トム・リン監督

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 2015年の第28回東京国際映画祭で「百日草」のタイトルで上映された台湾映画「百日告別」が2月25日公開する。交通事故で最愛のパートナーを亡くした2人の男女が現実と向き合っていく姿を描く感動作だ。自身の実体験を基にしたと明かすトム・リン監督に話を聞いた。

 結婚間近の婚約者と妊娠中の妻を同じ玉突き事故で失ったシンミンとユーウェイ。それぞれ最愛の人を失い、その事実を受け入れることができない2人。しかし、現実は無常にも流れていく。初七日から七七日と節目ごとに山の上の寺を訪れるシンミンとユーウェイは、読経を通じて互いの存在に気づいていく。カリーナ・ラムがシンミンを演じ、人気バンド「Mayday」のシー・チンハンがユーウェイを演じる。

 事故で妻を亡くした監督の経験とともに、友人たちの体験を交えてストーリーを構成した。メインキャストを2人の男女にした理由をこう語る。「最愛の人を失って、それから100日目の終点を描きました。その終点の心境はどういうものなのかが重要。愛する人を失って、別の角度から別の百日間を過ごしたとき、結果は同じものなのか、異なるものになるのを探求したかった。そこで、2人の登場人物を設定し、異なる視点からの経験を描きました」

 中華圏で高い人気を誇る2人をメインキャストに据えることができた。感動作にありがちな押し付けがましさは一切なく、登場人物のリアルな心情、立場、環境を見事に表現している。「キャスティングは直感でした。ふたりとも見栄えがよいですし、お互いにいろんな影響を与え合うと考えたのです」

 とりわけ、人間の持つタイプのバランスというものに、独特な考えを持っている。「映画の中でも、人物と人物のバランスが大事。潤いがある人とドライな人、そういう2人が一緒になると、バランスが取れると思うんです。そういう考えでキャスティングをします」

 新婚旅行先として予定していた沖縄をひとりで訪れるシンミン。同地でロケを行ったが、最初のシーンは南国の青い空ではなく、ヒロインの心情を表すような雨空だ。「実は、ヒロインが沖縄を訪れたときの脚本の設定は晴れでした。撮影当時雨がふっていたので、神様のいたずらだと思って、自然の流れでそのまま撮りました。神様に与えられたものを生かして撮れば、上手くいくのだろうと思いました。セリフも変えましたが、僕は脚本家でもあるので、その点は有利でしたね」

 青春群像劇「九月に降る風」(08)に続き、2本目の日本公開作となる。「台湾以外で公開されるときに、一番作品を理解していただける国が日本だと思うのです。日本人と台湾人は命に対する考え方、人間の情感に共通するものがあります。日本の皆さんがご覧になっても心に届く作品になったと思います」とメッセージを寄せた。

 「百日告別」は、2月25日から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。