23日、中林美恵子早稲田大学准教授が日本記者クラブで講演した。2大政党制の中で取り残された人々が独断的なトランプ氏に熱狂したと指摘。議会やメディアへの国民の支持率が激減し、このままでは米国社会の分断が進み、民主主義は危機的状況に陥ると警告した。

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2017年2月23日、米国政治事情に詳しい中林美恵子早稲田大学准教授が日本記者クラブで「トランプ政権と米議会」と題して講演した。2大政党制の中で取り残された人々が独断的なトランプに熱狂したと指摘。議会やメディアへの国民の支持率が激減し、このままでは米国社会の分断が進み、民主主義は危機的状況に陥ると警告した。

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中林氏は米共和党の議会スタッフを長年務めた。発言要旨は次の通り。

米国で既存メディアへの不信感が高まり、ギャラップ社の世論調査で「メディアを信頼する」と答えた割合は、2015年の40%から、16年には32%に激減した。共和党支持者に限ると、15年の33%から16年には14%と半減。2002年には50%と過半の支持があったが、この14年間で4分の1に落ち込んだことになる。

米国の2大政党制の中でメディア批判が組み込まれ、共和党の大統領が誕生した。その人(大統領)が言うのだからそうじゃないか(メディアは信頼できない)と感じる側面がある。お互いに火をつけあって回転してしまっていることがあるのではないか。

一方で社会の中での不満もある。今まで共和党を支持してきた、宗教とか米国が立脚すべき自助努力などピューリタン的な発想などを信じている人たちの反発がある。お金がどんどん海外やカリフォルニア、大都市などに持ち出され自分たちは疎外されていると考える人たちを政党は吸い上げてこなかった。共和党だけでなく民主党支持者にもそういう考え方を持つ人が増えている。大統領候補となったサンダース氏に人気が集まったのはその典型だ。

メインストリーム(中枢)や議会に対する支持率も19%ぐらいしかしかない。国民の不信不安が高まっている。2大政党制のせいで民主党か共和党かで、どちらかに含まれない考え方の人の選択肢が制限される。2大政党制の負の部分であり、自分の意見を体現してもらえない。2大政党制は「政権交代」や「チェック&バランス」が可能となるなどメリットもあるが、取り残された人たちが出る。

政治家もかなり腐敗している。議員たちは利益団体との癒着がなければ次の選挙もままならない。ワシントンの既存政治家が嫌われるゆえんだ。

トランプを生んだのもメディアであり、対決姿勢を取ることによって両方が利益を得ている。社会は分断されつつある。マスメディアは違う意見や見方を吸い上げて示すなど、市民に対するバランスのとれた情報発信が大事だと思う。議会とメディアは民主主義の基盤だが、(尖鋭的な)対立は互いのダメージにつながる。

昨今、ソーシャルメディア(SMS)で一人一人が発信するようになっている。自分のためにではなく、正確に見通した上で、他者のために発信しているか、見定めるべきだ。「戦争」という「ちゃぶ台返し」に巻き込まれないよう対応しなければならない。既存メディアは果たすべき役割があり、重要性は増すだろう。

(トランプ大統領弾劾の可能性について)米国大統領は法律的な違反事項がなければ弾劾されない。クリントン氏は不倫疑惑の際、偽証罪、でかけられた。刑事的な要素があるかどうか。米国の国益を毀損するような明らかな事実があったか。道徳上、国民から反感が起こっただけでは弾劾されない。(八牧浩行)