OBとして今年のチームには期待感を持てる。軌道に乗っていくまでに時間がかかるかもしれないし、俊輔も言うように「ゲームをやってみないと分からない」ところもあるが、個々の意識は昨季より高くなっているので、どう転がっていくか楽しみだ。
 俊輔が入った一番大きな影響は、安心感だと思う。試合でどんな状況が訪れても、あれだけの経験者が「大丈夫だ」と言えばチームメイトは落ち着く。磐田は若い選手が多いが、それを精神的にフォローできる。頼り所というか、精神的支柱というか、そういう存在がいるチームは落ち着きが違う。

 ピッチの中で判断できる選手がいるのは強い。俊輔の口からも「それは僕がしなきゃいけないことかなと思います」という言葉を聞けた。「名波監督とすごく話しているの?」と聞いたら「そうでもないよ」と返してきたから、話さなくても通じ合えているのだろう。言わなくても分かる部分が、あのふたりにはある。

 私が見た範囲で名波監督が俊輔に指示をしていたのは、俊輔が守備に戻り過ぎたら「そこまでいかなくていい」と言っていたことくらい。あまり綿密に話していないのは、チーム構築が上手く行っている裏返しだ。
 
 ゲームを仕切れるプレー面、そして精神面での周りへの刺激。俊輔が磐田にもたらす効果は大きい。もちろん、この短期間ではチームメイトに伝わり切っていない部分もたくさんあると思うが、そうした今でさえ、周りの選手に向上心が出てきている。
 
 俊輔の加入は短期的な試合でのパフォーマンスだけでなく、若手の成長も含めた中長期的な効果も期待できそうだ。
 
解説:福西崇史(元日本代表)