に身柄の引き渡しを求めた同国籍の4人は、クアラルンプールからインドネシア、アラブ首長国連邦、ロシアを経て平壌に戻ったとされる。最短ルートの北京経由は使わなかった。(編集/日向)