スウェーデンの首都ストックホルム北郊のリンケビーで、放火された車を調べる警察官(2017年2月21日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】スウェーデンにおける移民の増加と犯罪の関連性を示唆して物議を醸したドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の発言をきっかけに、リベラルな価値観を持つ理想国家とも目されるスウェーデンで、移民統合政策の成功点と失敗点について考えようという議論が巻き起こっている。

 トランプ氏は今月18日に米フロリダ(Florida)州で開かれた集会で前夜にスウェーデンで襲撃事件があったかのような発言をして当惑を招いたが、その2日後、同国の首都ストックホルム(Stockholm)北郊の移民が多く住むリンケビー(Rinkeby)で暴動が起きた。

「やはりトランプ氏はスウェーデンについて正しかった! ストックホルム郊外で暴動が起きた」と、米保守派コメンテーターで共和党系のアン・コールター(Ann Coulter)氏は21日、勝ち誇ったようにツイッター(Twitter)に投稿した。

 リンケビーでは20日夜、警察が麻薬取引の容疑者1人を逮捕したのを機に数十人の若者が警察官らと衝突。暴徒は警察官に投石したり、車に放火したり、商店を略奪したりした。ストックホルム警察はAFPに対し、暴徒排除のため警察官1人が実弾を発射したと明らかにした。

 暴動の映像は瞬く間に世界に拡散。トランプ氏の発言と、同氏が引き合いに出したスウェーデンの犯罪増加と移民を結び付けたFOXニュース(Fox News)の報道に対するスウェーデン当局の反応に泥を塗る格好となった。

 スウェーデンの日刊紙スベンスカ・ダグブラデット(Svenska Dagbladet)の論説委員トーベ・リブンダル(Tove Lifvendahl)氏は22日、「トランプ氏が言ったことには一片の真実」が確かにあると認め、「それについてどう思うかはさておき、他者から見たわれわれのイメージ、そしてわれわれの自己イメージとが、現実とどこまで一致するのかを考え直す好機だ」と書いた。

 ではその相反する2つの捉え方とは、それぞれどのようなものだろうか?

■相反する2つのスウェーデン観

 トランプ氏を批判する人々は、スウェーデンでは2010年以降テロ攻撃が起きておらず、難民申請者を24万4000人受け入れてからも犯罪率は特に上がっていないと訴えている。

 スウェーデンは、2014、15年の人口1人当たりの難民申請者受け入れ数が欧州で最も多かったにもかかわらず、依然として世界屈指の安全で豊かな国であることに変わりはない。移民を統合する上で困難がないわけではないが、深刻な人種対立や格差、貧困、暴力などが起きている米国とはまったく状況が異なるというのが反トランプ派の主張だ。

 一方で、スウェーデンについて異なる見方をする人もいる。外国人は地元住民より犯罪関与率が2倍高く、失業率も高く、麻薬の闇取引に関与した件数も多い上、警察も立ち入らない区域が複数存在し、イラクやシリアのイスラム過激派に加わって戦うために出国した外国人戦闘員も約300人いると指摘している。

 ステファン・ロベーン(Stefan Lofven)首相(社会民主労働党党首)は、犯罪と移民との相関性というトランプ氏の断定については受け入れなかったものの、移民政策で課題に直面していることは認めた。

 ロベーン首相は20日、報道陣に「われわれには好機もあれば課題もあり、それらをめぐって日々努力しているが、われわれは皆責任を持って、事実を正しく用い、われわれが広めるあらゆる情報を検証していかなければならないとも思う」と述べた。

■リンケビー住民と識者の声

 リンケビーの住民は地元の日常生活の現実の捉え方で意見が分かれている。リンケビーは開発こそ遅れてはいるが緑豊かで、革新的な高校が1校あり、そこには毎年ノーベル賞(Nobel Prize)受賞者が訪れるという。

 リンケビーで生まれ育った28歳の女性店主はAFPの取材に対し、自分はこの町に残って会計士になることを目指していると語り、「友人の中には、不動産業者もいれば、政党で働いている人、記者や弁護士もいる」が、服役中の友人も何人かいると明かした。

 トルコ系の保守派の地元議員は日刊紙エクスプレッセン(Expressen)に、「平均すると暴動は毎月1回、車の放火は毎日起きている。(住民1人当たりの)射殺事件の発生件数は国内で最も多い」と語り、同地では犯罪が「日常の一部」になっていると認めた。

 それでも社会学者の社会学者のオスカル・アデンフェルト(Oskar Adenfelt)氏は、トランプ氏が一部の層を、民族や宗教を理由にひとくくりに悪とみなすのは間違っていると強調。より大きな影響を及ぼすのは社会経済的な状況の方だとアデンフェルト氏は分析している。

 同氏はAFPに対し、「犯罪者の中で外国生まれのスウェーデン人の占める割合は確かに高いが、研究によってそれは3つの要因によるものと示されている。司法制度における差別、出身国と移住時の状況、そして移住先の国での生活状況だ」と話した。

 スウェーデンの歴史家カール・マルクルンド(Carl Marklund)氏は日刊紙ダーゲンス・ニュヘテル(Dagens Nyheter)で、スウェーデンは「米国のリベラルと外国の革新派からは肯定的な模範として見られている」一方、右派勢力「オルト・ライト」(オルタナ右翼)からは「格好の標的」にされていると指摘した。
【翻訳編集】AFPBB News