【恋する歌舞伎】第19回:泣く子も黙る、江戸で一番ケンカっ早い伊達男。真の姿は不良かヒーローか!?

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日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう、わかりづらそう…なんて思ってない? 実は歌舞伎は恋愛要素も豊富。だから女子が観たらドキドキするような内容もたくさん。そんな歌舞伎の世界に触れてもらおうと、歌舞伎演目を恋愛の観点でみるこの連載。古典ながら現代にも通じるラブストーリーということをわかりやすく伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

今回は、三月歌舞伎座で上演予定の『助六(すけろく)』に注目します!

◆【1】巷をにぎわす美男美女カップル、ド派手に見参!


ここは江戸で一番の賑わいをみせる歓楽街・吉原。
今日も花魁道中(※1)を一目見ようと人だかりが出来ている。
皆のお目当ては何といっても遊女の最高峰・花魁揚巻(あげまき)。
会う人会う人にお酒を勧められ既に酔いがまわっているのか、舟を漕ぐような足取りの揚巻だが、その美しさは誰もが息を呑むほど。
そこへ、お金持ちそうだがいかめしい顔つきの老人・意休(いきゅう)がやってくる。
ご執心の揚巻を座敷に伴いたいと、常々通ってきているのだ。
ところが揚巻には助六(すけろく)という恋人がいる。
意休は、自分が振られ続けるのは助六のせいで、「あんな盗人のような男にいれあげているとお前もそのうち痛い目をみるぞ」と嫌味をいう。
自分のことは何といわれようとも、恋人の悪口だけは許せない揚巻。
二人を比べて「助六さんと貴方を例えるなら雪と墨、暗がりで見ても、助六さんと意休さんを取り違えたりしない」と啖呵を切る。

(※1)位の高い遊女が、所属する店から客の元へたくさんの人を引き連れ移動するパレードのようなもの。

◆【2】江戸で一番イケてる男・助六が派手に登場!ケンカを仕掛けるのには理由があって…


怒りがおさまらない揚巻だったが、同僚のとりなしで意休を残し、ひとまず店へと入っていく。
そこへ尺八の音がとどろき、蛇の目傘を差し、黒の着付け、紫の鉢巻きを粋に結んだ姿の男が現れる。
この男こそが江戸の女性たちを虜にする助六なのだ。
彼が登場した途端、吉原の花魁たちは吸い付けたばこ(※2)で歓迎する。
動じない素振りをみせる意休を横目に、助六はやりたい放題。
「俺は煙管の雨がふるほどモテモテだ」と自慢したり、分けてやると煙管を足に挟んで突き出したり、意休を「女郎にふられ続ける蛇」よばわりをしたりと悪態のオンパレード。
しかしこれには理由があった。
助六の真の姿は曽我五郎という侍。
父をある男に殺され、その敵討ちをしようと虎視眈々と狙っていたのだった。
そのためには、盗まれた宝刀・友切丸(ともきりまる)が必要で、見つけだすためにわざと喧嘩を吹っ掛け、相手に刀を抜かせようとしているのだ。
意休もその詮議のターゲットなのである。

(※2)煙管(きせる)にたばこを詰め、遊女らが唇をつけて息を吸い込み火をつけすぐに吸える状態にしたもの。いわば間接キスの効果がある。

◆【3】助六を心配した、事情を知らない家族が続々登場


この後も意休の子分がやってきたりと様々な人が行き交い、やがて激しい喧嘩が始まり、助六を残し皆逃げてしまう。
そこへ、見ず知らずの白酒売りがやってくる。
この男は助六の兄・十郎(じゅうろう)が変装した姿。
遊郭に入り浸りと聞く弟を忠告しにやってきたのだ。
助六は十郎に、敵討ちの心は常にあり、わざと争いを起こしていることを説明すると「それなら俺も加勢する」と喧嘩の手ほどきを弟から習おうとするのだった。
そこへ揚巻と共に母の満江(まんこう)もやってきて、事情はわかったがあまり喧嘩で怪我をしないようにと、暴れると破れてしまう、紙でできた“紙衣”という着物を渡し帰っていく。

◆【4】犯人はやっぱりあの男。揚巻に助けられ、助六の敵討ちは続く


そんな中、揚巻を再び口説こうとしてか、意休がやってくるので、咄嗟に揚巻は助六を打掛の中に隠す。
そこで意休は、わざと聞こえるように助六の悪口をならべたてる。
我慢の限界を超えた助六が飛び出すと、意休は余裕の笑みを浮かべ「兄弟団結して敵を討て」というのだ。
更に得意げに香炉台を切ってみせるが、この刀はなんと友切丸!
血気に震える助六は、揚巻になだめられながら、家宝を取り戻すべく奔走するのだった。

◆『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』

歌舞伎十八番の一つ。正徳三年三月江戸山村座で初演。作者不詳。京都で起こった万屋助六と遊女あげ巻の心中事件を基に、大阪で成立。『助六所縁江戸桜』として上演されたのは宝暦十一年三月の市村座から。

(監修・文/関亜弓 イラスト/カマタミワ)