インドでは肥満対策としてジャンクフードに課税(depositphotos.com)

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 先月(2017年1月)末、インドで「肥満税」の導入が報じられた。太っている人から、税金を余計に取るというわけではない。肥満や糖尿病など、生活習慣病につながりやすい食品に課税する制度である。

 報道によれば、健康や衛生、都市開発担当者による検討グループがナレンドラ・モディ首相と会見。砂糖や塩分、飽和脂肪酸の多い、いわゆるジャンクフードや砂糖入り飲料への課税を2017年度予算に組み込むよう提言したのだ。

 インドではここ数年、ジャンクフードや清涼飲料の消費が急増。専門家によると、そうした食品が一因とみられる肺や心臓疾患、がんや糖尿病で亡くなる人が年間で約580万人にものぼるという。2015年には6910万人が糖尿病と診断されている。

 今年に入り、国全体での課税提案の動きが本格化。徴収した税は、中央政府の健康関連支出の財源になるという。

各国が次々と肥満対策の税金をスタート

 これはタバコやアルコールに課される「SIN TAX」、いわゆる「罪の税」と呼ばれるものと同じ方法。政府が税による収益を上げるだけではなく、消費者が肥満になりやすい食品を買うことを思いとどまらせようという意図がある。

 こうした試みはインドだけではなく、近年の世界的な動きだ。

 2010年に台湾が世界で初めての「ジャンクフード税」を導入。子どもたちの25〜30%が太りすぎという深刻な肥満問題への対策とし、加糖飲料やキャンディ、ケーキ、ファストフードやアルコールなどに特別税をかけた。

 同年、国民4人に1人が肥満のルーマニアもジャンクフード税の導入を発表。2015年4月には、世界第2位の肥満大国・アメリカでもジャンクフード税が始まった。開始当初は西部の先住民居留地ナバホ自治区などで導入され、対象は炭酸飲料やスナック菓子、ファストフード、揚げ物などだ。

 肥満率世界第1位のメキシコで2014年に導入したのは「ソーダ税」。糖分を多く含む飲料へ課税するというもので、フランスやアメリカの複数の州にも同様の税金がある。

 イギリスでも2018年3月から、砂糖や甘味料を多く含む飲料へ「砂糖税」が課せられることに決まった。
肥満税の実施国では賛否両論!

 2016年10月には、世界保健機関(WHO)が、砂糖を多く含む清涼飲料水への課税強化を加盟国・地域に呼びかけている。

 WHOによると、世界の肥満人口は1980年から2014年にかけて2倍以上増加し、成人の約40%が太りすぎだという。「課税で加糖飲料の価格を20%引き上げれば、消費を20%減らす効果がある」ということだ。

 しかし、実施国では賛否両論がある――。

 たとえば、ソーダ税を導入したメキシコでは、同じ年の末までに清涼飲料水の販売が10%減少したという。その一方で「ソーダをやめた人は、同程度、糖分が含まれるオレンジジュースを飲んでいる可能性がある」との指摘もあり、そこは未解決だ。

 メキシコにおける取り組みが肥満問題を解決できるかは、長期的な観察が必要だろう。

 また、2011年に世界で初めて食品に含まれる「飽和脂肪酸」の量に対して課税を始めたデンマークは、翌年早々に制度を廃止した。

 理由は、食品価格の高騰により、国民がこぞって隣のドイツに出かけて。バターやクリーム、チーズなどを買い求めたからだ。結局、高脂肪食品の消費は減らないうえ、国境近くの商店が立ち行かなくなる事態となり、この取り組みは失敗に終わった。

同じような制度は、日本では考えられない?

 日本でも肥満税を取り入れる日は来るのだろうか?

 砂糖税については、厚生労働省の有識者懇談会が、砂糖をアルコールやタバコとともに健康リスクと位置づけ、課税強化を検討すべきだと提言している。

 しかし、日本にはサトウキビの生産者を保護する「調整金制度」があり、それを消費者が負担している。今も割高な砂糖を買っているところに課税となれば、業界の猛反発は免れないだろう。

 また実際、諸外国に比べると日本は肥満問題の深刻度がまだ低い。厚生労働省の資料によると、40〜60代の日本人男性の約3人に1人は「ボディマス指数」が25以上の「肥満」という結果が出ているが、WHOやアメリカでは30以上が「肥満」となる。そうなると、日本の肥満率はアメリカの10分の1程度だ。

 いずれにせよ、限られた一部の食品が肥満を引き起こしている訳ではない。肥満対策の基本は、一人ひとりが健康に良い食事を理解し、バランスの良い食生活を送ることだ。各国のこうした政策が本当に肥満の改善につながるかは、中長期にわたって見守るべきだろう。
(文=編集部)