奄美群島の一つ、加計呂麻島の人口は1601人(2006年)

写真拡大

 前回、鈴木宗男を素人マラソンの偉人と崇め、サブスリーを目指すべく筆者が向かったのは鹿児島県の加計呂麻島だった。

 加計呂麻までの交通費は安い。ただし、遠い。

 東京から加計呂麻に行くとすれば、まずは飛行機で奄美に入ることになる。最近はバニラエアが成田―奄美間に就航しており、それ自体は大した労力ではない。三時間弱のフライトで、安い時で片道6000円程度である。朝9:40成田発の飛行機に乗ると、12:30には奄美空港に到着する。

 奄美は南北に細長い島で、南が末広がりになっている。空港は島の北東端にあり、目の前に青い海が広がっている。埋め立てで用地を確保したのは沖縄の那覇空港と同じだ。

◆東京〜奄美間の遠距離恋愛なら値段的に続けられる

 そういえばこの一か月ほど前に鳥取へ行った際に、最も愕然としたのは飛行機便の少なさである。よくよく聞いてみると、「鳥取コナン空港」において、定期便は一日四便のANA羽田便だけだという。JALもなければ、LCCの参入もない。スカイマークも飛んでいない。大阪にも福岡にも札幌にもソウルにも飛んでいない。

 にもかかわらず、山陰には新幹線も通っていない。これでは航空料金も下がるはずがない。試しに鳥取市内の若い女性の働き口にどんなものがあるか聞いてみると、「介護関係」がほとんどだという。はっきり言って、彼氏が東京の飲食店厨房で働き、彼女が鳥取で介護関係の仕事をしているくらいの収入であれば、長距離恋愛の継続はまず難しいと言わざるを得ない。

 その点、奄美のほうがまだマシである。

 航空料金は上記の通りで、一日一便は飛んでいる。成田だけでなく、羽田はもちろん福岡や鹿児島、大阪などからも定期便があり、かつ鹿児島県島嶼部のハブ空港の役割を果たしており、近隣の喜界島や沖永良部島、「徳洲会」生みの親・徳田虎雄理事長の生まれ故郷・徳之島などへのフライトもある。

 よって奄美空港のほうが鳥取よりも賑わい・活気といったものがあるのだ。私は試していないが、東京と奄美の遠距離恋愛なら月二回くらいは会えて、一年くらいは続けられそうな気がする。

◆地域のランドマーク、徳洲会病院

 さて、話はここからである。上記ルートで奄美までは成田から三時間少々だが、奄美空港から加計呂麻島までは五時間以上かかるのだ。

 具体的には、空港で一日路線バス乗り放題券(フリーパス)を購入する。ちなみに一日分2100円である。これで「しまバス本社前」バス停まで行き、そこから南端の港「古仁屋道の駅」行きに乗り換える。「しまバス本社前」行きバスは12:45発である。

 バスからの光景を見ると、まず目に飛び込むのは紺碧の透き通った海である。沖縄の海も綺麗だが奄美は最近やっとバニラが就航したくらいでまだすれていない。そんな雰囲気に憧れてか、最近は関東からサーファーの移住者が急増しているという。

 建物を見ると、明らかに日本の本土よりも沖縄の影響が強くみられる。

 台風に備えるためか、屋根の高さが本土より本土より低く、家の周りが屋根の高さと同じかそれ以上の壁で囲われている。何も知らずにこういう家の写真を見せられたら、沖縄のどこかの島と勘違いするに違いない。

 ちなみに、私の目に入った範囲で奄美で一番高い建物は「徳洲会病院」である。元都知事との絡みで色々あった徳洲会だが、鹿児島の離島で医療を支えているのは紛れもない事実である。別媒体の取材で福島県浜通り(原発があった沿岸部のこと)における医療崩壊の現状を目の当たりにした私にとって、徳洲会の役割は認めざるを得ないものだ。

◆奄美名物・じょうひ餅はランナーの貴重な栄養源

 一時半過ぎにバス乗り換え地点となる「しまバス本社前」に到着する。ちょうど昼食にいい時間だし、よく聞くと港までのバスがくるまで約20分あるとのことだったので、大急ぎで島名物「鶏飯(けいはん)」を試してみることにした。

 鶏飯とは、一言でいえば薄味のだしをぶっかけたチキンライスである。元々は薩摩藩の圧政に苦しむ奄美の住人が役人を接待するために作った料理らしいのだが、白米の上に細切りにした鶏肉、シイタケ、錦糸卵、海苔、ネギ、パパイヤの漬物などをのせて鶏スープをかけて食べるものだ。バス停すぐ裏に鶏飯店「鳥しん」があるが、頼めば持ち帰りにも対応してくれる。1000円だ。

 走る前の一週間は減量で炭水化物を摂っていなかったので、だしがからまった白米の味わいが口全体に広がる。そういえば、空港の土産店でフリーズドライ鶏飯セットが売っていたはずだ。これは東京へ帰る時に買わねばなるまい、と決意を新たにする。

 三時半に島南端の港「古仁屋海の駅」に着く。加計呂麻行きのフェリーは五時半発なので、待ち時間のうちに目の前にあるスーパー、コンビニ、薬局で買い出しをすることになった。

 スーパーで目を引くのは「奄美じょうひ餅」である。奄美産黒砂糖をもち米と水あめに練りこんだもので、食べてみると非常に甘く柔らかい餅である。ランナーにとっては、当日朝の炭水化物・糖分補給に最高の一品となりそうだ。

 ファミリーマートに入ると、「オニポー」が売られている。これは沖縄名物のようなもので、おにぎりの間にスパムや卵焼きを挟んだ「ライスサンド」を海苔で包んだものだ。こういうところを見ると、奄美には沖縄文化が強く影響を与えているのだと痛感させられる。

◆こんな所でグルテンフリー食品を発見

 スイーツコーナーには、「鹿児島華蓮銀座店発案かるかんティラミス」なるものが売られている。

 原材料を見ると、鹿児島県産米粉、徳之島産黒蜜を使ったコーヒークリーム、黒糖蜜、やまいもなどを使っており、小麦が入っていない。すなわち今はやりの、というか私が日本に流行らせている「グルテンフリー」そのものではないか。こんな一品を鹿児島の地域限定で売るのはあまりにもったいない。真面目な話、私を広告塔にして一気に全国展開すればいいのだ。勿論ラベルで大々的に「グルテンフリー」と謳えば全国で大ヒット確実である。

 それから出版業界にいるとどうしても気になるのが「新聞」である。私はてっきりここは鹿児島県だから「南日本新聞」のシマかと思っていたが、どうも様子が違う。奄美独自の新聞が、しかも二紙出ているのだ。「奄美新聞」と「南海日日新聞」である。これはしっかり解読しなければと二紙とも購入し、加計呂麻で読むことにした。

 加計呂麻には薬局もないとのことだったので、ランナーに欠かせない経口補水液「OS1」とヒザサポーターを買う。これで加計呂麻行きの準備は完了だ。フェリー乗船券は350円で、五時半の出発を待つばかりだった。

<文・タカ大丸/写真・photo library>

【タカ大丸】
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ほかに韓国ドラマの字幕制作も手掛ける。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’05年9月「オフィス・スカイハイ」を創業。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。その他、C・ロナウドをはじめとする海外有名選手書籍の翻訳を多数手がけ、二冊目の訳書『モウリーニョのリーダー論』(実業之日本社)は三刷を記録。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破、26刷となる。雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト