これまで日本のプロスポーツ界を盛り上げ、発展させてきた要素のひとつに、外国人選手の存在がある。外国人選手の活躍がチームの成績を左右するのはもちもん、魅力的なキャラクターで多くのファンを惹きつけてきた。

 今年、世界トップクラスの国際リーグ、スーパーラグビー(SR)に日本から参加しているサンウルブズでも、チームの中心的存在になりうる外国人選手がいる。


今シーズンは立川理道とともにサンウルブズの主将に任命されたエドワード・カーク 2シーズン目を迎えるサンウルブズは、日本代表との関係をより強固なものとすべく、2016年秋に就任した日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)を「チームジャパン2019総監督」とし、両チームが戦術やスタイルを共有する。

 サンウルブズのメンバーを選ぶ際にもジョセフHCの意見を反映し、特に外国人選手に関しては「日本代表の資格を持つ選手、もしくはこれから持つ見込みのある選手」という基準で選ばれた。つまり、2019年に開催されるワールドカップ日本大会に向け、本格的な強化が始まったのだ。

 現在、サンウルブズに所属している外国人選手は15人。そのなかでも注目を集めているのが、エドワード・カーク、ヴィリー・ブリッツ、ヘイデン・クリップスの3人だ。

「オーストラリアでオフを過ごしている間も、日本が恋しかった。飛行機に乗っている間も、ずっと楽しみだった」

 2月1日のチーム始動時、ワクワク感を抑えきれずにいたのが25歳のカークだ。ヒゲをファーストジャージーと同じオレンジ色に染め上げ、「自分は忠誠心の強い男です」と笑顔で語る。身長191センチ、体重108キロのカークは初年度からサンウルブズに在籍し、昨シーズンはフランカーやナンバーエイトというポジションで15試合に出場した。

「決して後退しない」と激しいタックルで相手を次々と倒し、密集戦で相手の持つ球に絡む”ジャッカル”というスキルも駆使する。体を張って防御する姿は、それだけでチームメイトやファンを魅了する。今季は、日本代表の立川理道(たてかわ・はるみち)とともに主将を務めるなど、信頼も厚い。

 グラウンドでは激しいプレーを繰り返すカークだが、普段は仲間とじゃれ合い、練習を終えると出待ちする女性ファンに「アリガト! You’re beautiful」と声をかけるなど、明るい性格でチームを盛り上げる。

「ラグビーは楽しむためにやっている。ただ真剣にやるだけではなく、エンジョイも大事」

 生まれ育ったオーストラリアでは、レッズの一員としてスーパーラグビー39キャップ(公式戦出場)を獲得したが、2015年は膝の故障などもあり、契約を結べなかった。来日を決めた背景には、心機一転の思いがあった。

 ラグビーの場合、国際ルールにおいて外国人選手の出場が認められており、日本国籍を持たない選手でも以下の条件のうちどれかひとつでもクリアし、また他国で代表選手になっていなければ日本代表の一員になることができる。

・ 出生地が日本

・ 両親、祖父母のうちひとりが日本人

・ 日本で3年以上、継続して居住している

 カークは過去に20歳以下オーストラリア代表、7人制オーストラリア代表など母国の代表に準ずるチームに入ったことがある。そのため日本代表への道のりは簡単ではないが、次のように語る。

「環境が許せば(日本代表入りへ)手を挙げたい。ただ、それがかなわなくてもサンウルブズでプレーしたい。日本は、私のラグビー観に新しい角度を与えてくれた」

 前年度はかなわなかったトップリーグ入りも視野に入れ、まずはサンウルブズで懸命のプレーを見せる。

 カークとともに、フランカー、ナンバーエイトでの活躍が期待されているのが、28歳のブリッツだ。長い金髪にスパイラルパーマという独特の風貌で、出身地の南アフリカでも「ライオンのようだ」と話題になった。

 身長193センチ、体重110キロの巨躯だが、ボールを持てば豊かなスピードで相手防御網を突破。低い前傾姿勢でのプレーが特長で、足を痛めながらもハードタックルを繰り返すガッツマンだ。「痛みを感じたとしても、それをプラスの力に変える」と語るなど、派手な外見のみならず、熱いプレーでもファンを沸かせるだろう。

 過去にはライオンズ、チーターズと、南アフリアのチームでスーパーラグビーを戦ってきた。そこで培った経験を惜しみなくサンウルブズに伝授していくつもりだ。

 ブリッツは2015年からトップリーグのNTTコムでプレーしており、そのときから日本代表入りをターゲットにしていた。

「小さいときは南アフリカ代表になりたかったのですが、新しい目標が必要だと感じたのです」

 前年度のスーパーラグビーのシーズン中は、チーターズに入るために南アフリカに帰国。そのため、日本代表の資格を得られるのはワールドカップ日本大会の直前になるかもしれない。それでも日本代表入りという目標は変わらない。

 カークやブリッツよりも早く代表資格を得られそうなのが、26歳のクリップスだ。2014年に来日し、今年5月に日本居住3年となる。そのためアイルランド代表戦などがある6月のツアーには日本代表の選考対象となる。

 身長177センチ、体重82キロと決して大柄ではないが、ゲームを動かすスタンドオフとして小気味よいランとロングキックを武器にゲインラインを突破していく。

 母国ニュージーランドでは、ITMカップ(地域代表選手権)のウェリントン代表、タスマン代表に選ばれるなど、知る人ぞ知る名選手だった。来日後は下部リーグであるトップイーストの東京ガスに在籍し、社業の忙しい選手たちとともに勝利を目指してきた。

 サンウルブズでは持ち前のスキルと判断力の高さを発揮する。2月18日のトップリーグ選抜との壮行試合に出場したクリップスは、パスと見せかけて防御の隙間をすり抜けるなど、随所に”らしさ”を見せてチームの勝利に貢献。この試合でセンターのポジションを務め、日本代表の一員でもあるティモシー・ラファエルはクリップスをこう評した。

「ビジョンがいい。ディフェンスが(フィールドの)外側から上がってくるのを見て、どんどん内側を突いていた」

 実は、クリップスは日本代表と浅からぬ縁がある。初めてウェリントン代表に加わった2010年、チームの指揮官は現在の日本代表のHCであるジェイミー・ジョセフだったのだ。クリップスは日本代表デビューを見据え、次のように語る。

「ジェイミーさんはラグビーのベーシックな部分をよく知っていて、日本のラグビー界にとって素晴らしい人物だと思います。まず、今季のサンウルブズで自分がどうプレーするかにかかっています。そこでチャンスが生まれれば……」

 日本代表の主力スタンドオフでもある田村優は、2月中旬に「コンディションの影響」により一時離脱。裏を返せば、クリップスの存在価値はより高まりそうだ。

 2月25日、サンウルブズは東京・秩父宮ラグビー場で開幕節に臨む。相手は前年度王者のハリケーンズ。厳しい戦いになるのは間違いない。それでもカークは「日本のファンの方は握手やプレゼントなど、オーストラリアとは違った形でアプローチしてくれる。日本のファンのために向上していきたいです」と語り、ブリッツも「日本代表が次のレベルに到達するにはこのスタイルが必要」と、今のチーム戦術の理解度を高めることを誓う。

 日本代表入りを目論む3人の外国人選手を筆頭に、2019年のワールドカップを戦う上でも、今シーズンのサンウルブズから目が離せない。

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