蔚山現代を下し、ACLの初戦を白星で飾った鹿島。ゼロックス・スーパーカップも制すなど、新シーズンも勝負強さを見せている。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 いよいよ25日、Jリーグの新シーズンが開幕する。それに先駆けて行なわれたACLのグループステージ第1節では、アントラーズ、レッズ、ガンバが白星発進を果たし、フロンターレはホームでドローと、日本勢は無敗スタートをきった。
 
 Jリーグ勢ははここ数年、ACLで苦汁を舐めさせられてきただけに、3チームが初戦で結果を残したのは評価できるよ。ただ、レッズはブラジル代表のオスカールやフッキといった豊富なタレントを擁する上海上港、フロンターレは2015年のアジアチャンピオンである広州恒大との対戦が待っているなど、本当の戦いはここからだけどね。
 
 それでもリーグ開幕前に明るいニュースがあるのは良いことだ。今年のJリーグは1シーズン制に戻り、「DAZN」との大型放映権契約で賞金も増額されるなど、変革の時を迎えている。リーグ側にとっては“勝負の年”と言えるだけに、ACL組の活躍で、少しでも多くの人が関心を持ってくれれば素晴らしいことだ。
 
 2月18日にはゼロックス・スーパーカップも開催され、アントラーズがレッズを3-2で下して優勝を果たした。お祭り的な側面を持つ大会なので、実力を測るのは難しかったが、アントラーズが昨季からの好調ぶりを継続しているとは感じた。
 
 ただ、昨季の年間チャンピオンに輝いたアントラーズは、1年を通じて力を発揮できたわけはなかったんだ。第1ステージは制したが、第2ステージは11位と失速。チャンピオンシップで一発勝負での強さを示したけど年間勝点は3位だった。新シーズンは1年を通じて安定した戦いをできるか注目される。
 
 そのアントラーズの話題に関連して気になるのが、スペイン2部のテネリフェに移籍した柴崎の状態だ。僕も詳しいことは分からないけど、新たな環境に苦しんでいるようだ。
 
 報道によれば、入団からわずか2日で体調を崩し、以降のトレーニングを休んでいるという。不安障害の可能性が高いとされ、一時はバルセロナに飛び、心理療法士の下で治療を受けたとの噂も囁かれた。
 
 そもそも柴崎の移籍は急転直下で決まった。ヨーロッパの移籍マーケットが閉まるギリギリの1月31日にテネリフェに入団したけど、契約期間はわずか半年。それまでは1部のラス・パルマス入りが濃厚とされていたのに、急遽移籍先が変わったんだ。
 
 柴崎は心の準備をする間もなく、新天地へと移ったんじゃないかな。海外では生活環境がガラッと変わるだけに、入念な準備が必要だけど、それがままならいまま新チームへと合流したのかもしれない。
 
 今回の一連の動きを見て感じたのは、欧州移籍に固執する必要はないんじゃないかということ。柴崎は以前から海外志向が強かっただけに焦りがあったのかもしれない。でも、状況を見極める目も必要だった。代理人との契約上、動かざるを得なかったのかもしれないが、もっと周囲とコミュニケーションをとるべきだったとも思うよ。
 
 背景には半年間、2部リーグで経験を積み、ステップアップを果たそうとの算段があったのかもしれない。それでも、今回の移籍は良い選択だったとは言えないね。
 
 今後、海外を目指す選手もいるだろうが、大事なのは自分がどこにいれば成長できるかを見定めることだ。先日、セレッソに移籍した清武は、スペインのセビージャで出場機会を掴めず、古巣への復帰を決めたよね。
 
 僕はこの決断を悪いとは思わない。一般的に海外から帰ってくることはマイナスとされがちだけど、国内でしっかり結果を残し、日本代表で活躍をすれば、再び海を渡るチャンスは訪れるはずなんだ。異国の地でベンチを温め続けるよりも有意義な時間の過ごし方だよ。
 
 それにハリルホジッチ監督は最近、ネームバリューのある選手よりも、クラブでコンスタントに出場している選手を優先して起用するようになっている。それだけに日本代表では本田、香川らがベンチに座り、セレッソに戻った清武や山口がレギュラーを務める可能性は高いんじゃないかな。
 
 海外移籍が一種のステータスになっている現状が、今後は変化するかもしれない。
 
 そもそも、今の若手たちは元気がないから、ヨーロッパからのオファー自体も減るかもしれないね。現に今オフだって話題の中心にいるのはジュビロに移った中村やFC東京に移籍した大久保らベテランばかりだ。
 
 柴崎の移籍は日本サッカー界の“今”を見つめ直す、良い契機になったのかもしれない。