(写真提供=SPORTS KOREA)

写真拡大

中国の杭州緑城で活躍する日本人フィジカルコーチの池田誠剛。2013年にも杭州緑城でコーチを務めた彼は、“韓国サッカー界のカリスマ”ホン・ミョンボ監督の要請を受けて、2016年から再び杭州緑城でコーチを務めている。

そんな彼の目に中国サッカーの現状はどう映っているのだろうか。今回は中国の育成環境などについて迫りたい。

――外国人選手だけではなく、外国人指導者たちも中国サッカーのレベルを押し上げているわけですね。

「ええ。例えば広州恒大を率いたマルチェロ・リッピさんです。リッピさんは規律を重んじ、勝者のメンタリティとは何かということを、中国の選手たちに教えて叩き込んだ。広州が飛躍的に強くなった背景には、リッピさんの教えが浸透したこともあると思います。

そんなリッピさんと広州の成功にほかのクラブも刺激されて、成功の秘訣を分析し、良いところは取り入れるようになった。中国は良いものを真似て学ぶというか、向上心がとても高いんです。最近では韓国人指導者も多いですよね。それはやはり、韓国人指導者たちが中国で結果を出しているからでしょう」

――日本人指導者はいかがでしょうか。岡田武史さんが杭州緑城で采配を振るいましたが、それ以降、中国で指揮する日本人監督は出ていないような…。

「スーパーリーグで指揮する日本人監督はいませんが、実は各クラブの育成チームでは日本人指導者がとても多いんです。育成レベルにおいては、日本人指導者の評判と人気が非常に高い。

なぜ育成は日本人指導者なのかというと、年齢や成長過程に合ったきめ細かく計画性のある指導ができることが日本サッカーの特長として評価されていますし、そういうプログラム作りに関しては“日本人がアジアで一番長けている”という評価の表れだと思います」

――育成レベルで日本人コーチが多いということは意外でした。

「本当に多いですよ。私も詳しく調べたことはないですが、30〜40人はいます。本当にびっくりしますし、年々増えています。日本人指導者の良さが、中国でも口コミで広がっているわけです」

――では、池田さんの目から見て中国サッカーの可能性はどう映りますか。例えば日本や韓国と比べて成長スピードが最も速いのは?

「中国ですね。先ほどもお伝えした通り、リーグの成長スピードは目覚ましいかぎりです。ただ、長期的視野に立った強化のプログラミングがまだできていないのも事実でしょう。

例えば、ベースは間違いなく上がっているのですが、プロクラブも代表チームも目先の結果に囚われすぎていて、長期的な視野に立った育成強化がまだ確立されいないという印象です」

――FC東京時代には久保健英選手も間近でご覧になったと思います。韓国ですと、イ・スンウやペク・スンホが久保選手と同じような期待を集めていますが、中国にも彼らのような有望株はいるのでしょうか?
(関連記事:韓国のイ・スンウとペク・スンホはなぜ、バルサの一員になれたのか

「日本や韓国は全国から有能な選手を吸い上げていく組織やシステムが機能していますが、中国にはそれがまだないので、どこかに優秀な若手がいてもピックアップされづらいというか、国土が大きすぎて隅々まで目が届ないという感じですね。

また、仮にそうしたセレクション・システムがあったとしても、有力者の関係者だったり上層部の口添えがあったりと、そこに政治論理が働いてしまうケースが多分にある。そういう選手を集めてチームを作っても、真の意味での“代表”にはなりません。いい選手はたくさんいるんですが、さまざまな事情が働いて代表に選ばれないケースもあるようです。

ただ、中国代表に関してはリッピさんを新たに代表監督に迎えたことによって、何らかの変化があると思います。リッピさんは、“高給取りのスター選手だろうが、政府の関係者だろうが関係ない。ピッチの上ではみな一緒だ”と、健全な競争で代表チームを作っていくはずですから」

韓国はドイツ人のウリ・シュティーリケ、日本はボスニア・ヘルチェゴビナ出身のヴァヒド・ハリルホジッチ。中国はイタリアの名将マルチェロ・リッピが代表監督になったことで、東アジアがおもしろくなることは間違いない。何かと比較される日韓に、今度は中国が加わるのだ。

では、3カ国の特長や違いはどこにあるのだろうか。次回は池田誠剛の目から見た“日韓中サッカー比較”に迫ってみたい。(つづく)

(文=慎 武宏)